ナタリー PowerPush - 喜多村英梨

関係者にして愛読者!究極の“シドニアファン”が見つけた1つの解

この4月に2ndフルアルバム「証×明 -SHOMEI-」を発表した声優・喜多村英梨。そんな彼女が今月、ニューシングル「掌 -show-」を早くもリリースした。

「証×明 -SHOMEI-」リリース時、喜多村は次作では新たな一面を見せると宣言。事実、放送中のアニメ「シドニアの騎士」のエンディングテーマに採用されている「掌 -show-」表題曲とそのカップリング「Greedy;(cry)」はいずれも、彼女が提唱しているヘヴィメタル由来の“キタエリサウンド”のマナーに則りつつも、さらにラウドでさらに革新的な楽曲に仕上がっている。

「証×明 -SHOMEI-」リリースからわずか2カ月足らずのうちに喜多村はいかにして変化と進化を見せたのか? 本人に聞いた。

取材・文 / 成松哲

「どうしてもプログレッシブメタルをやりたかったんです」

──アルバム「証×明 -SHOMEI-」リリース時のインタビューで(参照:喜多村英梨「証×明 -SHOMEI-」インタビュー)喜多村さんは、自分や制作陣はいい意味で出し惜しみをしている。まだ開けていない引き出しがあるので、次のシングル「掌 -show-」ではそのうちの1つを開けてみると言っていました。

そうですね。

──じゃあその新しい引き出しの中身とはなんだったのか?といったら「証×明 -SHOMEI-」の収録曲以上にハードで音がデカい、ホントにゴリッとしたヘヴィメタルだった。だからちょっと驚いたんですよ。これ、逆じゃないのかなあ?って。

「逆」ですか?

──普通シングルではキャッチーなことをやって、よりエッセンシャルなことはアルバムでやるものなんじゃないかなあって。

あはははは、確かに(笑)。でもどうしてもプログレッシブメタルをやりたかったんです。というのも「シドニアの騎士」というアニメのタイアップのお話をいただいたとき、私の中の「海外アーティストばりにハードコアでラウドな曲をやりたいな」っていう引き出しが開いてしまったので。ヘビーでラウドでありつつも、ちょっとプログレッシブな感じの楽曲。Aメロ、Bメロと徐々に駆け上がっていってサビで爆発するっていうセオリー通りの曲ではなくて、セクションごとにちょっと変化球的な展開を見せる曲を作ってみたかったんです。

「テレビバージョンなんてルール、破ってもいいよ」

──確かに「掌 -show-」って実は喜多村さんのディスコグラフィにありそうでなかった1曲ですよね。ヘヴィメタルをベースにしてはいるんだけど、ピアノやストリングスやいかにもな電子音は入っているし、喜多村さんの語りを加工しまくって声ネタのように使いまくってるし。「『シドニア』のテーマソングを」って話があったとき、なんでこの引き出しが開いたんでしょう?

「シドニアの騎士」ってSFマンガ原作のアニメではあるんですけど、サイバーでエレクトロな感じのいわゆるSFとは違う。もっとどっしりしてるし、どこかドロドロしている作品だからアーティスト喜多村英梨の核心でもあるメタルサウンドを乗せられるかなっていうのがまずあったのと、あともうひとつ、私、この作品がホントに好きすぎるくらい好きなので(笑)。

──前回のインタビューでもそうおっしゃってましたよね。

テレビアニメ「シドニアの騎士」メインビジュアル

「AKIRA」のような緻密に世界観が作り上げられているんだけど、その世界全体やキャラクターにはどこか得体の知れない感じが漂っている。そういうSFがホントに好きなんですけど、「シドニアの騎士」ってまさにドンピシャなんですよね。奇居子(ガウナ)っていう謎の生命体から逃れるために街ごと宇宙での旅を続けているという世界を無理なく構築している上に、キャラクターが何を考えているのか実はよくわからないから(笑)。みんな人類の希望のために奇居子に抗おうとしてはいるんだけど、街並みやキャラクターはどこか退廃的だし、なんかドロッとした欲求みたいなものを抱えているし。しかも戦闘描写はなかなかエグいし(笑)。「掌 -show-」はそのテレビアニメ版のエンディングテーマだから、アニメのラストに流れるバージョンの尺は1分半なんですけど「テレビバージョンのことも考えて」なんて作り方をしていると負けちゃうくらいに濃い作品。逆に言うと、私にとっては「テレビバージョンなんてルール、破ってもいいよ」って言ってくれてるんじゃないかって思えるくらい濃い作品だったんです。

──その「シドニアの騎士」からのメッセージに従ったからなのか、「掌 -show-」ってテレビバージョンとCDバージョンでけっこう構成が違いますよね。

「すげえ作品なんだぞ!」って「シドニアの騎士」に対する愛情を爆発させつつ、作編曲の河合(英嗣)さんと一緒に劇場版アニメのテーマソングを作るくらいの勢いで作ってみたので(笑)。とりあえずフルレングスバージョンを仕上げて、あとはアニメのスタッフの皆さんに自由に1分半にエディットしてもらうっていう作り方をしてみたんです。

──だからテレビバージョンも十分カッコいいんだけど、実はテレビを観て満足しているとちょっと損する曲なんですよね。

スルメみたいな曲にしたかったからそういう作り方をした部分もあるので、そう聴いてもらえるとうれしいですね。テレビバージョンを聴いて「いいじゃん」って思ってCDを手にしてくださった方が、同じ曲を聴いてるはずなのに、また別の楽しみ方ができる。そうやって長い間付き合える曲にしたいっていうことは、制作に取りかかったばかりの頃から河合さんやレーベルのスタッフさんと話してましたから。

ニューシングル「掌 -show-」/ 2014年5月14日発売 / スターチャイルド
初回限定盤 [CD+DVD] 1944円 / KICM-91517
通常盤 [CD] 1234円 / KICM-1517
CD収録曲
  1. 掌 -show-(テレビアニメ「シドニアの騎士」エンディングテーマ)
  2. Greedy;(cry)
  3. 掌 -show- off vocal ver.
  4. Greedy;(cry) off vocal ver.
初回限定盤DVD 収録内容
  • 掌 -show- Music Clip
喜多村英梨(キタムラエリ)

「キタエリ」の愛称で知られる声優、ボーカリスト。2003年に声優としての活動を開始し、出演作品は「フレッシュプリキュア!」「魔法少女まどか☆マギカ」など多数。歌手としては2004年4月にデビューを果たし、2011年にスターチャイルドに移籍。3枚のシングルがヒットを記録し、2012年7月にリリースした1stフルアルバム「RE;STORY」はオリコン週間アルバムランキング最高5位をマークする。同11月には4thシングル「Destiny」を、2013年1月に5thシングル「Miracle Gliders」を、8月には6thシングル「Birth」を、そして2014年4月に2ndフルアルバム「証×明 -SHOMEI-」を発表。さらに翌5月にはアニメ「シドニアの騎士」エンディングテーマとなる7thシングル「掌 -show-」をリリースした。