ナタリー PowerPush - 堀江由衣
ほっちゃんと振り返る「パイレーツ・オブ・ユイ3013」レポート
堀江由衣が2013年3月、千葉・幕張メッセにて2DAYSライブを開催した。同じ会場でまったく異なる内容のステージが繰り広げられたこの2日間。9月20日にリリースされたライブDVD / Blu-ray「堀江由衣ベストライブ~由衣と時間泥棒~」には1日目の模様が、そして12月25日に発売となったライブDVD / Blu-ray「堀江由衣をめぐる冒険IV ~パイレーツ・オブ・ユイ3013~」には2日目の模様が収められている。
ナタリーでは「堀江由衣ベストライブ~由衣と時間泥棒~」発売時に続き、当日の模様を記録したライブレポートをほっちゃん自身が検証する企画を実施。映像では観られない舞台裏の様子などを教えてもらった。また最後のページでは、年末年始も迎えるほっちゃんに2013年のトピックや2014年の目標、正月の過ごし方などプライベートにまつわる質問も投げかけてみた。
取材・文 / 臼杵成晃 ライブレポート / 成松哲
ほっちゃんが解説する
「堀江由衣をめぐる冒険IV ~パイレーツ・オブ・ユイ3013~」レポート・前編
──9月の「堀江由衣ベストライブ~由衣と時間泥棒~」発売時と同様(参照:堀江由衣「堀江由衣ベストライブ~由衣と時間泥棒~」インタビュー)、今回もレポートをもとにライブ当日のことを振り返っていただきます。
堀江由衣をめぐる冒険IV
~パイレーツ・オブ・ユイ3013~
“3013年”3月17日(日)
千葉県 幕張メッセイベントホール
ストーリー仕立てのライブ「堀江由衣をめぐる冒険」のナンバリングシリーズとして行われたこの日の公演の舞台は、前日の“ダーターライブ”のエンディングでほっちゃんがタイムスリップさせられた西暦3013年の世界。そこは誰もが「大海賊(おおかいぞく)におれはなるっ!!!」と夢見る世の中だった。
──この「タイムスリップした先で海賊になる」という設定は堀江さんといつものスタッフで話し合って決めたんですか?
そうですね。私と作家の諏訪さん(諏訪勝。文化放送「堀江由衣の天使のたまご」構成作家)と、ディレクターの林Zさんと。ほか何人かで話し合いながら決めていきました。「海賊もの」っていろんな人がやっているのを観て楽しそうだなとずっと思っていて。でもいろんな人がやってるからこそ、同じようになっちゃう難しさもあると思うんですけど、これだけいろんな人たちがやっているということはきっと楽しいんだろうなって(笑)。海賊に決まるまでがけっこう長かったんですけど、決まってからは早かったです。アイデアが次から次へとポンポン出てきて。
──それぞれが持つ海賊像を出し合いながら。
はい。「3013」になったのは、誰かがポロッと言ったんです。今の海賊はイメージが悪いから、1000年後に飛ばしちゃおう! タイムズ伯爵(前日の「由衣と時間泥棒」に登場した重要なキャラクター)は時間が操れるから彼に飛ばしてもらえばいいって。
──うまく前日の「時間泥棒」と話をつなげる結果にもなったと。確かに「海賊もの」は設定として王道で、世界各国でいろんな物語が生まれてますし、自分なりの海賊ものを考えるのは楽しそうですね。
下っ端から入って成り上がっていくという、流れとしてはすごくベタです(笑)。仲間もできて、1回調子に乗ったときに負けて漂流してみたり。
前日公演のキーアイテムとなった大きなトランクを手に白いワンピース姿でステージに現れたほっちゃんは「moment」と「Time machine」という“時間”をテーマにした2曲を歌うも、自分が置かれた状況がうまく飲み込めない様子。いきなり6000人の観客を尻目に帰宅を試みる。しかし通りがかった双子の海賊・リーチとビンゴに幕張メッセの最寄り駅、海浜幕張駅の場所を尋ねたところ「そこはオレたちの海賊船だ」「とっとと降りろ!」とどやしつけられ、さらには「3013年にもなってそんなカッコをしてるなんてホントにダサいな」とワンピースを笑われてしまう。
このやり取りをきっかけに自らが海賊が幅を利かせる1000年後の未来に送られてしまったことを知ったほっちゃんが途方に暮れていると、リーチとビンゴは2人の所属する青クマ海賊団に彼女を誘い入れる。そしてほっちゃんは海賊ルックに身を包み、海賊船に乗り込むのであった。
──“時間”をテーマにした2曲を冒頭で歌ったのはやはりストーリーを考えて?
はい。全体のテーマや設定が決まった上で、まずはこれまでのシングルやアルバムを聴き返して、そこからストーリーや流れに合ったものを選んでいきました。「moment」はチクタクと時計が動く音から始まりますし、これ今歌わなかったらいつ歌うんだってぐらい(笑)。「Time machine」もまさにそういう状況なので、これも今しかない!って。
──「海浜幕張駅はどこですか?」みたいなメタ構造のセリフがちょいちょい出てくるのが堀江さんのライブの特徴だと思うんですけど(笑)、このへんは作家の諏訪さんにも話を聞いてみたいですね。
あはは(笑)。諏訪さんはそういうふっと我に返るようなセリフを持ってきてくれるんですよね。
──この冒頭のシーンで物語の道標となるキャラクター、リーチとビンゴが登場します。この2人のセリフが状況の説明代わりにもなった、語り部としてのキャラクター作りは見事だなと。
最初はギャングものでよくある大きい人と小さい人のキャラクターが浮かんだんですけど、演じるのはダンサーさんだし、一緒に踊ったり歌ったりするにはバランスが悪くて。一緒ぐらいの背丈なら、双子にすれば声を演じるキャストさんも1人で済むし(笑)。世界観の説明をしてくれるキャラがいるのはホントに助かるんです。私が説明しなくていい部分を増やすと、移動や着替えに時間が使えるので。
ほっちゃんが海賊団の面々とともにデッキブラシやゴミ箱を巧みに駆使したダンスを披露しながらパーティチューン「Secret Garden」を歌っていると、海賊団のボス・カイゾクマスター船長からライバル・イワシ海賊団が来襲していることが告げられる。そのカイゾクマスターの命を受けたほっちゃんはアップリフティングな「True truly love」を背に海賊船を模したゴンドラでアリーナへと出航。客席めがけてサイン入りゴムボールを発射しながらイワシ海賊団を打ち破ると、今度は凱歌とばかりに新曲「パイレーツ・オブ・ユイのテーマ」を高らかに歌い上げた。
港という名のメインステージへと帰航すると、イワシ海賊団に勝利したほっちゃんに懸賞金がかけられていることが判明。カイゾクマスターは「これは一流の海賊の証だ」と褒め称え、港の酒場で彼女の歓迎会を開催する。ところが「スクランブル」「Go! Go! Golden Days」というパンキッシュな2曲を歌いつつ祝杯を上げていたほっちゃんは「海賊、天職かもしれない」「金銀財宝持ってこーい!」とご満悦になりながらも、酔いが回ったかウトウトと居眠りをしてしまう。
──デッキブラシやバケツなどを使ったストンプのような振り付けは、今回の注目ポイントではないでしょうか。
あー、うれしいです! あのシーンは私もお気に入りです。海賊の下っ端と言えばやっぱり甲板掃除のイメージがあって。こういう小道具を使った演出でここまで必然性があるシチュエーションってなかなかないので、これはうまくいったかなと思います。
──イワシ海賊団をやっつけたところで歌われる「パイレーツ・オブ・ユイのテーマ」のクオリティにすごく驚きました。昔の海賊映画か何かのカバーかと思ったらこの日のための書き下ろしで、しかも本編終了後のMCでも触れられていますが、ちょっとした仕掛けもあったりして。
思いがけず素晴らしい曲ができちゃいました(笑)。MCでもお話しましたけど、あの映画みたいなバージョンは、ミュージカル「レ・ミゼラブル」でジャン・ヴァルジャン役を演じられていた今井清隆さんに歌っていただいたんですよ! 今回一緒に収められているCDには私が歌ったものと両方のバージョンが入っているので、ぜひじっくり聴き比べてほしいです。
──海賊船のトロッコで会場を回り凱旋を果たし、酒盛りのシーンでは「海賊、天職かもしれない」と。よくわからないまま流れに巻き込まれながらも、ここで自分の置かれた状況を受け入れちゃうんですよね。
この祝杯のシーンも絶対にやりたかったんです。「Go! Go! Golden Days」を歌っているときに、どんどん王冠やネックレスを着けられてゴージャスになっていくんです。ジャラジャラさせて調子に乗ってる感じを表現したくて(笑)。でも当日ステージから席が遠かった方にはよく見えなかったかもしれないですね。
──そのへんの細かいところがチェックできるのが映像の醍醐味ですよね。そしておなじみのキャラクター・クマスターがこの日も形を変えて出てきましたが、最近は発売日に堀江さんに代わって稼働したり大忙しで(笑)。
私のライブに来てくださるお客さんにはなじみの深いキャラクターになりましたし、役回りがコミカルだったりするので、すごく使い勝手がよくて(笑)。
- ライブDVD / Blu-ray「堀江由衣をめぐる冒険IV ~パイレーツ・オブ・ユイ 3013~」 / 2013年12月25日発売 / スターチャイルド
- [Blu-ray Disc+CD] / 8715円 / KIZM-128~9
- [DVD2枚組+CD] / 7665円 / KIZB-150~2
DVD / Blu-ray収録内容
Opening
- moment
- Time machine
3013年大海賊時代
- いつか
- Secret Garden
青クマ海賊団
- True truly love
- パイレーツ・オブ・ユイのテーマ
カイゾクマスター船長
- スクランブル
- Go! Go! Golden Days
忍び寄る影
- DEAR FUTURE
海賊天職
- インモラリスト
青クマ海賊団の敗北
- くじら光線
タイムズ伯爵との遭遇
- sky fish
- Get up and Go
囚われの青クマ海賊団
- YAHHO!!
- 笑顔の連鎖
- CHILDISH♡LOVE♡WORLD
牢獄からの脱出
- 大切なもの
電池ボックスと単三電池
- Try Again
キャプテン・ガイコッツ襲来
- ヒカリ
新たなる旅立ち
- Puzzle
- PRESENTER
- Lady Go!
- BE FREE
End roll
CD収録曲
- パイレーツ・オブ・ユイのテーマ / 堀江由衣
- Theme For Pirates of Yui / 今井清隆
堀江由衣(ほりえゆい)
東京都出身の声優アーティスト。1997年に声優としてのキャリアをスタートさせた後、1998年に歌手デビュー。「ほっちゃん」の愛称で親しまれ、永遠の少女然とした自身のキャラクターと重なるオリジナル音楽作品をコンスタントに発表している。アニメやゲームのキャラクターソングも数多く手がけ、2005~2007年には声優ユニット「Aice5」としても活躍。2009年9月には声優として歴代4人目となる日本武道館公演を2日間にわたって行い、大成功に収めた。2012年2月には8thアルバム「秘密」を発表。オリコン週間ランキングで3位を獲得した。2013年3月には千葉・幕張メッセイベントホールにて「堀江由衣ベストライブ~由衣と時間泥棒~」「堀江由衣をめぐる冒険IV ~パイレーツ・オブ・ユイ 3013~」と内容の異なる2本のライブを開催。9月20日には「堀江由衣ベストライブ~由衣と時間泥棒~」が、12月25日には「堀江由衣をめぐる冒険IV ~パイレーツ・オブ・ユイ 3013~」がDVD / Blu-rayとなってリリースされた。