音楽ナタリー PowerPush - 筋肉少女帯

4人で振り返る“新しいデビューアルバム”

大げさではなく、命がけじゃないとライブができない

──「THE SHOW MUST GO ON」というタイトルも、今の筋少の好調ぶりを示していると思います。1曲目の「オーディエンス・イズ・ゴッド」をはじめ、ライブを想起させる楽曲もいくつか収録されていますね。

大槻 オーディエンス側というよりも、ライブをこちら側の気持ちで歌っている曲が多いんですよ。「月に一度の天使」の前編・後編もそうだし。

橘高 「みんなの歌」もそうだね。

──以前のインタビューで大槻さんは「ライブ自体がモチベーション。ライブ依存症かもしれない」と発言していて。その気持ちがアルバムにも反映されているのかもしれないですね。

大槻 そうですね。僕においては、ライブくらいしか人生でやりたいことがないんですよ。ほかのことは全然……あ、でもね、この前、冤罪事件のシンポジウムの話を聞いたんですよ。その打ち上げでいろいろ話が出たらしいんですけど、自分の奥さんと姑と子供を殺した青年がいて、「いいヤツだから死刑にしないでくれ」という支援を受けていると。その事件が起きたのは小さな集落で、なんと被害者の遺族も支援活動に参加してるっていう。それはすごいなあって思いますよね。冤罪はもちろんだけどシンポジウムすごいなー、行ってみたいやってみたいと思った。だから、人生に必要なのはライブだけじゃないかもしれない。

内田雄一郎(B)

内田 ハハハハハ(笑)。

大槻 「筋少シンポジウム」ってどうかな。

橘高 ライブじゃなくてシンポジウムね(笑)。

──(笑)。ライブに対する意識も変わってきますか?

橘高 これは25年前からそうなんだけど、このバンドには“ライブでやるためにアレンジする”という考えはないんですよ。スタジオ盤はスタジオ盤でしっかり作り込んで、ライブはまた別っていう。レコーディングではギターを何十本と重ねるし、今回もかなりオーバープロデュースですからね。筋少の面白いところは、それでもライブでできなかった曲はひとつもないってことなんですよね。それが26年目に突入できた理由かもね、もしかしたら。今はライブが大事じゃないですか。ライブが楽しくて、説得力がないとやっていけないというか。

大槻 しかも筋少はすごい爆音ですからね。それで2時間以上のライブをやるとなると、大げさではなく、この歳にもなると命がけじゃないとできないんですよ。下手したら血管がプツンといきますから。

橘高 その覚悟は持ってるよね。

大槻 そういう意味では、若いときに比べても緊張感は全然違いますよ。炎天下のフェスで「釈迦」をやって、「とろろの脳髄」って絶叫してるときなんて、「あ、これはヤバい、倒れるかも」って思いますから。1本1本の重みが違うというか。

橘高 それでもなんでこんなに楽しくライブができるかっていうと、やっぱりお客さんが喜んでくれるからなんですよ。昔はこんなこと恥ずかしくて言えなかったんだけど、ホントに心底求めてくれて、喜んでるお客さんの姿を見ると、こっちも幸せなアドレナリンがいっぱい出てきて、ステージ上では疲労を感じなくなるんですよ。その代わり、ステージを降りたときはすごいことになってるけどね、みんな。

本城 そうだね(笑)。

「それはおまえの仕事じゃない」

橘高 元気がなかったお客さんが元気になったり、「ロックのライブはすごいな」って思いますからね。昔はそこまでお客さんのことを考えられなかったんですよ。

大槻 そうそう。オーディエンスに対する「ありがとう」っていう気持ちも、普通に起きますからね。それはすごく感じるなあ。ただ、それを素直に出すのは恥ずかしいから、「気もそぞろ」みたいなツンデレな曲を書いたりするんですけど。

──ライブの最中に「あの子は来たのかな? 招待状は送ったのに」って気にしてるっていう歌詞ですからね。

橘高 でもね、「お客さんを喜ばせるためにCDを作るようになっちゃいけない」って思うんですよ。やっぱり我々は、自分たちが満足できるアルバムを作るべきだっていう。その意思を強く持ってスタジオに入ってましたけどね、今回も。そうじゃないと、自分たちの過去の作品を模倣することになってしまうので。

──常に新しい要素が必要である、と。

橘高 今回もいろいろ新しいことがありましたよ。数年前に大槻がギターを始めたんですけど、曲出しのときにギターで作ったデモを初めて持ってきたんですよ。

大槻 わざわざギターを持って行ったんです。

橘高 その場で弾き語りもできるようにって。そのデモにはギターのリフも入ってたんですけど……。

大槻 テンション系のおしゃれコードも入れてたんですけど、それがお気に召さなかったようで。

内田 (笑)。

大槻 「なんでおまえがオシャレなことをやってるんだよ!」っていう。

橘高 違うよ! あのデモはよかったんだけど、ギターに縛られてるような感じがして。大槻はずっと鼻歌とか、ベースラインで曲を作ってたんですよね。場合によっては設計図だけとか。

大槻 佐村河内さんより前にね。

橘高 (笑)。でも、そっちのほうが俺らはアレンジのイメージが沸くんですよ。だから今回も「リフから作るのはちょっと難しそうだから、昔みたいに鼻歌で作ってみたら?」って言って。そのとき俺は「ギターのリフでデモを作るとか、それはおまえの仕事ではない!」って、ふんぞり返ったらしくて(笑)。そういうつもりじゃなかったんですけど。

大槻 それを覚えてないって言うんですよ。

橘高 俺はきっと、筋少への愛から言ったと思うんだけど。で、そのあとで大槻がベースから曲を作ってきたんです。

大槻 「月に一度の天使」と「みんなの歌」ですね。

橘高 それがすごくよかったんです。筋少の初期から中期くらいの雰囲気なんだけど……。

──しっかり現在の筋少の曲として成立してますよね。

本城 で、それ以来「おまえの仕事じゃない」っていうのがキーワードになって。

橘高 それをひっくり返して「これは俺の仕事だ」っていうワードが出てきたり(笑)。曲が出揃ってきたときに、大槻が珍しく「もう1曲、“橘高メタル”があったほうがいいんじゃない?」って言い出したんです。俺の中では「ゾロ目」が完璧な橘高メタルソングだと思ってたから、「え?」ってちょっと困ってんだけど、そこでも「それがおまえの仕事だろう!」って言われて(笑)。「この野郎!」って自分を奮い立たせてイマジネーションしたのが、「恋の蜜蜂飛行」なんですよね。26年目にそういうやりとりができるのも、いいことなのかな、と。

ニューアルバム「THE SHOW MUST GO ON」2014年10月8日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
「THE SHOW MUST GO ON」
初回限定盤 [CD+DVD] 3996円 / TKCA-74148 / Amazon.co.jp
通常盤 [CD] 3086円 / TKCA-74152 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. オーディエンス・イズ・ゴッド
  2. 労働讃歌
  3. ゾロ目
  4. 霊媒少女キャリー
  5. ムツオさん
  6. みんなの歌
  7. 月に一度の天使(前編)
  8. 愛の讃歌
  9. 月に一度の天使(後編)
  10. 恋の蜜蜂飛行
  11. 吉原炎上
  12. 気もそぞろ
  13. ニルヴァナ
初回限定盤 DVD収録内容
  • ゾロ目(MUSIC VIDEO)
  • LIVE映像7曲(全曲初映像化!)
    2014.4.12 筋少2枚組ダブルジャケット 1枚目
    「レア過ぎ盤、、、鉄道少年の飼い犬はペテンその他」at TSUTAYA O-EASTより
    1. ペテン
    2. 鉄道少年の憩
    3. 飼い犬が手を噛むので
    4. ベティー・ブルーって呼んでよね
    5. モコモコボンボン(Vo.内田 Ba.大槻 Ver.)
    6. リテイク
    7. ヘドバン発電所
筋肉少女帯(キンニクショウジョタイ)

1982年に中学の同級生だった大槻ケンヂ(Vo)と内田雄一郎(B)によって結成。インディーズでの活動を経て、1988年にアルバム「仏陀L」にてメジャーデビューを果たす。1989年に橘高文彦(G)と本城聡章(G)が加入し、「日本印度化計画」「これでいいのだ」「踊るダメ人間」などの名曲を発表。特に「元祖高木ブー伝説」はチャートトップ10入りを記録し、大きな話題に。大槻による不条理&幻想的な詩世界とテクニカルなメタルサウンドが好評を博すものの、1998年7月のライブをもって活動を凍結。各メンバーのソロ活動を経て、2006年末に大槻・内田・橘高・本城の4人で活動再開を果たす。2007年9月には約10年ぶりのオリジナルアルバム「新人」をリリース。日本武道館公演や「FUJI ROCK FESTIVAL」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」といった大型イベントへの出演など、精力的なライブ活動を展開する。2013年にはメジャーデビュー25周年を記念して、新録音によるセルフカバーベストアルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」を発表。2014年には4年4カ月ぶりのオリジナルアルバム「THE SHOW MUST GO ON」をリリースする。