ナタリー PowerPush - DOPING PANDA
ドーパン第2章の幕開け飾る問題作「YELLOW FUNK」の真意とは?
東京にいる日本人の俺らにしか作れないものが存在する
──「YELLOW FUNK」というアルバムタイトルについて聞かせてください。ここまでのお話を伺っていると、欧米基準のサウンドを目指しつつ、そこに「YELLOW」という言葉をつけるというのはやや逆説的な気もするんですが。
いや、逆説でもなんでもないですよ。僕は別に外国人がすごいって言ってるわけじゃないんで。東京にいる日本人の俺が、彼らよりすごいもの作れるはずだって思いたいし思ってるし、俺らにしか作れないものが音楽の世界に存在するはずだと思ってるんです。このタイトルはその強い思いの表れなんです。
──彼らの真似をするのではなく、彼らに匹敵するクオリティのものを作るという宣言?
そうですね。ニューオーリンズで白人と黒人の音楽がぶつかってできたロックやファンクっていうものがあって、今の東京で、日本人の僕がそれに何かをぶつけて、次のステップにいきたいなと思ってるんです。彼らのものを受け取って模倣するんじゃなくて、ぶつけたいんです。ぶつけたところで生まれるものを見たい。その中で自分なりの、本当の音楽を作り出したいって思ってるんです。
──欧米の音楽みたいなものが聴きたいなら、それをそのまま聴けばいいという話になってしまいますもんね。
そう、そこを誤解されるとね、じゃあもうおまえ外国行けよってことになっちゃう。日本で育って日本でやってる僕にしか作れないものがあるっていう、そこを信じてるんですよ。
──確かにこのアルバムを聴くと、洋楽の模倣ではないというのは伝わります。なんというかやはり独特ですし。
できあがってそう思いました。これは洋楽ではないですね。邦楽でもないですけど(笑)。
ショッキングなものを作ったことはわかってる
──あとひとつ気になるのはファンのことなんですけど。これまでのDOPING PANDAが大好きでずっと前から支持しているファンの人たちは、このシフトチェンジをどう思うんだろうって。
ホントですよね。ビビって泣いてたら困りますよね。
──ははは(笑)。
でもね、もしファンがみんないなくなって、自分の生活が成り立たなくなっても、それでもいいやって思ってます。借金してでもこれを続けていきます。もちろん、前のツアーのときあれだけファンに甘えておいて、ファンのことを考えてないっていう言い方はしたくないけど。でも、だからってねえ? 無理ですもん、俺は。みんなが期待してるものをもう1回作れるかって言ったら作れないもん。ファンの人たちにとってショッキングなものを作ったこともわかってるし、もしかしたらみんないなくなっちゃうかもしれない。でも、じゃあどうすればいいんですか僕は?(笑)
──今までのファンに離れてほしくてこれを作ったわけではないわけですしね。
もちろんもちろん! 今までのドーパンを好きな人に「ああ、やっぱりFurukawaさんはすごいね」って言われたいし、そうなったらすごく幸せだと思ってますよ。でもそうじゃなかったからって「ごめんごめん、次は君らが楽しめるものを作るよ」って、そんなこと言えるわけないじゃないですか!
──ははは(笑)。
それを考えると、怖いですけどね。
──いや、でもファンはきっとこの変化を受け入れてくれるんじゃないでしょうか。それに加えて、今までドーパンを聴いていなかった人もこのアルバムできっと気がつくと思いますし。
まあ、今までもそうですよ。これほど大きな変化はなかったけど、やっぱり1作ごとに「なんだこれ?」っていうのはすごい言われてきたから。でもその積み重ねで今の僕らがいるわけで。ファンとの関係がずれていくのはすごく悲しいし、それがずっとつながっていればそんな幸せなことはないけど、それは難しいしね。で、その変化が今回極端に大きいってことなんですよね。
ものすごいものをやればそれがエンタテインメントになる
──アルバムリリース後には「YELLOW FUNK TOUR 2011」という、このアルバムの名前を冠したツアーも始まります。ライブはどういう内容になるんでしょうか?
ライブねえ。もしかするとみんなそこを一番心配してるかもしれないな。でも、やっぱりこれまでのライブとは変わっていかざるを得ないですよね。とにかくものすごいものをやればそれがエンタテインメントになるだろうっていう希望は持ってるんですけど。
──変化するけど、満足させられるっていう自信もあるわけですね。
そうですね。
──このアルバムのリリースツアーで、例えば「mugendai dance time」みたいなものってあんまり想像できないんですけど。
うん(笑)。セットリストはまだ考えてないですけど、でもアルバムの9曲だけでツアー回るわけにはいかないし。おっさんたちが観に来るフュージョンバンドとも違いますからね、僕がやってることは。
──はい。
すっげえ長いギターソロでどうこうとかそういうんでもないんだよな。僕は奇をてらうようなことは絶対しないから。そういう人間じゃないから。
──音楽的にはFurukawaさんはずっと真っ当なことしかやってないですもんね。
そうですよ。このアルバムも真っ当だし、もっとすごいもの作れるっていうのはもうあからさまにわかってるんで。期待しててほしいなっていうのは思いますね。
CD収録曲
- the anthem
- I said
- You can change the world
- because of the love
- song for my harmonics
- catastrophe
- de la papa
- love song
- the miracle
DOPING PANDA(どーぴんぐぱんだ)
Yutaka Furukawa(Vo, G)、Taro Houjou(B, Cho)、Hayato(Dr, Cho)から成る3ピースバンド。1997年の結成当初は主にパンク / メロコアシーン界隈で活動していたが、ダンスミュージックの要素を大胆に取り入れ、エレクトロとロックのハイブリッドな融合を担う存在に。インディーズでのブレイクを受けて、2005年にミニアルバム「High Fidelity」でメジャーデビュー。時代の空気を反映させたサウンドとエンタテインメント性抜群のライブパフォーマンスで、幅広いリスナーからの支持を獲得する。その後も全国各地でツアーやフェス出演を精力的に展開しつつ、2008年6月には「beautiful survivor」が資生堂ANESSAのCM曲に起用。2008年にはイギリスで初の海外公演に挑戦するなどワールドワイドな活動にも注目が集まっている。