音楽ナタリー Power Push - J
先へつながる20周年ベスト盤
6月にソロデビュー20周年を迎えるJが、ベストアルバム「20th Anniversary BEST ALBUM <1997-2017>[W.U.M.F.]」を3月22日にリリースした。ファンのリクエスト上位曲を中心に選曲された本作は、アグレッシブなロックナンバーを軸にしたDISC 1、ミディアムチューンやバラードを収めたDISC 2からなる2枚組となる。さらにDISC 1には新曲「one reason」を、DISC 2にはリクエスト1位となった「ACROSS THE NIGHT」の再録バージョンを収録。また、ボーカルを録り直したニューバージョンも6曲収められている。
今回のインタビューでは、本作の制作をフックにしながら、J自身にソロアーティストとしての20年間の軌跡を語ってもらった。ロックへの強い愛とプライドを失うことなく、さらに前進を続ける彼の生き方を感じ取ってほしい。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 上山陽介 ヘアメイク / 丹羽寛和 (maroonbrand)
リクエストの結果を見てうれしい気持ちに
──ソロデビュー20周年を記念したベスト盤「20th Anniversary BEST ALBUM <1997-2017>[W.U.M.F.]」がリリースされます。ファンの皆さんのリクエスト投票をもとに選曲しているそうですね。
はい。過去にリリースしてきたベストアルバムとは違う形にしたいと模索する中で、「リクエストを募集するのはどうだろう?」というアイデアが出てきて。最初は「どうなるんだろうな?」と思ったんですが、リクエストの結果を見て、すごくうれしい気持ちになったんですよね。選んでもらった楽曲を見ると、今の俺を明確に表してくれているなって。いつもライブで一緒に盛り上がってくれるみんなや、LUNA SEAを含めてこの20年間ずっと応援してくれたみんな、それと俺のライブに来てくれる「実はLUNA SEAのライブは観たことがないんです」という世代のみんな。リクエストの結果の中には、そういったいろいろな人の思いが入っていますからね。自分1人で選んでいたら、もっと偏ったラインナップになっていたかもしれないですね。
──1stアルバム「PYROMANIA」から最新アルバム「eternal flames」まで、Jさんのキャリアを網羅した選曲になっていますね。
そうだね。しかも、新旧問わず最近のライブでやっていた曲の多くがリクエストの上位を占めていて。それも俺にとってうれしいことの1つだったんです。過去の曲を過去に置いてきてしまうのがすごくイヤなんですよ、俺は。1997年にリリースした1stアルバムの楽曲もいまだにプレイするし、最新アルバムの曲もやっていて。つまり、時代や時間というものを意識しないで選曲してるんですね。きっとみんなも“昔の曲”とか“最近の曲”ではなく、純粋に好きな曲をピックアップしてくれたんじゃないかなって。
──攻撃的なロックナンバーを軸にしたDISC 1、バラードを中心にスローな楽曲を収めたDISC 2に分けたのはどうしてなんですか?
「どんな形が一番刺激的だろう?」と考えた結果ですね。1枚はアッパーな曲、もう1枚はミディアム、スローな曲を入れてコントラストを付けるというのはスタッフのアイデアなんだけど、俺自身も「面白そうだな」と思って。そういうことをやれる機会もないだろうし、過去の曲を集めたベストアルバムだからこそできることですからね。俺らしい形になったと思います。
今の自分を映し出すために録り直し
──ボーカルを新たに録り直した“2017 New Vocal Version”も6曲(「Sixteen」「GO with the Devil」「Evoke the world」「Heaven」「Graceful days」「Tomorrow」)収録されています。
収録曲が決まっていく中で「今の自分だったら、こんなふうに表現するだろうな」と思う曲がいくつかあったんですよ。その中から、今の自分の声を当ててみたいと感じた曲のボーカルを録り直したということですね。ベストアルバムは過去の楽曲を集めたものですけど、俺自身はまだ走っている最中だし、過程の中にいるんですよね。だからこのベストでも、今の俺を映し出すようなトライをしたくてね。それは、過去を消しゴムで消すような作業ではないんです。過去に作った曲はしっかりと存在していて、新たにその景色の続きを作りたいということに近いんです。
──実際に歌い直してみてどうでした?
やってよかったと思いました。「過去の音源を超えられなかったり、情熱を感じられなかったら、入れないほうがいい」と思ってたんですが、実際にやってみたら、すごくいいものが生まれたので。実はすべて今のボーカルに変えてるわけではなくて、過去のボーカルやコーラスと今の歌を混ぜているんですよ。「ここは昔のほうがカッコいいな」と思うところがあれば、今の声とミックスしたり。ある人から「全部歌い直したほうがラクじゃね?」と言われましたけど(笑)、自分自身はさっき言ったように「その先にある世界を作れた」と感じています。
──なるほど。「ACROSS THE NIGHT」は演奏も含めて、すべてを録り直した“2017 Re-Recording Version”として収録されています。
「ACROSS THE NIGHT」はリクエスト1位の曲なんです。この曲も1stアルバムに収録されているんですけど、アッパーな曲ではなくて、こういうロッカバラードが1位になったこともすごくうれしくて。今のバンドメンバーともライブでプレイしているし、新しいテイクを作ることで、さらに先につながっていけたらいいなと思ったんですよね。そのときもやっぱり「原曲以上にならなかったら、収録しないって言っちゃえばいい」って思っていたんだけど、2つ目のバージョンにふさわしいクオリティとテンションでやれましたね。
──原曲を超えたかどうかをジャッジできるのはJさんだけですからね。
そうですね。自分の中から生まれた曲だから、他人は気付かないようなところで違和感を感じたりもするので。それを1つひとつ潰していく作業もしなくちゃいけないし……でも今のメンバーがオリジナルのテイクのよさをさらに伸ばしてくれたから、ストレスは全然なかったです。制作は思った以上に大変だったけど、オリジナルを作った時とは違う、新しい景色に出会うことができましたね。
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- ベストアルバム「20th Anniversary BEST ALBUM <1997-2017>[W.U.M.F.]」 2017年3月22日発売 / ONECIRCLE
- 初回限定盤
- Blu-ray [2CD+Blu-ray+BAND SCORE+PHOTO BOOK] 12960円 / CTZD-20056~7/B
- DVD [2CD+DVD+BAND SCORE+PHOTO BOOK] 12960円 / CTZD-20054~5/B
- 通常盤
- 2CD+Blu-ray 6480円 / CTCD-20060~1/B
- 2CD+DVD 6480円 / CTCD-20058~9/B
- 2CD 4104円 / CTCD-20062~3
DISC 1(CD)
- BURN OUT(2011 Mix Version)
- PYROMANIA(2011 Mix Version)
- Die for you(2011 Mix Version)
- Feel Your Blaze(2011 Mix Version)
- Sixteen(2017 New Vocal Version)
- GO with the Devil(2017 New Vocal Version)
- break
- Evoke the world(2017 New Vocal Version)
- Go Charge
- RECKLESS
- addiction
- Vida Rosa
- here we go
- If you can see me
- NEVER END
- one reason
DISC 2(CD)
- ACROSS THE NIGHT(2017 Re-Recording Version)
- Heaven(2017 New Vocal Version)
- Graceful days(2017 New Vocal Version)
- Tomorrow(2017 New Vocal Version)
- NOWHERE(2011 Mix Version)
- When You Sleep
- Blank
- Mirage #9
- walk along -Infinite mix-
- ray of light
- white
- baby baby
- Endless sky
- Everything
- I know
J(ジェイ)
1992年、LUNA SEAのベーシストとしてアルバム「IMAGE」でメジャーデビュー。1997年のバンド活動休止期間にシングル「BURN OUT」でソロデビューを果たす。2000年12月のバンド終幕以降、本格的なソロ活動を開始。LUNA SEA時代からソングライターとして知られる彼ならではの、パワフルでパンキッシュなロックサウンドが高い支持を得る。2003年にはソロとしては初となる東京・日本武道館でのライブを実施。また楽器メーカーESPから発売されているJオリジナルモデルのベース販売数は累計で5万本に達し、世界でもっとも売れているアーティストモデルのベースとなっている。2008年にLUNA SEAが“REBOOT”(再結成)して以降は、ソロと並行して音楽活動を展開。2015年9月に通算10枚目のオリジナルフルアルバム「eternal flames」をリリースしたのちに全国ツアーを開催した。2016年3月、「eternal flames」のレコ発ツアーのライブ映像とレコーディングドキュメンタリーを収めた映像作品「CRAZY CRAZY V -The eternal flames-」を発表。2017年3月に、ソロデビュー20周年を記念してベストアルバム「20th Anniversary BEST ALBUM <1997-2017>[W.U.M.F.]」をリリースする。