音楽ナタリー Power Push - MIYAVI
変化を恐れない男の15年間とこれから
MIYAVIがベストアルバム「ALL TIME BEST "DAY 2"」をリリースする。本作は彼のデビュー15周年を記念したオールタイムベストアルバムで、初回限定盤には5曲の新録バージョンを含む全33曲が収録されている。インディーズ時代の音源や、4月28日から全国公開される木村拓哉主演、三池崇史監督の映画「無限の住人」の主題歌のために書き下ろした新曲「Live to Die Another Day -存在証明-」も収録されており、彼の15年を一気に総括できるのはもちろんのこと、最新のMIYAVIのモードまでをも体感できる、単なるベストアルバムに止まらない質量を誇る作品となった。
音楽ナタリーではこれまで継続的に彼の音楽についてインタビューを届けてきたので、今回は改めてそのキャリアを振り返ってみた。さらに新たなライフワークとして慰問を始めた海外の難民キャンプの話題から、昨年解散したSMAPについての思い、今後の抱負までを大いに語ってもらった。ギターを携えた1人の男が、今どんな地点に立ち、そこからどう音楽を鳴らそうとしているのかが伝わるテキストとなったはずだ。ぜひその言葉に耳を傾けてほしい。
取材・文 / 内田正樹 撮影 / 後藤倫人
※記事初出時より文章の一部を変更しました。
「日本と海外」という壁を壊すことが楽しい
──今回は15周年を記念したベストアルバムということですが、ナタリーでは前作のオリジナルアルバム「Fire Bird」のリリース時にインタビューをしています(参照:MIYAVI「Fire Bird」インタビュー|さらなる高みへの飛翔)。まずは前作から今作までの動向について少しうかがいたいのですが。
どうぞどうぞ。
──まず最近のトピックとしては世界的オーディオブランド「ビーツ(beats)」のCM出演が話題でした。新宿をはじめ、都内の何カ所かではMIYAVIの顔のアップが刷られた大きなビルボードも出現して。
ご迷惑をおかけしております(笑)。beatsは社長のルーク・ウッドをはじめ、常にクリエイティブ側に近いスタンスでプロダクトを作っている人たちの集まりなんですね。デザインにせよ、コンセプトにせよ、アーティスト寄りの発信の仕方をしようとしている。ルークとは一緒にスタジオでセッションしたことがあって。彼自身もアーティスト寄りというか、音楽制作そのものが好きな人でね。あのCMはロサンゼルスで撮影したんだけど、ドメスティックな空気の中でグローバルに発信するものを作るという感覚が、とても今っぽいなあと思いましたね。それは去年アンバサダーを務めた時計ブランドの「ピアジェ(PIAGET)」のときも同じ感覚だったし。
──そうした動きは向こうで契約しているエージェントからのバックアップに因るところが大きいのですか?(※MIYAVIは日本国外におけるマネジメント契約をアメリカ最大手のうちの1社であるウィリアム・モリス・エンデヴァー・エンターテイメントと結んでいる)
実際、そこはほとんどそうでもないんだよね(笑)。例えば海外での公演やSXSW(※「South by Southwest」。アメリカのテキサス州オースティンで毎年行われる世界的な音楽コンベンション。MIYAVIは今年3月15日、16日に出演)みたいに、彼らが基軸となって進めるプランもあるけれど、CMやライブ以外の活動のほとんどは俺自身と相手先との関係性とか、内々のスタッフで回していますね。
──あ、そうなんだ?
うん。パーティの場でもなんでも、向こうではコミュニケーションを取れる機会がたくさんあるから、そこで話が膨らむときもあるしね。ピアジェにしても日本のクリエイティブチーム含め、向こうの社長と副社長がすごく音楽好きで、ちゃんと俺の音楽を聴いてくれていたし。ビーツもピアジェも、あくまでクリエイティブが第一で、クリエイティブからイノベーティブしていくというスタンスに共感したので、自分にやれることがあればというスタンスで参加させてもらいました。
──そうした機会はMIYAVIというアーティストの存在を広く世界に知らしめるためのパブリシティとしても非常に有効なわけですよね?
まあそれもそうだけど、どちらかと言うと「日本と海外」という壁を壊すことや、クロスオーバーする意義や楽しさの方が大きいかな。だって音楽や映画やファッションって、もとはと言えばみんな親戚同士みたいなもんじゃないですか。そこをクロスオーバーさせながらブランディングしていくのは、こうして音楽のビジネスモデルが日々変動しながらシュリンクしている現状において、とても重要なアクションだと思うんですよ。
──確かにそうですね。
これって正直そこまで特別なことじゃないと思う。でも、かといって日本で多くの例があるかと言うとそうでもないという。これからは加速していくと思うんだけどね。
今は少しでも何かの役に立ちたい気持ち
──自身のSNSにも写真をアップしていましたが、ドラマーのBOBOと一緒にレバノンやタイの難民キャンプを慰問していますね。
きっかけはアンジー(※アンジェリーナ・ジョリー。MIYAVIが出演した映画の監督も手がけたアメリカの女優。MIYAVIと親交が深い)だったんだけど、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の取り組みの一環です。国連の中にはunisef、U.N.E.S.C.O.、UNHCRとさまざまな団体がある中、UNHCRは主に難民の避難先での生活や、第三国定住などに関してサポートをしている機関ですね。
──UNHCRの活動については、何かポジションのようなものがあるのですか?
別にギャラをもらってやっているわけじゃないし、行くのも勝手に行きたくて行っているから。だから今のところはすべて自腹。単なるボランティアです。でもそっちのほうが楽な気はしてね。例えば大使のような地位は光栄なことだし、この先、もしその方が動きやすいと判断するときが来たら気持ちが変わるかもしれないけど、まあやることはどっちにしても同じなわけだから(笑)。
──音楽を通して現地の人と交流していますね。きっとさまざまな思いを感じていると思うのですが。
タイのミャンマーとの国境にある難民キャンプに行ったときは、脳性麻痺の女の子がいて(iPhoneで動画を再生しながら)この子、両親2人共、再婚して家を出ちゃって、今はお婆ちゃんと暮らしてるんだけど、しゃべれないから会話ができない。だけどギターを弾いて聴かせると、手を叩いてハイファイブ(ハイタッチ)をしようとしてくれるんだよ。ここは6000人くらいのキャンプだったんだけど、タイ全域で10万人も難民がいる。
──自分もそこまでは詳しくないけれど、難民の問題は難民の母国の政治的な背景はもとより、受け入れ先の人口や食料自給率も含めて語られなければならない複雑な問題ですよね。
そう。だから俺は教育こそが重要だと思っていて。そこがしっかりしていないと、レバノンもそうだったんだけど、子供たちが殴り合いのケンカをしてしまうんです。それが大人になったら殴り合いじゃ済まなくなるから戦争になる。そこを徹底して教育することのできる大人をまず教育するところから始めなければと俺は思っていて。つまり大人のための義務教育ですね。自分はちっぽけな人間だし、もちろん今すぐ何か大きなことをして今すぐ救えるわけじゃないし、やり方なんてまったくわかっていないんだけど、一度知ってしまったらもう後戻りはできないから、今は少しでも何かの役に立ちたいという気持ちでいっぱいです。
──やはりMIYAVIのキャリアにおいてアンジーとの出会いはとても大きかったと言えますね。
本当にデカかった。だからこそ責任も感じるし、酒を飲む機会も減った(笑)。
次のページ » 木村拓哉があらゆるものと闘っている姿からインスパイアされた
- ベストアルバム「ALL TIME BEST "DAY 2"」 / 2017年4月5日発売 / Virgin Music
- 初回限定盤 [CD2枚組+DVD] 8424円 / TYCT-69114
- 通常盤 [CD] 2700円 / TYCT-60097
DISC 1 -DAY 1-
- What's My Name? -Day2 mix(新録)
- Universe -Day2 mix (新録)
- Ahead Of The Light -Day2 mix(新録)
- 素晴らしきかな、この世界 -What A Wonderful World -Day2 mix(新録)
- Guard You -Day2 mix(新録)
- Live to Die Another Day -存在証明-
- What's My Name?
- Survive
- Torture
- Strong
- Day 1
- Ahead Of The Light
- Horizon
- Secret
- Real?
- Let Go
- The Others
- Afraid To Be Cool
- Fire Bird
- Long Nights
DISC 2 -DAY 0-(初回限定盤のみ)
- ロックの逆襲 -スーパースターの条件-
- Freedom Fighters -アイスクリーム持った裸足の女神と、機関銃持った裸の王様-
- 結婚式の唄-with BAND ver.-
- セニョール セニョーラ セニョリータ
- 愛しい人(ベタですまん。)-2006 ver.-
- Dear my friend -手紙を書くよ-
- 君に願いを
- Selfish love -愛してくれ、愛してるから-
- 咲き誇る華の様に -Neo Visualizm-
- 素晴らしきかな、この世界 -What A Wonderful World-
- 陽の光さえ届かないこの場所で feat. SUGIZO
- Girls, be ambitious.(インディーズ盤音源)
DVD(初回限定盤のみ)
- MIYAVI Japan Tour 2016“NEW BEAT, NEW FUTURE”Tour Final 幕張メッセLIVE映像(約87分予定)
NTT Docomo presents MIYAVI 15th Anniversary Live "NEO TOKYO 15"
- 2017年5月21日(日)東京都 赤坂BLITZ
- <出演者> MIYAVI / THE ORAL CIGARETTES
- 2017年5月25日(木)東京都 UNIT
- <出演者> MIYAVI / GLIM SPANKY
- 2017年5月26日(金)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- <出演者> MIYAVI / ゆるめるモ!
- 2017年5月28日(日)東京都 下北沢GARDEN
- <出演者> MIYAVI / LOCAL CONNECT
- 2017年6月6日(火)東京都 赤坂BLITZ
- <出演者> MIYAVI / 金子ノブアキ
- 2017年6月10日(土)東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
- <出演者> MIYAVI / coldrain
- 2017年6月11日(日)東京都 LIQUIDROOM
- <出演者> MIYAVI / 04 Limited Sazabys / 魔法少女になり隊
- 2017年6月12日(月)東京都 LIQUIDROOM
- <出演者> MIYAVI / SiM
- 2017年6月15日(木)東京都 TSUTAYA O-EAST
- <出演者> MIYAVI / Crossfaith
- 2017年6月21日(水)東京都 clubasia
- <出演者> MIYAVI / Crystal Lake
- 2017年6月22日(木)東京都 TSUTAYA O-WEST
- <出演者> MIYAVI / OKAMOTO'S
- 2017年6月24日(土)東京都 WWW
- <出演者> MIYAVI / Charisma.com
- 2017年6月25日(日)東京都 WWW X
- <出演者> MIYAVI / ちゃんみな
- 2017年6月27日(火)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
- <出演者> MIYAVI / ACIDMAN
- 2017年6月29日(木)東京都 新木場STUDIO COAST
- <出演者> MIYAVI / 三浦大知
MIYAVI(ミヤヴィ)
1981年大阪府出身のソロアーティスト / ギタリスト。2002年10月にアルバム「雅楽 -gagaku」を発表し、ソロ活動を開始する。2010年10月リリースのアルバム「WHAT'S MY NAME?」では、ギターとドラムのみの編成でオリジナルのサウンドを確立。2012年11月にさまざまなジャンルの“サムライアーティスト”とのコラボレーションアルバム「SAMURAI SESSIONS vol.1」を発表し話題を呼んだ。ほかにも布袋寅泰、野宮真貴、Good Charlotteらの作品への参加など精力的な活動を続け、2013年6月には自身の名を冠した海外デビューアルバム「MIYAVI」をリリース。さらに2014年にはSMAPのシングル「Top Of The World」を作曲し話題を集めた。また同年の12月には俳優として出演したアンジェリーナ・ジョリー監督によるハリウッド映画「UNBROKEN」が全米で公開された。2016年8月にはニューアルバム「Fire Bird」を発表。2017年4月にデビュー15周年を飾るベストアルバム「ALL TIME BEST "DAY 2"」をリリースし、5月からは東京都内で15公演にわたる対バンライブ「NTT Docomo presents MIYAVI 15th Anniversary Live "NEO TOKYO 15"」を行う。
2017年3月31日更新