手紙を送って実現した高橋幸宏のツアー参加

──5月から始まるツアーには高橋幸宏さんが参加されるんですよね（参照：LOVE PSYCHEDELICOベスト盤ツアーにドラマー高橋幸宏帯同）。その経緯について教えてください。

NAOKI　ご本人と話をする前に、もう何年も前からよく2人で話してたんだよね。

KUMI　幸宏さんのドラムがすごく好きで、LOVE PSYCHEDELICOで叩いてもらえたら絶対にいいだろうなって。

NAOKI　世の中の人って幸宏さんにいろんなイメージを持っているだろうけど、ライブでドラムを叩いているところを観ると、どれだけスタンダードなロックを大切にしているドラマーか、スタンダードなロックを完全に噛み砕いて自分の音楽へと変換しているアーティストなのか、それがよくわかるんですよ。もちろんドラムって全体のグルーヴも大切ですけど、楽曲を組み立てる中でドラムのフィルってすごく重要なんです。フィルの叩き方だけで時代がわかるくらいで。幸宏さんのドラミングってそれを完全に理解していて、「この曲はリンゴ・スターでしょ」とか、「この曲はジョン・ボーナムでしょ」とか、1曲ごとに感じ取って叩き分けていて。「僕らの『LADY MADONNA～憂鬱なるスパイダー～』とか、幸宏さんが叩いてくれたらどうなるんだろうね？」って、昔からよく話をしていて。

──へえ！ じゃあ、本当に念願の。

NAOKI　そう。それで、幸宏さんに思いの丈をしたためた手紙を書いて送ったんですよ。そしたら、ありがたいことに引き受けてくださって。しかも、ツアー全部一緒に回っていただけることになって。

KUMI　すごいことだよね。

NAOKI　リハーサルからもう楽しみで仕方なくて。

──憧れというよりも、アーティストとしての純粋な欲求という感じですよね。「あのドラムが欲しい！」っていう。

KUMI　きっと、幸宏さんにもそこを面白がっていただけたんじゃないかな。

いい時代に世の中に出ることができた

──最後に、15年の歩みを振り返って、今思うのはどんなことですか？

KUMI　私の場合、最初にボブ・ディランを聴いて衝撃を受けちゃって、そこからそのまま音楽を始めた感じで。

──最初の衝撃が大きすぎた？

KUMI　そう。もう「これ！」って思ってやってきたから、ロックのルーツに忠実にやるしかなかった。その上で、自分たちにとって新しいことを探してここまでやってきただけで。

NAOKI　あと思うのは、1990年代末から僕らが出てきた2000年代の初頭の頃っていうのは、当時いろんな音楽のスタイルはあったけど、みんなけっこうまじめというか、恥ずかしがらずにロックができるようになった世代だったかもしれないですね。日本でまじめにロックをやることが、初めて許されるようになった時代というか。それまでの日本のロックって、どこかで舌を出してる感じのノリがあったというか。ちょっと頭を掻きながらロックをやってるくらいのほうが、みんなが受け入れやすかったと思うんですよ。まじめにやるより、そっちのほうがカッコいいみたいな価値観があった気がして。

──ああ、それは興味深い意見ですね。「ちょっと斜に構えているほうが正解」みたいな。

NAOKI　そうそう。歌詞も、ちょっとユーモアがあったほうが好感度が高いというか。あの時代までの日本のロックってそういうものが多かった。それが、個人的な付き合いは全然ないんだけど、例えばあの時代にDragon Ashのようなバンドが出てきたときに「あんなに思いっきり自分の心の叫びをそのまま歌にしていいんだ」って、みんな感じたと思うんですよ。それは海外のロックでは当たり前のことだったけど、日本でもそういうアーティストがようやく出てきて、それが若い子たちから支持されるようになった。今思うと、大きな流れとしてはそういう潮流の中に僕らもいたんだと思う。まじめにロックをやってもバカにされない時代がようやくきた。そういう意味では、いい時代に世に出ることができたなって思いますね。

──そう考えると、LOVE PSYCHEDELICOの存在って大きいですよね。「音楽以外の付加価値は何もない」っていうスタンスで、こうして15年やってきたわけですもんね。

KUMI　そうね、結果的には（笑）。