ナタリー PowerPush - DOPING PANDA
ドーパン第2章の幕開け飾る問題作「YELLOW FUNK」の真意とは?
DOPING PANDAがニューアルバム「YELLOW FUNK」をリリースする。今年1月のベスト盤リリースで過去の活動を総括した彼らが新たに作り上げたこのアルバムは、これまでのバンドのイメージを大きく覆す問題作だ。
過酷なツアーと混乱の音源リリースを経て、新たなアクションが待望されていたDOPING PANDA。そんな彼らが心機一転、この傑作を作るに至った経緯とは? 欧米基準のサウンドクオリティを追求し、日本人としてのアイデンティティを突き詰め、バンドが目指す地平はどこにあるのか? 首謀者であるYutaka Furukawa(Vo, G)に話を訊いた。
取材・文/大山卓也 インタビュー撮影/高田梓
今までの作品はどこか他人事だったんです
──素晴らしいアルバムができましたね。
ホントですか。そう言ってもらえるとすごく。
──どうですか? 今の率直な心境は。
うーん、まあもっとやれたなっていうのは当然あるけど。ただ、今の自分がやれることを全部やったっていう充実感は今までとは比べものになんないですね。今まではダメだって言われても、逆に褒められたとしても、どこか他人事だったんです。「いや、これは俺が作りたかったものじゃないから」って感じてた。そういうのが今回はないですね。
──じゃあ満足度はかなり高い?
うん。ある程度自分に対して、DOPING PANDAって名前に対して責任果たせるものができたかなって思う。頭ではもっと鮮明に自分が目指すものが鳴ってて、そこにはまだ届いてないけど、でも近づいているっていう感覚はあります。
──前作と比較して、ここまで明確にレベルの違うものが出てくるとは思わなかったです。
そうあってほしいんですよね。今までのドーパンのほうがよかったとか言う人もいるだろうけど、そういう好みはともかく、“すごくなってる”ってのは絶対伝わってほしいんですよ。
洋楽と邦楽の差を認めることから始めなきゃならない
──このアルバムの制作過程において「ここがこれまでと具体的に違う」という点があったら教えてほしいんですが。
サンレコ(サウンド&レコーディング・マガジン)的な話もありますけどいいですか?
──もちろん。そこは避けて通れないと思いますから。やっぱり今回、エンジニアリングをFurukawaさん自身で手がけているというのが大きいわけですよね。
うん、僕が基礎からきちっと勉強して理路整然とミックスとレコーディングをしたっていう事実はたぶんひとつあると思います。僕は欧米のレコーディングエンジニアのようなアプローチで作ってるつもりなんです。
──その欧米的なエンジニアのアプローチってどういうことなんでしょうか?
単純に機材の使い方も録り方も違うと思う。それにやっぱりロックミュージックもそうだけど、ブルースもファンクもジャズも全部彼らのもんなんですね。
──彼ら=欧米人ということですか?
そうです。別に卑下してるわけでも、欧米至上主義でもなんでもなくて、それらは彼らが作ったものなんです。クラシックとアフリカ移民の音楽がニューオーリンズで大激突してできたもんなんです。彼らが考えた楽器で演奏して、彼らが考えた機材でレコーディングしてるんです。しょうもない音楽作ってる白人も黒人もいるけど、でも脈々と連なってきた“彼らのもの”に基づいてやってるんですね。でも僕らはそうじゃないんですよ。僕らは何十年か前に彼らのやってることにショックを受けて、見よう見まねでやってる人たちの継承なんですよ。そのぐらいの差がやっぱりあるんです。でも多くの人はそれを認めない。音楽はサッカーや野球と違って勝敗があるもんじゃないから、自分たちが文化的に遅れてることを誰も認めようとしないんです。
──それはいわゆる洋楽コンプレックスみたいなものとは違うんですか?
いや、単なるコンプレックスなわけがないんです。洋楽と邦楽が違うってことはみんなわかってるんですよ。だからって洋楽のほうがいいとは思わないっていうのは、まあ一般論としてあると思うし、それはそれで構わないんだけど、少なくとも自分が作るものに関してはちゃんとしたいんですよね。「遅れてる」とかそういうダイレクトな言い方するから、憎まれっ子な感じになっちゃうのかもしんないけど。でも誰だって、西洋サッカーと比べてJリーグが遅れてるのはわかるじゃないですか。どうして音楽の話になると文化的な遅れがないって急にみんな胸を張って言いだすのか。
──Furukawaさんの単なる趣味嗜好の話じゃなくて、洋楽が優れているということを事実として認めざるを得ない。
そうです。まさにそのとおりです。
──で、それを今回このアルバムでくつがえそうとした?
やろうと試みて、やっと端っこに指がかかったところですね。
CD収録曲
- the anthem
- I said
- You can change the world
- because of the love
- song for my harmonics
- catastrophe
- de la papa
- love song
- the miracle
DOPING PANDA(どーぴんぐぱんだ)
Yutaka Furukawa(Vo, G)、Taro Houjou(B, Cho)、Hayato(Dr, Cho)から成る3ピースバンド。1997年の結成当初は主にパンク / メロコアシーン界隈で活動していたが、ダンスミュージックの要素を大胆に取り入れ、エレクトロとロックのハイブリッドな融合を担う存在に。インディーズでのブレイクを受けて、2005年にミニアルバム「High Fidelity」でメジャーデビュー。時代の空気を反映させたサウンドとエンタテインメント性抜群のライブパフォーマンスで、幅広いリスナーからの支持を獲得する。その後も全国各地でツアーやフェス出演を精力的に展開しつつ、2008年6月には「beautiful survivor」が資生堂ANESSAのCM曲に起用。2008年にはイギリスで初の海外公演に挑戦するなどワールドワイドな活動にも注目が集まっている。