ナタリー PowerPush - 怒髪天

みんなで歌おうぜ! 最新アルバム全曲解説

怒髪天のおよそ約2年ぶりとなるオリジナルアルバム「Tabbey Road(タビィロード)」が完成した。バンド結成から28年、紆余曲折を経て強い結束力と揺るぎないセンスを身に付けた彼らの最高傑作と呼べる1枚だ。

ナタリーでは3月リリースのシングル「歩きつづけるかぎり / DO RORO DERODERO ON DO RORO」リリース時の増子直純(Vo)単独インタビューに続き、今回はメンバー全員に話を訊いた。4人の言葉と表情で、その充実ぶりを確認してほしい。

取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 中西求

今まではキャンプ用の紙皿だった

──前回の増子さん単独取材はシングルについてのインタビューだったんですけど、増子さんはしきりに「今すぐアルバムの話がしたい」とおっしゃっていて(笑)。

増子直純(Vo) そうそう、そうなんだよ。

──どんなアルバムになっているんだろうと気になってたんですけど、聴いてみたら……まあ、これは話したくもなるだろうなというのがわかる、ものすごい充実ぶりで。変な言い方ですけど、これは怒髪天、大化けしたなと。結成28年のバンドが大化けすることなんてあるんだなって驚いたんですけど(笑)。

インタビュー風景

増子 大化けってよりは、化けて出たんだろっつって。

──(笑)。前回のお話を踏まえた上で、今回は4人お揃いですので、アルバム制作の裏側についてもじっくりとお訊きしたいと思います。増子さんの話では、ゲストプレイヤーを迎えた大編成「怒髪天&THE JOE-NETS」によるホールツアーを行ったことで、バンドの演奏に大きな成長と変化があったとのことでしたが。

上原子友康(G) 大所帯の中でギターを弾くのは新鮮だったなあ。初めての経験だったから、勉強になりましたね。4人での演奏とはやり方自体を変えないといけないんですよ。それぞれの楽器のバンド内での立ち位置というのが大きく違ってくるから。特にリズム隊の坂さんとシミは違ったんじゃない?

坂詰克彦(Dr) そうスねえー、やっぱりねえー、バンドの人数が違いますから。倍の倍の倍ですから。

増子 そんなにはいねえだろ(笑)。大勢が乗っかる分、受け皿がしっかりしてなきゃいけないから。そこはリズム隊が苦労したよね。今まではキャンプ用の紙皿だったから(笑)。20何年モノの。

坂詰 ええ、今までは皿がしっかりしてなかったものですから。このツアーを経て、こう、しっかりした皿ができたんじゃないかと。

清水泰次(B) 坂さん、陶芸家みたいになってるよ(笑)。いろんな音が入ってくるとルート音が大事になってくるので、なるべく丁寧に弾くように心がけて。僕と坂さんだけでスタジオに入って、全員が弾きやすくなるように練習したりね。4人だけのときは全員クセがわかってるから、どう転ぼうがうまくできるんですよ。でも怒髪天&THE JOE-NETSではほかにもたくさんメンバーがいるから、なるべくクセのないフラットなリズムをキープして、ベースは一番下のルート音を丁寧に。

ミラクル多すぎるんだよ!

──このライブでの経験は、アルバムレコーディングにも影響がありましたか?

清水 ありましたね。クリック(テンポの基盤となるガイド音)の上でもグルーヴが出せるようになったし。坂さんのドラムに関しては、2~3段階レベルがアップしたんじゃないかな。

増子 うん。4人のミュージシャンとしての特性で言うと、友康以外はプレイヤーかパフォーマーかで言ったら、パフォーマーなんだよね。長年やってるからスキルはもちろんあるんだけど、坂さんなんかはリズムをキープすること以上に、ドラマーとしての魅力がまた別のところにあるから。プラス受け皿としてのどっしりした安定感を手に入れたから、今はめちゃくちゃやりやすいもんね。ライブもレコーディングも。

──パフォーマーとプレイヤー、どちらのスキルも身に付けたらもう恐いものなしですね。

清水 坂さんの場合はプラス、ミラクルがあるからね(笑)。あるライブで、坂さんのドラムスティックがバーンと飛んだんですよ。なのにまた手元にスチャッと戻ってきて(笑)。

上原子 俺、ギター弾いてたら坂さんのメガネが飛んできたことあるよ(笑)。結構離れた距離だったのに。メガネのレンズだけ飛んできた。

坂詰 メガネにスティックが当たっちゃって。しばらく気付かなかったんだけど、なんかクラクラするなと(笑)。それでメガネを触ってみたら片方(レンズが)なかった。

一同 アハハハハハハ!!

──ミラクル呼ぶのも才能ですからね(笑)。

増子 ミラクル多すぎるんだよ!

シンガロングの力強さってのを去年のライブで思い知った

──アルバム制作にあたり、まずはどのような作品にしようと考えていましたか?

インタビュー風景

増子 2011年はいろんなことがあって、俺らも「音楽には何ができるんだろう」って考えた。んで、悲しい思い出を消すことはできないけど、楽しい思い出をひとつプラスすることはできると思ったんだよね。じゃあ、とびきり楽しく前向きな、力強い思い出を一緒に作れるようなアルバムを作ろうぜと。みんなで一緒に歌えるようないい曲作ってさ、それを持ってまた全国回りたいと思ったわけ。……今まで「みんなで歌えるものを作りたい」なんて考えたことなかったからね。みんなで歌える歌。シンガロングの力強さってのを去年のライブで思い知ったから。すんげえ震える魂の力、音楽の力だよね。結果として過去最高にコンセプチュアルなアルバムになったと思うんだ。

──全10曲38分、というサイズ感もほどよいですし、コンパクトながら濃度の高い作品ですよね。

増子 昭和サイズだからね(笑)。

──歌詞の内容も含め、これまでのどの作品より広く世間に伝わるアルバムになったんじゃないかなと思うのですが。

増子 ロックバンドというのは本来、私小説的なことを歌うもんじゃない? でもね、こんだけのことがあった今、日記発表してどうすんのって俺は思ったわけ。みんなの歌になり得るものを作ろうと思ったら、結果こんなアルバムになったんだよね。

ニューアルバム「Tabbey Road」 / 2012年4月18日発売 / 2800円(税込) / IMPERIAL RECORDS / TECI-1326

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CD収録曲
  1. 押忍讃歌
  2. もっと…
  3. 歩きつづけるかぎり
  4. ホトトギス
  5. ナンバーワン・カレー
  6. 夢と知らずに
  7. 愚堕落
  8. そのともしびをてがかりに
  9. 雪割り桜
  10. YO・SHI・I・KU・ZO・!

※OK! Let's Go TOUR 2012 ”夢追道中” 7/16(月・祝)Zepp DiverCity公演、購入者先行チケット特別予約チラシ封入

OK! Let's Go TOUR 2012 ”夢追道中”

5月6日(日)大阪城野外音楽堂を皮切りに、ファイナル7月16日(月・祝)Zepp DiverCityまでライブハウスとホールで開催する全国27公演!

特設サイト「OK!Let's Go 怒髪天スプリングキャンペーン」公開中

怒髪天(どはつてん)

怒髪天

1984年に札幌にて結成。1988年には増子直純(Vo)、上原子友康(G)、清水泰次(B)、坂詰克彦(Dr)という抜群のキャラクターを誇る現在のメンバーが揃い、「JAPANESE R&E(ジャパニーズ アール アンド イー)」を旗印に掲げた独自のスタイルで幅広い支持を集めている。2012年1月15日には、中野サンプラザ新春公演「謹賀新年 新春ドラゴン・ツイスト“俺達の琵琶ビリーナイト”」を開催。4月18日には最新アルバム「Tabbey Road」をリリースし、5月からは全国ツアー「OK! Let's Go TOUR 2012 ”夢追道中”」を行う。