ナタリー PowerPush - ももいろクローバー
ファン待望の初期楽曲集ついに登場 過去と現在をつなぐ「ラフスタイル」
高城れに インタビュー
現メンバーで唯一ももクロ結成の瞬間に立ち会っているのが、メンバー最年長の高城れにだ。彼女のダイナミックなダンスと、ときおり見せる破天荒なふるまい、そして優しくあたたかな歌声は、ももクロの個性を際立たせる重要なキーと言える。
「ラフスタイル for ももいろクローバーZ」のレコーディングでは、楽曲の全体像を決めるガイドとなりうる歌録りのトップバッターを高城が務めた。インタビューではレコーディング終了直後の高城に、このアルバムへの思いと現在の心境を語ってもらった。
今回は「伝える」ことがメイン
──今日のレコーディングはいかがでしたか?
今日はそんなに緊張せずにできたかなって思います。こういうふうに歌ってほしいとか、求められてることがけっこうわかりやすかったので。
──「ラフスタイル」はかなり初期の頃の曲になるわけですが、この曲って高城さんにとってどんな曲ですか?
路上で歌ってたときの印象が強いです。最近はももクノ(ももクロメンバー自身がステージ上でセットリストを組み立てるライブシリーズ「独占!ももクノ60分」)とかでしかやってないなあ。でも私、この曲はすごく好きで。サビの部分の「悪い事もあるし 良い事だってきっとある」とか自分が普段考えていることと重なっていたりして。
──最初にレコーディングしたときのことは覚えてますか?
キーがすごく高かったイメージがあります。とにかく歌わなきゃって思ってたから「どこを強く、どこをやさしく、ブレスはどこで」とか、あの頃はそんなことまったく考えてなかったです。歌詞も大人な感じがしたし、難しい曲だと思いました。今回は「歌う」ということだけじゃなくて、「伝える」ことをメインに考えました。
──今回は「どうにもならない昨日を 悔やんで夜が明けた」という歌詞を高城さんと有安(杏果)さんとで歌っていますが、ディレクションを務めた佐藤守道さんからは、このパート分けは2人のパーソナリティを考えてのことだと聞きました。やはりももクロ結成から5年の月日が流れていなければ、同じ曲でありながらもこのような発想は出てこなかっただろうなと。
うん。そう思います。前のレコーディングのときは「情景を伝える」みたいなことを考えながら歌うことなんてできなかったので、自然とそれができるようになったのはちょっと成長したのかなって。
「感情はあるんだけど風景を口に出してる、みたいな感じ」
──今回は近藤研二さんによってアレンジが大きく変わりました。この変化についてはどう思いました?
聴かせる歌になった。なんか一皮むけた「ラフスタイル」って感じ。あと、なんか歯医者さんで流れてそうだなって(笑)。聴くごとに変わっていくんですよ、雰囲気が。最初に聴いたときの印象は歯医者さんで、3~4回目あたりからおしゃれなカフェみたいになって。今はマッサージ店とか、癒し。
──マッサージ店(笑)。歌い方もけっこう変わりましたよね。
うん、変わったかもしれない。曲調が落ち着いたものになったから、「大人」とはまたちょっと違う落ち着いた歌い方になったと思う。それこそさっき言ったマッサージとか歯医者さんとかそんな感じ。ちょっと心が静まるような。もりちゃん(佐藤)が言うには、私のパートは「感情はあるんだけど風景を口に出してる、みたいな感じ」って。
──そう言われて、高城さんがイメージした風景は?
サラリーマンがいっぱいいるみたいな。渋谷に。
──歌詞の最初が「通りを埋める人ごみの中」だから?(笑)
そう!(笑)
──あはははは(笑)。サラリーマンのイメージというと新橋あたりかなとも思うんですが、渋谷なんですね。
うん、渋谷。あとね……アメ横みたいな感じ! 私がこの歌でPVを作るとしたらアメ横で撮る。アメ横の門を背にして、奥に続いていく感じを撮りたい! サラリーマンも必要だから、渋谷とアメ横で撮りたいな。
「ももクロ飽きられちゃうんじゃないか」っていう危機感
──「ラフスタイル for ももいろクローバーZ」はアルバム「入口のない出口」に収録されますが、こうして昔の曲が集まったアルバムが出ることについてはどう思いますか?
出すなら今かなって思う。今でしょ!(「いつやるか?今でしょ!」風に、ドヤ顔で)
──それが言いたいだけでしょ!(笑)
違う! 違う! それが言いたいんじゃない!(笑)ちゃんとこれには理由があります。私たちは「5TH DIMENSION」というアルバムを作るまで「ももクロ飽きられちゃうんじゃないか」っていう危機感みたいなものを感じてたんです。「にぎやかな曲が多い」「ダンスが激しい」「アクロバティック」みたいな、そういうももクロに対する固定観念ができつつあるなと感じていて、同じことをずっと続けてたら飽きられちゃうんじゃないかって。
──そういう危機感はいつ頃から感じていたんですか?
2011年のももクリ(クリスマスライブ「ももいろクリスマス2011」)ぐらいからかな。もちろん1つひとつのライブはすごく楽しいし、全部全力でやるんですけど、なんかどこかで「変わらなきゃな」って気持ちが芽生えてきて。でも「5TH DIMENSION」を作って、新たな挑戦をたくさんして、視野が広がっていろんな見方ができるようになった。絶対これだっていう居場所ができた、みたいな感じなんです。「5TH DIMENSION」で音楽的にもパフォーマンスとしても新たな挑戦ができたことで、またゼロからのスタートが切れたという気持ちになれたんです。
──確かに「5TH DIMENSION」というアルバムもツアーも「新しいももクロ」、「違う次元に行く」というテーマをとことん追求していたと思います。
だから今回、昔の曲を振り返りつつ「ラフスタイル」を新たにレコーディングできたというのは、その一皮むけたももクロが昔の曲に挑戦するっていういい機会だったなって。ファンの皆さんにもその差を楽しんでもらいたいから、私たちも意識的に前よりいいものを作り上げようって思うし、私たち自身にも新しい発見があると思うから。「5TH DIMENSION」ツアーは全公演同じセットリストだったけど、それでも自分たちのできることってなんだろうって1公演ずつ考えながらやっていったんです。それと一緒で、同じ曲だからこそ自分たちは今どうするべきなのかと考えたり、歌で成長できるいいきっかけになったんじゃないかなと思います。
「ラフスタイル for ももいろクローバーZ」レコーディング風景
「ラフスタイル for ももいろクローバーZ」のボーカルレコーディングは、まず高城の歌から始まった。残る4人のメンバーはこのあと、高城のボーカルを基準に声を重ね合わせていく。全体像を決定付ける重要な役どころだ。
いつも通り笑顔でスタジオに現れ、スタッフと奇妙なじゃれあいを続けた高城だったが、1人きりでレコーディングブースに入ると一気に“歌手”モードに。モニタールームからの指示を受けながら、少しずつ歌い方を固めていく。有安杏果と2人で歌う「どうにもならない昨日を 悔やんで夜が明けた」のパートは、声の表現について特に話し合いを重ねていた。ディレクションを務めた佐藤守道氏いわく、このパートには1曲の中で“二重人格”すら感じさせる不安感を求めたという。
また、今回の高城のコーラスパートについて、アレンジャー近藤研二は「彼女の優しい声質は本来コーラスに合う」と評価。佐藤氏も「昔はこんな高い要求はできなかったんですけどね」と彼女の成長を語っていた。
- インディーズベストアルバム「入口のない出口」 / 2013年6月5日発売 / SDR
- 初回限定盤A [CD+Blu-ray] / 3990円 / SDMC-0105B
- 初回限定盤B [CD+DVD] / 3500円 / SDMC-0105D
- 通常盤 [CD] / 2800円 / SDMC-0105
収録曲
- あの空へ向かって
- MILKY WAY
- ラフスタイル
- ももいろパンチ
- だいすき!!
- Dream Wave
- Hello…goodbye
- 気分はSuper Girl
- 最強パレパレード(ももクロver.)
- 未来へススメ!
- ツヨクツヨク
- words of the mind -brandnew journey-
- Believe
- 走れ!
- きみゆき
- ラフスタイル for ももいろクローバーZ
- あの空へ向かって(Z ver.)
ももいろクローバー
スターダストプロモーション所属タレント育成の場として、2008年5月17日に結成されたアイドルグループ。「週末ヒロイン」「いま、会えるアイドル」というキャッチフレーズのもと全国津々浦々でライブ活動を行い、2009年7月には1stシングル「ももいろパンチ」をリリース。この時期に百田夏菜子、早見あかり、佐々木彩夏、玉井詩織、有安杏果、高城れにの6人が揃う。同年11月に2ndシングル「未来へススメ!」を発表し、2010年5月にはシングル「行くぜっ!怪盗少女」でメジャーデビューを果たす。同年12月には初のホールワンマン「ももいろクリスマス in 日本青年館~脱皮:DAPPI~」を大成功に収めるも、2011年1月に早見あかりがグループを脱退することを発表。同年4月10日の東京・中野サンプラザ公演「4.10中野サンプラザ大会 ももクロ春の一大事~眩しさの中に君がいた~」が早見のラストステージとなり、ライブ終了直後に「ももいろクローバー」から「ももいろクローバーZ」へと改名した。