音楽ナタリー Power Push - Goodbye holiday×島田昌典
バンドの飛躍願う名プロデューサーと対談
7月にメジャーデビューを果たしたGoodbye holidayが2ndシングル「溢れるもの / リベレーター」をリリースする。好きな女性に対する感謝をストレートに歌い上げる「溢れるもの」、エッジの効いたロックサウンドに「泣き疲れた心に解放の歌を」という前向きなフレーズが乗った「リベレーター」の2曲で、このバンドの優れたポピュラリティがさらに多くのリスナーに伝わることになりそうだ。
今回音楽ナタリーでは「溢れるもの」のアレンジ、プロデュースを手がけた島田昌典とGoodbye holidayの対談を実施。「溢れるもの」の制作エピソードを中心に、“いい音”“いい曲”に関する幅広いトークが展開された。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 佐藤類
音楽が好きな人が引っかかる声
──島田さんとGoodbye holidayの出会いはいつ頃ですか?
島田昌典 彼らがインディーズのときですね。最初はいつだっけ?
山崎晃平(Dr) 1年ちょっと前ですね。
島田 「スパイダー」(2014年8月発売のミニアルバム「FLAG」収録曲)という曲をアレンジしたのが最初ですね。その時点ではライブを観たことがなかったんですが、リリースされていた曲は聴かせてもらっていて。まず、児玉くんの声に魅力があるなと思いましたね。倍音の気持ちいいところがすごく出てるんですよ。倍音というのは実音のオクターブ上の音なんですが、音楽が好きな人が引っかかる声だなと。
児玉一真(Vo, G) ありがとうございます。恥ずかしい……。
島田 実際にメンバーと会ったのは、渋谷のスタジオだよね?
山崎 そうですね。「スパイダー」のレコーディングのためのリハーサルで。
島田 どれだけ演奏の技量があるか、レコーディングに耐えられるかというのを確認しておきたかったので。特にリズム隊がしっかりグルーヴしていないと、上に乗るギターやボーカルもどっちつかずになってしまいますからね。でも、すごくしっかりした演奏でよかったですよ。
山崎 あざっす! 最初は緊張してたんですよ。怖い人だと思ってたから。
福山匠(B) プロデューサー、アレンジャーというと「怖い」というイメージを持ってしまうんですよね。
大森皓(G) うん、緊張しかなかったです。
山崎 その頃は島田さんがどんな人がまったくわからなかったんですよ。「島田印」のライブ(島田の活動30周年を記念して2014年11月に東京・日本武道館で行われた「『Great Studio Live at BUDOKAN』~バラスーシな奴らがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!~」 / 参照:いきもの×秦×bknb、武道館で“長女”aiko曲も)や島田さんが出演した「情熱大陸」を観て、「あ、こんな人なんだ」というのが少しずつわかってきたんですけね。会う前は「お前らダメだ!」とか怒られるのかなって勝手に思っていて(笑)。
島田 確かに昔は怖い人が多かったけどね。僕が20歳くらいのときの現場は、灰皿が飛んでたりしたから(笑)。
日本人は好きなんですよ、イントロが
──今回のシングルに収録されている「溢れるもの」の制作はどうでした?
島田 最初にエレキと歌だけのデモをもらったんですよ。まあ、丸投げですよね(笑)。
大森 (笑)。しかもギターはコードを「ジャーン、ジャーン」って弾いてるだけっていう。
山崎 大森が作ったデモもあったんですけど、それは渡してないんですよね。
島田 うん、聴かせてもらってない。
福山 楽曲を島田色に染めてほしいから、あえてそっちのデモはお渡ししなかったんですよ。
大森 自分で作った「溢れるもの」のデモはけっこう明るくてポップなイメージだったんですけど、島田さんにアレンジしてもらったら、もっとバンドらしい激しい音になって。イントロも付けてもらったんですけど、すごくカッコよくて。
山崎 最初に聴いたときも「イントロがいい!」って話してましたね。
島田 「溢れるもの」がオープニングテーマになるドラマ(「掟上今日子の備忘録」)のほうから要望があったんですよね。「10秒から15秒くらいでカッコいいイントロを付けてください」って。
山崎 で、あのフレーズが降りてきたんですか?
島田 公園に落ちてたから拾ったんだよ(笑)。引っかかりという意味では、イントロは大事ですよね。
──ヒット曲には印象的なイントロが不可欠ですからね。
島田 日本人は好きなんですよ、イントロが。
山崎 「イントロドン!」というクイズがあるくらいですからね(笑)。そういえば「島田印」のライブのときも、いろんな曲のイントロとAメロをインストでつなぐコーナーがあったじゃないですか。あれを聴いて「あ、この曲も島田さんのアレンジなんだ!」って何度も思って。
福山 アンダーグラフの「ツバサ」も入ってましたよね。あのイントロを聴いたときに「リズムとメロディに中毒性があるな」って思って。だから記憶に残るんでしょうね。「溢れるもの」のイントロも「キタコレ!」感がすごいんですよ。1回聴けば染み込んでくるし、そのあとはイントロを聴くだけで「あの曲だ」って思ってもらえるんじゃないかなって。
児玉 僕もイントロが印象的でしたね。あと、もりし(大森)のデモを聴いたときは自分がギターを弾いて歌ってる姿が想像できなかったんですけど、島田さんのアレンジしたものはバンドで演奏しているところがすごく浮かんできて。
島田 最初のプリプロのときはピアノとかも入れてなかったからね。
山崎 そう、ほとんどバンドの音だけでまとまっていて。その後「もっといろんな音を入れてください」ってお願いしたんですよ。
福山 せっかく4人で演奏しているところをイメージして作ってもらったのに「鍵盤や弦も欲しいです」って(笑)。
島田 演奏しているときに4人の顔が見えてくるような構成にしたんだけど、「もっと音を入れてほしい」というオーダーをいただいたので、たくさん入れました(笑)。
──基本的にはバンドの要望に応えるというスタンスなんですか?
島田 そうですね。バンドがやりたいことに対して、アドバイスしながらプロデュースするっていう感じなので。
福山 すごく視野が広いんですよね。本当に勉強になります。
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収録曲
- 溢れるもの
- リベレーター
- ニューシングル「リベレーター/溢れるもの」 / 2015年10月28日発売 / ONE PIECE盤 [CD+DVD] 1944円 / avex trax / AVCD-83364/B
- 「リベレーター/溢れるもの」
CD収録曲
- リベレーター
- 溢れるもの
DVD収録曲
- リベレーター(ミュージックビデオ)
Goodbye holidayワンマンツアー「スプートニク26号」
- 2015年10月29日(木)北海道 COLONY
- 2015年11月1日(日)宮城県 enn 2nd
- 2015年11月5日(木)愛知県 ell.FITS ALL
- 2015年11月6日(金)大阪府 LIVE SQUARE 2nd LINE
- 2015年11月8日(日)東京都 TSUTAYA O-WEST
- 2015年11月12日(木)福岡県 graf
- 2015年11月13日(金)広島県 SECOND CRUTCH
Goodbye holiday(グッバイホリデイ)
児玉一真(Vo, G)、大森皓(G)、福山匠(B)、山崎晃平(Dr)による4人組バンド。2008年に広島で結成。2011年に東京に拠点を移し現在のメンバーとなる。ポップで耳触りのいいメロディ、独特な視点を持った歌詞、存在感のある歌声で着実にファンを増やし、2013年1月に初の全国流通盤「ソラリス」、同年10月に「はじまりの唄」をリリース。2014年8月には島田昌典がプロデュースした「スパイダー」を含む3rdミニアルバム「FLAG」を発表した。2015年7月、歌詞サイトで注目度ランキング1位を獲得したシングル「革命アカツキ」でエイベックスからメジャーデビュー。同年10月には、ドラマ「掟上今日子の備忘録」のオープニングテーマとアニメ「ワンピース エピソード オブ サボ~3兄弟の絆 奇跡の再会と受け継がれる意志~」のテーマソングからなる両A面シングルをリリースする。
島田昌典(シマダマサノリ)
1961年大阪府生まれの音楽プロデューサー、アレンジャー、キーボーディスト。小学校入学後、5年間ピアノを習う。小学4年生のとき、近所の中学生からThe Beatlesを聴かされ衝撃を受ける。中学、高校時代からレコーディングに興味を抱き、20歳を過ぎてからナニワエキスプレスの青柳誠にピアノを師事。セッションワーク、アーティストサポートなど、キーボーディストとして仕事を始める。1993年頃からCM楽曲やアーティストの楽曲の編曲も開始。その後はaiko、いきものがかり、秦基博、back number、JUJU、FUNKY MONKEY BABYS、YUKI、Chara、スガシカオ、真心ブラザーズなど幅広いアーティストのプロデュースやアレンジを手がけ、2001年には自身のプライベートスタジオ「Great Studio」を設立した。鍵盤楽器をはじめギター、ベースなど数々のビンテージ楽器、録音機材を収集している。