音楽ナタリー PowerPush - LiSA

「シルシ」が示す彼女の現在地

LiSAがニューシングル「シルシ」を12月10日にリリースした。

現在放送中のテレビアニメ「ソードアート・オンラインⅡ」《マザーズ・ロザリオ》編のエンディングテーマ「シルシ」は、LiSA自身が作詞を手がけた渾身のバラード。またカップリングとして11月まで放送されていた同アニメ《キャリバー》編のエンディングテーマ「No More Time Machine」や、一昨年放送の同《アインクラッド》編のオープニングテーマ「crossing field」の英語詞バージョンが収録されるなど、今回のシングルは「ソードアート・オンライン」(SAO)シリーズとの関連性を強く意識した1枚に仕上がっている。

LiSA曰く「シルシ」は「今だから歌える」バラードナンバー。1月の武道館公演以降、怒濤のテンションとスピードで2014年を駆け抜けてきた彼女の“今”とは?

取材 / 成松哲 文 / 倉嶌孝彦 インタビュー撮影 / 臼杵成晃

LiSAが仕掛けた2つのサプライズ

──すみません。ちょっとボヤかせてください。

へっ!? あっ……はい。

──10月頭に「LiSAさんの“バラード”が「SAOⅡ」の新エンディングテーマになります」っていう記事(参照:LiSA、新バラードで「SAO」新EDを彩る)をナタリーで出していて。で、10月18日の夜中「そういえば今日あたりから新曲が流れるんだっけ?」と思って「SAOⅡ」を観てたんですね。

LiSA

はい。

──で、本編が終わってエンディングテーマが流れてきた。その曲は確かにLiSAさんの曲“では”ありました。

ですよね(笑)。

──「ですよね(笑)」じゃないですよ! 土曜の夜中だしってことでビール片手にノンキにテレビを観てたら、シングル表題曲のバラード「シルシ」じゃなくて、アップリフティングな知らない曲、カップリングの「No More Time Machine」が流れてきたからホントにビックリして。慌ててニュースを書いたんですから!(参照:LiSA、新譜収録曲を昨日「SAOⅡ」で突如解禁

ありがとうございます! そしてすみません(笑)。カップリングが「SAOⅡ」の《マザーズ・ロザリオ》編の前に放送される《キャリバー》編のエンディングになるのは、アニメの中でサプライズ発表したかったもので、つい。

──しかもこの発表にはもう1つビックリがあったんですよ。

もう1つですか?

──この放送時点をもってシングル「シルシ」の収録曲が3曲とも「SAO」関連楽曲になることが明らかになりましたよね。しかもサプライズ解禁に見られるようにアニメの制作チームとがっちりコラボレーションしている。

そうですね。

──でも1月の武道館公演(参照:LiSA「LiVE is Smile Always ~今日もいい日だっ~ in 日本武道館」インタビュー)以降、LiSAさんはSiMのMAHさんも参加したノンタイアップのシングル「BRiGHT FLiGHT / L.Miranic」をリリースしたり、氣志團と対バンしたり(参照:氣志團vsLiSA!極東RRH第弐章開幕戦は“パンイチ”で大団円)、ロックフェス「TREASURE05X 2014」でそのSiMやTHE BACK HORNと競演したりしている。だから今年はいわゆるアニソンシーン外も射程に入れて活動しているのかな、と思っていたんです。

むしろ逆ですね。そういうことも含めて、いろいろな経験を積ませてもらった今だったら“100%LiSAの言葉”で「SAO」の曲を歌っても、ちゃんと作品に寄り添った内容になると思ったからこういうシングルを作ってみた感じですね。

自身の言葉でアニメを歌う

──じゃあちょっと意地の悪い質問なんですけど、今までは“100%のLiSA”としてアニメのテーマソングを歌えてはいなかった?

うーん……。「crossing field」の頃(2012年)までは確かに私と作品の間にちょっと距離があった気はします。 “100%LiSAの曲“として歌うというよりは、「SAO」というアニメをカッコよく紹介する曲を歌う人っていうスタンスでいたというか。そのあとの「träumerei」(2013年)もアニメのオープニングテーマではあったんですけど「crossing~」とはちょっと違って。その曲がテーマソングだったテレビアニメ「幻影ヲ駆ケル太陽」は原作のないオリジナルアニメだったので、私自身も物語を形作る1人になれた。アニメの脚本や設定資料を読んでLiSAとして感じたこと、私の色を付けて歌えた気がしているんです。で、そういう2つの経験をしたあとテレビアニメ「魔法科高校の劣等生」のオープニングテーマだった「Rising Hope」(2014年)では、私自身が曲に言葉を乗せさせていただいて。

LiSA

──タイアップものとしては初の自作詞曲でしたよね。

はい。その頃やっとアニメのテーマソングを私の言葉で書けるようになって。「Rising Hope」については、等身大のLiSAの言葉を並べたんだけど、でもちゃんと作品ともリンクした詞になったなと思ってます。

──そして今回の「シルシ」では「SAOⅡ」《マザーズ・ロザリオ》編とLiSAさんをリンクさせてみた、と。ただそれも少し不思議というか。LiSAさんは「SAO」シリーズに出てくるような、ヒットポイントがゼロになったらキャラクターはおろか、プレイヤーまでもが死ぬオンラインゲームで、ほかのキャラを殺したことは……。

ないですね(笑)。確かにアニメの設定っていう意味では、今までタイアップさせていただいた作品はほとんど私とリンクしてないです。「SAO」みたいなオンラインゲームをやっているわけでも、「魔法科高校の劣等生」の(司波)深雪ちゃんみたいに魔法が使えるわけでも、お慕い申し上げている“お兄様”がいるわけでもないですし(笑)。

──でも物語と自分をリンクできたわけですよね?

これは私がテーマソングを歌ってきたどのアニメについても言えることなんですけど、私は本当に恵まれていて。「負けたくない」って強く思っていたり、どのアニメのキャラクターたちも必ず私が共感できる部分を持っていてくれるんです。「シルシ」がエンディングになっている「SAOⅡ」の《マザーズ・ロザリオ》編は特に人の気持ちがしっかり描かれている作品ですし。しかもその気持ちっていうのは、私自身が聴いてくれるみんなに届けたい思いと同じ。だから詞を書けると思えたし、実際に書けたんだと思います。

ニューシングル「シルシ」 / 2014年12月10日発売 / アニプレックス
初回限定盤 [CD+DVD] 1728円 / SVMC-70031~2
期間生産限定盤 [CD+DVD] 1728円 / SVMC-70033~4
通常盤 [CD] 1296円 / SVMC-70015
初回限定盤および通常盤CD収録曲
  1. シルシ
  2. No More Time Machine
  3. crossing field -English ver.-
期間生産限定盤CD収録曲
  1. シルシ
  2. No More Time Machine
  3. シルシ -Instrumental-
  4. No More Time Machine -Instrumental-
初回限定盤DVD収録内容
  • 「シルシ」ミュージッククリップ
期間生産限定盤DVD収録内容
  • TVアニメ「ソードアート・オンラインⅡ」ノンクレジットED《キャリバー》ver.、《マザーズ・ロザリオ》ver.を収録。
LiSA(リサ)

6月24日生まれ、岐阜県出身。学生時代よりバンド活動を始め、2008年に活動の拠点を東京に移す。2010年春、テレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンド「Girls Dead Monster」の2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢され、同年5月にGirls Dead Monster名義のシングル「Thousand Enemies」をリリース。2011年4月にLiSA名義のミニアルバム「Letters to U」でソロデビューを果たす。以降、アニメ「Fate/Zero」のオープニングテーマ「oath sign」や、アニメ「ソードアート・オンライン」のオープニングテーマ「crossing field」などスマッシュヒットを連発。また2013年にはシングル「best day, best way」がオリコン週間シングルランキング6位を記録し、アニソンシーン内外で高い人気を誇る存在に。そして2014年1月3日には初の東京・日本武道館公演を開催し、同5月リリースのシングル「Rising Hope」(アニメ「魔法科高校の劣等生」オープニングテーマ)はオリコン週間シングルランキングで4位をマーク。2014年12月にアニメ「ソードアート・オンラインⅡ」のエンディングテーマ「シルシ」をシングルとしてリリースした。2015年1月10、11日には東京・日本武道館にてワンマンライブ「LiVE is Smile Always~PiNK&BLACK~」を開催する。