ナタリー PowerPush - 川嶋あい

I WiSHデビューからを振り返る「自分との闘い」10年史

I WiSHのaiはバーチャルっていう感覚

──日々、路上ライブに明け暮れる中、デビューしたいという思いは強く持っていたんですか?

そのときはデビューしたいという考えは吹き飛んでいましたね。自分で立てた目の前の目標をまず達成しないとなっていう気持ちだったので。

──ですが、その最中にデビューが決まるわけですよね。I WiSHのaiとして。

川嶋あい

はい。全く信じられないことでした。I WiSHとしてデビューしてからも、川嶋あいとして路上に立って歌ってましたし。「あいのり」に「明日への扉」を使っていただけるというお話も、実際オンエアを観るまでは信じられなくて。本当にテレビから自分の歌が聴こえてきたときには、うれしくて自然と涙を流している自分がいましたね。まだ路上ライブは1000回まで届いてはいなかったですけど、自分の意思で前へ踏み出して、毎日続けてきたからこそここまでたどり着けたんだなって強く思いました。

──I WiSHはデビューしてすぐに、たくさんの人に受け入れられることになりました。ですが、I WiSHのaiが川嶋あいであることを当初は発表していませんでしたよね。それについてはどう感じていましたか?

稼働も全然してなかったですし、ライブもやってなかったので、I WiSHのaiはバーチャルっていう感覚がすごくありました。逆にリアルを生きているのが川嶋あいで、路上に立って歌っているのが本当の自分だなって。でも、I WiSHには相方のnaoさんがいて、ユニットとして曲作りをしていたので、それはすごく楽しかったですし、勉強にもなっていましたね。

──その後自らの正体を世に明かし、約2年の活動でI WiSHは解散します。

aiが川嶋あいであると言えたときは、やっと言えたなっていう安心感が大きかったです。その後改めて川嶋あいとしてリスタートしたい思いが強くなったので、路上ライブ1000回達成を機に解散という選択をしました。もちろんI WiSHに対しては名残惜しさもありましたけど、活動形態が2つあることで混乱しているファンの方もいましたからね。でも私の中には、I WiSHを捨てるわけではなく、自分に重なるものとして大事にしていこうっていう気持ちがありました。だからこそ、来年やるデビュー10周年記念ライブのタイトルに「I WiSH」と付けることができたんだと思います。

自分自身と闘っている感じはずっとある

──再び川嶋あいとしての活動1本になってからの約7年間を今振り返るとどうですか?

当初の目標を達成したことで路上ライブからは卒業していたので、歌う場所がライブハウスやホールになったりっていうことはありましたけど、歌に対しての気持ちは路上を始めたころからの延長線上で、そこまで変わった感覚はないですね。47都道府県全てでライブをするという新たな目標が生まれたりもしましたけど、基本的にはリリースする作品にひたすら集中してきた感じです。とにかくいい作品を、心に残る作品を生み出していこうっていうのが一番大きな目標になっていました。それは今も同じなんですけど。

──路上に飛び出すときに存在していた崖っぷち感はもう完全に払拭されていました?

川嶋あい

崖っぷちっていう気持ちはもうなくなってましたね。活動を続けていく中で、絶望から少しずつ希望が見え始めてきていたので。でも自分自身と闘っている感じはずっとありますよ。そこは多分変わらないところだと思います。今もこういう自分になりたいなっていうものがどんどん生まれてくるからこそ、前に進めているんだと思うので。

──自分から生み出される歌詞やメロディに変化を感じることは?

ああ、それは少しあるかもしれないですね。15、16歳の頃に作っていた作品は、自分の心の底から湧き上がってくる思いをそのまま形にしていたので、ものすごく自分の生き方がにじみ出ていたと思うんですよ。それこそ挫折感や絶望感がありのままの形で出ていたと思いますし。でも路上を卒業した頃からは、そういった自分の生き方はあくまでも土壌として曲に込めるようになったんです。自分のベーシックな部分はちゃんと要素としてありつつも、そこに妄想だったり空想だったり、いろんなエッセンスを加えて脚色していく方法が多くなってきましたね。

歌をどういうアレンジでどう聴いてもらうか

──今年の8月20日に渋谷公会堂で開催されたライブは、10年前の同日に同会場で行ったライブと同じセットリストだったそうですが、そこでも以前の自分との変化を感じることができたんじゃないですか?

確かに今の自分では書けないだろうなっていう曲が多かったです。10代だからこそ書けたものだったんだろうなっていう感覚で歌ってましたね。

──ステージ上から見る景色も違いました?

そうですね。10年前は目標としていたステージに立てたということと、初めて2000人のお客さんの前で歌うということで、あっという間に時間が経っていったんですよ。でも今回は1曲1曲をかみしめながら歌うことができたので、ゆったりと時間が過ぎていった感覚がありました。その分、お客さんの表情もしっかり見ることができましたし。

──その日の模様は今回DVDとしてリリースされます。内容を観て印象的だったのは、本当にシンプルなステージの上で、歌だけで勝負する川嶋さんの凛とした姿で。

川嶋あい

ステージの装飾のこととかは、全然考えないですからね。考えるのはあくまで歌をどういうアレンジでどう聴いてもらうかということだけなので。そういう考え方も路上から始まったことが影響してるかもしれないですね。

──その裏には歌だけで勝負できるという自信もあるのでは?

自信とはちょっと違うかもしれないですね。やっぱり歌だけで聴かせていくことは相当難しいんですよ。でも、そういう緊張感の中にあえて自分を入れることが大事っていうか。そこにずっと挑んでいきたいと思うので。

──やっぱりストイックですね(笑)。

そうですね(笑)。

川嶋あいデビュー10周年記念イベント
「I WiSH」

2013年2月14日(木)
東京都 Zepp Tokyo
OPEN 18:30 / START 19:15
料金:指定 4900円 / 立見 4300円

  • チケットぴあ
    0570-02-9999(Pコード:184-504)
  • ローソンチケット
    0570-084-003(Lコード:78844)
  • CNプレイガイド
    0570-08-9999
  • イープラス

チケット予約はこちら

川嶋あいデビュー10周年記念&誕生日ライブ
「I WiSH」

2013年2月21日(木)
大阪府 大阪BIG CAT
OPEN 18:30 / START 19:15
料金:指定 4900円 / 立見 4300円

  • チケットぴあ
    0570-02-9999(Pコード:185-917)
  • ローソンチケット
    0570-084-005(Lコード:56676)
  • CNプレイガイド
    0570-08-9999
  • イープラス

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川嶋あい(かわしまあい)

1986年福岡県出身の女性シンガーソングライター。2001年に単身上京し、翌2002年から電子ピアノの弾き語りスタイルでストリートライブを開始。同時に音楽ユニット・I WiSHのボーカルaiとしても活動する。2003年5月には路上でのCD手売り枚数が5000枚に到達。同年8月20日には渋谷公会堂で初の単独ライブが実現する。2005年にはストリートライブ1000回を達成し話題に。2008年にはデビュー5周年を記念したベストアルバム「SINGLE BEST」「COUPLING BEST」を同時リリースした。2012年8月20日には渋谷公会堂で、10年前と同じセットリストでライブを敢行。近年はランニングを趣味とし、2012年11月の「神戸マラソン2012」では4時間10分で完走を果たした。