ナタリー PowerPush - じん(自然の敵P)
一大メディアミックスのサイドストーリーを告白
「チルドレンレコード」はテーマソング的な位置づけ
──今回発売される1stシングル「チルドレンレコード」も、これまでの楽曲やその小説と同じ世界観を持つ連作のひとつなんですよね。
そうなんですけど、ちょっと違うのは、これはテーマソング的な位置付けなんです。アルバム収録曲はある意味キャラソン。もちろん僕の思想や意思も反映されてはいるんですけど、イヤでも人の注目を集めてしまう女の子やニートの男の子というように、歌詞の中の主人公はあくまでその思想や意思の一部ずつを特化させて具現化したキャラクターたちなんです。でも、シングルのタイトル曲の「チルドレンレコード」は、僕がどんな思想や意思を持ってこの連作を発信しているのかを定義した曲になっていて。サビの頭で「少年少女 前を向け」と歌ってるとおり、もし大人や社会に理不尽な目に遭わされたなら現状を受け入れてはいけない。納得できないなら立ち向かえ!っていうメッセージを込めたつもりなんです。タイトルも、そんな「子供たち(=Children)の記録(=Record)」でありつつ、あと「子供たちが再び(=Re)理不尽に立ち向かう作戦(=Cord)を決行する」っていう意味になってますし。
──楽曲自体もその宣言どおり、これまで以上にタフですよね。アルバムでも半分近くの楽曲がハードなバンドサウンドになっていましたが、「チルドレンレコード」はじんさんがガツガツとカッティングする、さらに威勢のいいギターロックになっています。
やっぱりバンドが好きですから。実は1作目の「人造エネミー」を打ち込みで作っているときからアレンジや構成はバンドでのプレイを意識した作りにしてましたし、4作目の「ヘッドフォンアクター」、いや、その前にニコニコ動画の「歌ってみた」カテゴリの歌い手さんに楽曲を提供させてもらった頃から、ベーシストさんとドラマーさんにも参加していただくようになっていて。そういうメンバーが揃っていて、しかも衝動や若さを表現したいなら、僕の中ではやっぱりバンドアレンジしかないんですよね。あと、アレンジを決めるとき一番意識したのが、この作品がアルバムじゃなくてシングルであるっていうことだったので。
──「シングルであるということ」って?
CD屋さんでシングルを買ってきて、いざCDプレーヤーに入れて最初にバンッ!って音が鳴った瞬間のワクワク感ってあるじゃないですか。
──基本的にシングル曲って、アルバム収録曲よりも派手でキャッチーだから、なおのことワクワクしますよね。
「チルドレンレコード」もそういうつもりで書いていて、再生した瞬間から曲が終わるまでずっとワクワクしてほしいんですよ。
──お話を聞いていて「面白い人だな」と思ったんですけど、じんさんってボカロユーザーの動向や性格をリサーチして連作を作るクレバーさをのぞかせつつも、その一方でシングル盤を買ってくる楽しみの話に象徴されるように、古き良きロック小僧っぽい熱さも持ち合わせていますよね。
そうですか(笑)。でも、確かに今回のシングルにもそういう面は出てるのかもしれない。2作目の「群青レイン」は「チルドレンレコード」のようなメッセージ色はほとんどなくて、連作と同じ世界に生きる、ある母と娘のキャラソンですから。それに「チルドレンレコード」の歌詞だって連作の世界観と繋がるものにもしてあって、単純に「これはメッセージソングです」っていうものでもないし。こういうバランスのシングルを作っちゃうのも僕らしい気はしますね。
ニューシングル「チルドレンレコード」/ 2012年8月15日発売/ 1st PLACE / IA Project
- 「チルドレンレコード」初回限定盤
- 「チルドレンレコード」初回限定盤 [CD+DVD] 1890円 MHCL-2110~2112
- 「チルドレンレコード」通常盤 [CD+DVD] 1575円 HCL-2113~2114
収録曲
- チルドレンレコード
- 群青レイン
- チルドレンレコード(Instrumental)
- 群青レイン(Instrumental)
DVD収録内容
- チルドレンレコード(Music Video)
- 如月アテンション(Music Video)
【初回生産限定盤】スペシャルブック付、スーパーピクチャーディスク仕様
1stアルバム「メカクシティデイズ」
収録曲
- ロスタイムプロローグ
- カゲロウデイズ
- ヘッドホンアクター
- 空想フォレスト
- エネの電脳紀行
- デッドアンドシーク
- 人造エネミー
- 透明アンサー
- 如月アテンション
- メカクシコード
- コノハの世界事情
- シニガミレコード
- カイエンパンザマスト
じん(自然の敵P)(じん しぜんのてきぴー)
1990年10月20日生まれ、北海道利尻島出身のボカロP。幼少期より音楽に親しみ、学生時代にはバンド活動を行う。2011年にニコニコ動画に投稿した「人造エネミー」でボカロPとしてデビュー。瞬く間にニコ動ユーザーの間で話題を集め、数々の楽曲でランキング上位入りを果たす。2012年5月、それまでに発表した楽曲の世界観を1枚のアルバムに集約した1stフルアルバム「メカクシティデイズ」をリリース。楽曲に登場するキャラクターの物語を小説化した「カゲロウデイズ -in a daze-」で、小説家としてもデビューした。2012年8月に1stシングル「チルドレンレコード」をリリース。