音楽ナタリー Power Push - Goodbye holiday×島田昌典

バンドの飛躍願う名プロデューサーと対談

いい楽器で“いい音”を知ってほしい

──「溢れるもの」のレコーディング現場はどんな様子でしたか?

山崎晃平(Dr)

山崎 島田さんのスタジオでレコーディングさせてもらったんですけど、ベーシックのリズム録りに時間をかけましたね。昼くらいから19時、20時くらいまでリズムを録って、その後、ギターなどの上物を乗せて。

島田 プレイはもちろんなんだけど、曲に合った音色も大事だから。そこはじっくり追求して。アナログテープで録ったから、太い音になったしね。

山崎 そう、ドラムの音も今までと全然違うんですよ。

──ソロアーティストはもちろん、バンドの楽曲を手がけるときも、いつも島田さんのスタジオを使うんですか?

島田 状況が許されればウチのスタジオに来てもらうようにしてます。楽器もいっぱいあるから、それを使ってもらったり。

福山 超レアな楽器がそろってるんですよ!

山崎 しかも、ほとんどがビンテージで。

島田 大森くんは左利きだから使えなかったけどね(笑)。

大森 残念ながら、見てるだけでした(笑)。アンプは使わせてもらったんですけど、すごくいい音でしたねー。

児玉一真(Vo, G)

児玉 僕は弾かせてもらいました。バッキングのギターも1940年代モノのMartinのアコギを使って。

──すべて島田さんの機材なんですか?

島田 そうですね。プロデュースにしろアレンジにしろ、自分が出したい音のイメージに近付けるためには、機材を集めるしかないので。楽器だけじゃなくて、マイクやプリアンプもそう。The Beatlesの時代のアナログ機材もけっこうあるんですけど、やっぱり好きなんですよね、そういう音が。若いミュージシャンに本物の音を知ってほしいという思いもあるし。

──まずはいい音を知ってほしい、と。

山崎 僕は音楽大学に行ってたんですけど、そのときの先生も同じことを言ってました。「まずいい音を知らないと、いくら勉強してもダメ。無理してでも高い楽器を買いなさい」って。

福山 「スパイダー」のときに島田さんのジャズベースをお借りしたんですけど、それも本当にいい音だったんです。音がいいと「俺、こんなに弾けたっけ?」って勘違いできるんですよね。

島田昌典

島田 いい楽器を持ってれば、いい音を出す練習ができるからね。そこからフレーズも変わってくるし、大事なことだと思うよ。今はPCで似たような音が出せるじゃないですか。それが悪いってわけではないんだけど、本当の音を知ってるのと知らないでは、これから違ってくると思うので。将来は自分たちで機材をそろえて、スタジオを作ってもらって(笑)。

福山 島田さんのスタジオが一番いいですよ。あそこに住みたいくらい(笑)。

山崎 そういえば島田さん、タンバリンもうまいですよねー。実はレコーディングでも島田さんにタンバリンを入れてもらったんですよ。

福山 鍵盤も弾いてもらって。いつかライブでも演奏してほしいですね。

島田 いいけど、出演料は高いよ(笑)。

ほかとは違うオリジナリティを持ったバンドに

──アレンジ、スタジオワークを含めて、Goodbye holidayにとって貴重な経験になりましたね。今後の楽曲制作にも生かせそうですか?

福山 うーん、それはまだこれからですね……。

山崎 もっといろいろ教わりたいですね。でも、「スタジオに遊びに行っていいですか?」って聞くと「それはダメ」って言うんですよ。アレンジしてるところなんか、人に見せるものじゃないからって。

島田 (笑)。レコーディングを通して感じるのが一番だから。それが積み重なって自分の体に入っていけば、いろいろとわかってくるだろうし。

──島田さんがこれからのGoodbye holidayに望むことは?

島田 ほかとは違うオリジナリティを持ったバンドになってほしいですね。サザン、ミスチルもそうですけど、ずっと残っているバンドって、パッと聴いた瞬間にわかるサウンドがあるじゃないですか。4人でそれを見つけてほしいな、と。あとは多くの人に受け入れられる名曲を書いてほしい。今、音楽業界は難しい状況だけど、いい曲は必ず残っていきますから。さっきも言ったようにデカい会場でやれるスケール感を持ったバンドだと思うし。

山崎 がんばります!

──フェスやライブハウスのシーンは盛り上がってますけど、お茶の間レベルで浸透するバンドは少ないですからね。それを実現できたら素晴らしいですよね。

島田 “バラスーシ”だね。

山崎 よかった。最後に出ましたね、島田さんの“バラスーシ”。

島田 やっぱり言っておかないと。よかったら、iPhoneに録音しておく?(笑)

Goodbye holidayと島田昌典。
Goodbye holidayワンマンツアー「スプートニク26号」
  • 2015年10月29日(木)北海道 COLONY
  • 2015年11月1日(日)宮城県 enn 2nd
  • 2015年11月5日(木)愛知県 ell.FITS ALL
  • 2015年11月6日(金)大阪府 LIVE SQUARE 2nd LINE
  • 2015年11月8日(日)東京都 TSUTAYA O-WEST
  • 2015年11月12日(木)福岡県 graf
  • 2015年11月13日(金)広島県 SECOND CRUTCH
Goodbye holiday(グッバイホリデイ)
Goodbye holiday

児玉一真(Vo, G)、大森皓(G)、福山匠(B)、山崎晃平(Dr)による4人組バンド。2008年に広島で結成。2011年に東京に拠点を移し現在のメンバーとなる。ポップで耳触りのいいメロディ、独特な視点を持った歌詞、存在感のある歌声で着実にファンを増やし、2013年1月に初の全国流通盤「ソラリス」、同年10月に「はじまりの唄」をリリース。2014年8月には島田昌典がプロデュースした「スパイダー」を含む3rdミニアルバム「FLAG」を発表した。2015年7月、歌詞サイトで注目度ランキング1位を獲得したシングル「革命アカツキ」でエイベックスからメジャーデビュー。同年10月には、ドラマ「掟上今日子の備忘録」のオープニングテーマとアニメ「ワンピース エピソード オブ サボ~3兄弟の絆 奇跡の再会と受け継がれる意志~」のテーマソングからなる両A面シングルをリリースする。

島田昌典(シマダマサノリ)
島田昌典

1961年大阪府生まれの音楽プロデューサー、アレンジャー、キーボーディスト。小学校入学後、5年間ピアノを習う。小学4年生のとき、近所の中学生からThe Beatlesを聴かされ衝撃を受ける。中学、高校時代からレコーディングに興味を抱き、20歳を過ぎてからナニワエキスプレスの青柳誠にピアノを師事。セッションワーク、アーティストサポートなど、キーボーディストとして仕事を始める。1993年頃からCM楽曲やアーティストの楽曲の編曲も開始。その後はaiko、いきものがかり、秦基博、back number、JUJU、FUNKY MONKEY BABYS、YUKI、Chara、スガシカオ、真心ブラザーズなど幅広いアーティストのプロデュースやアレンジを手がけ、2001年には自身のプライベートスタジオ「Great Studio」を設立した。鍵盤楽器をはじめギター、ベースなど数々のビンテージ楽器、録音機材を収集している。