ナタリー PowerPush - HOME MADE 家族

新たな夜明けを告げる最高傑作「AKATSUKI」

HOME MADE 家族が通算6枚目となるオリジナルアルバム「AKATSUKI」をリリースした。タイトルのAKATSUKI=暁とは、太陽が昇る前の薄暗い時間帯のこと。何かが始まる前のエネルギーに満ちたその状況は、まるで今の彼らを表しているかのようだ。

今回ナタリーではMICRO、KURO、U-ICHIの3人にインタビューを実施。アルバムの印象や過去作との違いを訊いたほか、HOME MADE 家族の現在のモチベーションや信念についてもじっくりと語ってもらった。

取材・文 / 鳴田麻未 撮影 / 平沼久奈

「AKATSUKI」は僕らの最高傑作

写真左からKURO、MICRO、U-ICHI

──ニューアルバム「AKATSUKI」は3人にとってどんな作品になりましたか?

KURO ざっくり言うと僕らの最高傑作だと思います。そのくらい充実したレコーディングでしたね。

──最高傑作と思えるのは、どういった面から?

KURO アルバム制作って、個性バラバラな僕ら3人があれこれ相談しながら1枚のキャンバスに絵を描くような作業なんですけど、今回はその絵の出来栄えがすごく良いなと思ってるんです。これまではMICROのカラー、KUROのカラー、U-ICHIのカラーそれぞれの良さが出たっていう感じだったけど、この作品はその境界線がないというか、3つの色がうまく混ざり合ってるんです。

──6枚目にしてそんな作品ができたのはどうしてだと思いますか?

KURO 絵の具を付ける前に下描きやラフスケッチをいっぱいやったことが大きいかもしれないですね。どんな絵を描こうかっていう話し合いの時間をたくさん持てた。

──話し合いでは例えばどんな話が出たんでしょうか。

MICRO とにかく純粋に自分たちの好きな曲を作ろうって。なんかね、最近のアルバム制作はバランスをとりがちだったんですよ。アッパーな曲が続いたらメロウなものを入れて、間を埋めるミドルチューンみたいなものもあって、って均等にバランスのとれたアルバムを目指して作ってたところがあって。でも今回は3月に起きた震災のこともあって、とにかく自分たちが歌いたいテーマ、良いと思うものを形にしていこうっていう気持ちが強かったです。

──震災のこともあって、というのは?

MICRO あれは、音楽やってる人間として大きな転換となった事件でした。これまで自分たちには音楽しかない、音楽を信じて生きていこうと思っていたのに、急に音楽が必要じゃなくなる瞬間を見てしまったというか。信じていたものがすべてリセットされたような感覚になったんですよね。音楽があっても、決してお腹がいっぱいになったり、誰かを救えたりはしないし、ライフラインに代わるものでもない。そんなふうに一度は落ち込んだんですけど、チャリティイベントや街頭での募金活動に参加するうち、そこに流れる音楽に自分自身が励まされて、音楽ってやっぱり必要不可欠だと思えて。音楽でお腹を満たすことはできないけど心を満たすことはできる、メンタル的なライフラインにはなれるっていうことを身を持って感じたんです。

──それはアルバム制作にどう影響したんですか?

MICRO そういう経験をして制作に入ったので、作品には「がんばろう」っていうメッセージを詰め込むというより、聴いた人が「なんか楽しそうだな」って笑ってくれるように、自分たちのやりたい曲、好きな曲、ワクワクするような楽曲を入れました。誰かが笑顔になって、それを見た人がまた笑顔になって、そういう“笑いの連鎖反応”を発信するのが僕らなりのやり方だなと思って。だから過去のアルバムより、アッパーな曲やライブで盛り上がるような楽曲が比較的多いかもしれないです。

──なるほど。そのあたり、実際に曲調を決めているトラック担当のU-ICHIさんはどうですか?

U-ICHI 今回、音的にはロックっぽいものを意識しましたね。単純にHOME MADE 家族としてロックはあんまりやってこなかったので、新鮮なアプローチということで。MCの2人が好きに歌うことをまず第一に考えて作れたのは良かったです。

今の日本は夜明け前

KURO

──「好きにやろう」というのが前提にありながら、結果でき上がったものは3人の個性のぶつかり合いじゃなく過去最高に溶け合ったものになった。それはなぜだと思いますか?

KURO 多分、一度音楽に対してフラットな状態になったからだと思いますね。さっきMICROが言ったように、3.11が「音楽とは何か?」っていうことを真面目に考える良い機会になった。あれに全部かこつけたいわけじゃないんですけど、震災によって改めて音楽と向き合って、3人の気持ちをすり合わせることができたのかもしれないです。

──そんなフラットな状態から生み出したアルバムは「AKATSUKI」と題されました。これにはどんな思いが込められているんですか?

KURO 「暁」って「夜明け前」って意味もあるじゃないですか。夜明け前って地平線がうっすら明るくなって、静かなんだけどその向こうで太陽がギラギラ燃えていて、実はすごくエネルギーを秘めた光景じゃないかなと思って。で、自分たちも今新しいエネルギーを持って音楽と向き合ってるので、ちょうどいいなと思って付けました。さらに、今の日本全体も夜明け前の状態じゃないかなとも思って。

ニューアルバム「AKATSUKI」 / 2011年9月28日発売 / Ki/oon Records

  • 初回限定盤[CD+DVD] / 3500円(税込) / KSCL-1853~4
  • 通常盤[CD] / 3059円(税込) / KSCL-1855
CD収録曲
  1. 暁(Introduction)
  2. FREEDOM
  3. スターとライン
  4. So So Hot !!!
  5. No.1
  6. STAY GOLD
  7. 情熱のスイッチ
  8. BODY PARTY
  9. 僕はここにいる
  10. ぬくもり
  11. ギフト
  12. Rolling Stone
HOME MADE 家族
(ほーむめいどかぞく)
HOME MADE 家族

1996年に結成された2MC(MICRO、KURO)+1DJ(U-ICHI)スタイルのユニット。インディーズでの活動を経て、2004年5月にアルバム「Oooh 家~!」でメジャーデビュー。2005年の3rdシングル「サンキュー!!」をはじめ「少年ハート」「サルビアのつぼみ」などのスマッシュヒットを連発し、全国区のブレイクを果たす。2009年には、グループとしての夢だった日本武道館単独ライブを実現。2010年10月には地元愛知で初の主催野外フェス「家族 Fes. 2010」を成功させ、2011年10月9日にも「家族 Fes. 2011」を開催。