ナタリー PowerPush - 堀江由衣
ほっちゃんと読み解く「由衣と時間泥棒」ライブレポ
堀江由衣のライブDVD / Blu-ray「堀江由衣ベストライブ~由衣と時間泥棒~」が9月20日にリリースされる。一般的なライブの常識を超え、ファンタジーとコントが入り交じる独特のほっちゃんワールドは今回も健在。昨年9月に発売されたベストアルバム「BEST ALBUM」の収録曲をもれなく歌いながら、これまでのライブに出演したキャラクターも次々登場する、まさに“ベストライブ”と呼べるステージが展開された。
今回のインタビューでは、当日の模様を記録したライブレポートをほっちゃん自身が検証。舞台裏のエピソードなどを交えながら解説してもらった。
取材・文 / 臼杵成晃 ライブレポート / 成松哲 インタビュー撮影 / 笹森健一
初めてのバッティングセンター
──アーティストとしての活動は3月のライブ以来ごぶさたで、11月にはニューシングル「Golden Time」の発売が決定しましたが、少し間が空きましたよね。その間はどのように過ごされていましたか?
ライブが終わったあとは、声優のお仕事でしばらくドタバタと忙しくしてたんですけど、6~7月頃はちょっと余裕がある、わりといい夏を過ごしてました(笑)。特別夏らしい何かをしたわけじゃないんですけど、スケジュール的に余裕があったので、ホッとひと息みたいな。
──何か新しいマイブームなどは?
バッティングセンターですかねー。ラジオのスタッフさんと野球をやることになったんですけど、みんなどのぐらい打ててどのぐらい投げられるのかわからないから、1回バッティングセンターに行ってみようという話になったんです。企画がてら行ってみたら案外楽しくて。そのあとプライベートで2回ぐらい打ちに行きました(笑)。
──今まで絶対、バットを持つなんて行為に縁のある人生じゃなかったですよね?
ないですないです! バットを構えたのもそのときが初めてでしたし、バットが大中小みたいな感じで並んでたんですけど、どれを持てばいいかもわからないし。バットの持ち方もわからないまま初めてバッターボックスというものに立って。
──マンガやアニメで観た漠然とした野球像だけを頼りに打席に(笑)。
そんな感じです(笑)。「引き付けて打つ」みたいなことは聞いた気がするけど、何を引き付けるのかわからなくて……。もちろん最初は全然ボールに当たんないし、当たっても飛ばないし。でも2回目に行ったときにスポーンと飛んでいったんですよ。それで楽しくなっちゃって。
──野球というよりはバッティングセンターにハマっちゃったんですね。
そうですね。野球はみんな集まらないとできないけど、バッティングは1人でもできるので。
「時間泥棒」の誕生秘話
──今回のインタビューはちょっといつもと違う形で。普段ならニュースページに載せるライブレポートをもとに、堀江さんの当日の感想や裏話などをお聞きしつつ進めていこうと思います。
おー、なるほどなるほど。
──その前にまずは全体の話を。「堀江由衣ベストライブ~由衣と時間泥棒~」は「BEST ALBUM」(2012年9月発売)の収録曲をドンと披露する“ベストライブ”という形式を取りながら、過去のライブに登場した設定や小道具が出てくることで「堀江由衣ライブのベスト」という図式にもなっていたように感じました。長年のファンにとっては懐かしいし、初めて観る人にとっても「堀江由衣のライブはこういうものだ」というわかりやすい説明になっているような。これは演出として狙ったものなんですか?
いえ、結果的にこうなったみたいな。今回はベストライブだから「BEST ALBUM」の曲は全部やろうというのがまず最初にあったんです。でもあの中から曲の流れを作るのが実はすごく難しくて。「BEST ALBUM」には明るい曲とかほんわかした曲が多いから、流れを作って構成しにくいんですよ。
──「盗まれた時間を取り戻す旅に出る」という設定は見事ですね。それによって過去のライブの設定も螺旋状によみがえってくるという。
いろんな時代の曲が入っているというベストアルバムの性質を考えたときに、「時間」をテーマにするのがいいかなと思ったんです。それで「時間泥棒」を出したいというアイデアが挙がって。最初は「時間泥棒と対決して、取られた時間を取り返す」というイメージだったんですけど、作っていくうちになんか違うなあって……。
──結果的に「タイムズ伯爵」という、ストーリーの鍵を握るキャラクターになっていました。
きっかけにはなるんだけど、決して悪い人ではないみたいな。語り部的な立ち位置でもあって、次の日(翌日に開催された「堀江由衣をめぐる冒険IV ~パイレーツ・オブ・ユイ 3013~」)の伏線も張ってくれたり(笑)。もう1つ、この日は招待制のライブで、初めて観る方も多いかなというのもあったので「会場全体をステージにしたい」と思ってたんですね。だから会場内を移動する乗り物を多用したいというのがアイデアとしてあって。それが結果、いろんな街を渡り歩くロードムービー的なイメージとしてだんだん固まっていきました。だったら行く先々で懐かしいキャラクターに会ったらいいんじゃないかって。森の動物たちとダンスバトルがしたいから、じゃあ前回のツアーに出てきた動物たちを出そうとか、「HAPPY SNOW」では冬の場面にしたいから雪だるまを出そうとか……そうやって昔のキャラクターがどんどん出てくることになったんです。
必ず答えは1つある
──物語の作り方としては逆方向ですよね。先に「会場を回りたい」という希望があったから「街を渡り歩く」という設定ができ、ダンスバトルがしたいから過去のキャラクターを引っぱりだしてきて。逆方向から固めていくのはすごく大変なんじゃないかと思うのですが。
すっごく大変でした(笑)。曲順を決めるのも大変でしたし……。1曲目を「Love Destiny」にして最後を「桜」にしようというのはなんとなく決めてたんですよ。そうするとマイナーキーの曲はあと4つぐらいしかなくて。物語を引き締めるマイナー曲をどこにどう入れたらいいのかとか、どの曲をつないでメドレーにしようかなとか、それはすごく悩みました。
──でも結果的には見事につながったし、まとまりましたよね。
いやー、よかったです。必ず出口は1個あると信じて(笑)。いつもアルバムの曲順を決めるときもそうなんですけど「必ず答えは1つある」って信じてがんばってます。
──流れができたあとも、全体の構成を覚えたり、昔の曲も頭に入れ直したり、振り付けを覚えたり……裏側の苦労を想像すると恐ろしくなるというか(笑)。
あはははは(笑)。まあダンスはそこまで多くないので。「ちゃんとダンスやってるように見えるように皆さんお願いします!」みたいな(笑)。
- ライブDVD / Blu-ray「堀江由衣ベストライブ~由衣と時間泥棒~」 / 2013年9月20日発売 / スターチャイルド
- [Blu-ray Disc] 8190円 / KIXM-134
- [DVD2枚組] / 7140円 / KIBM-387~8
収録内容
- Love Destiny
- キラリ☆宝物
- 夏の約束
- お気に入りの自転車
- Days
- JET!!
- マッシュルームマーチ
- Angel恋をした
- この指とまれ
- Romantic Flight
- Coloring
- バニラソルト
- silky heart
- インモラリスト
- スクランブル
- Say Cheese!
- 笑顔の連鎖
- 翼
- It's my style
- 恋する天気図
- ずっと
- A Girl in love
- HAPPY SNOW
- ALL MY LOVE
- ヒカリ
- YAHHO!!
- PRESENTER
- CHILDISH LOVE WORLD
- 心晴れて夜も明けて
- 桜
映像特典
堀江由衣ベストライブ~由衣と時間泥棒~
舞台裏全部見せます!
堀江由衣(ほりえゆい)
東京都出身の声優アーティスト。1997年に声優としてのキャリアをスタートさせた後、1998年に歌手デビュー。「ほっちゃん」の愛称で親しまれ、永遠の少女然とした自身のキャラクターと重なるオリジナル音楽作品をコンスタントに発表している。アニメやゲームのキャラクターソングも数多く手がけ、2005~2007年には声優ユニット「Aice5」としても活躍。2009年9月には声優として歴代4人目となる日本武道館公演を2日間にわたって行い、大成功に収めた。2012年2月には8thアルバム「秘密」を発表。オリコン週間ランキングで3位を獲得した。2013年3月には千葉・幕張メッセイベントホールにて「堀江由衣ベストライブ~由衣と時間泥棒~」「堀江由衣をめぐる冒険IV ~パイレーツ・オブ・ユイ 3013~」と内容の異なる2本のライブを開催。9月20日には「堀江由衣ベストライブ~由衣と時間泥棒~」が、12月25日には「堀江由衣をめぐる冒険IV ~パイレーツ・オブ・ユイ 3013~」がDVD / Blu-rayとなってリリースされる。また11月には約1年4カ月ぶりのニューシングル「Golden Time」を発表する。