ナタリー PowerPush - BUMP OF CHICKEN

充実したバンドの“現在”を伝える「宇宙飛行士への手紙 / モーターサイクル」

「超いいじゃん!」って言ってくれるやつが周りに3人もいる

──歌詞の中には「宇宙」という存在や言葉も頻繁に登場しますよね。藤原さんにとっての宇宙って、その壮大さで過去、現在、未来の時間軸を包み込む象徴的なキーワードとしてあるのかなって。

藤原 何ですかね? 僕自身もうんざりしているところではあるんですけど(苦笑)。

一同 (笑)。

藤原 宇宙とか星とかすぐに出てきちゃうんですよ。

──それだけ対峙すべき存在なんでしょうね。

藤原 そうなんでしょうね。自分でも辟易しているんですけど。でも、すぐ出てくるということは、好きということなので。好きだし、大きなテーマなんですよね。それは素直なことだから、むりやり書かないようにするのも違うと思うし。でも、僕だけではなくメンバーみんな宇宙とか時間の概念とか、そういう話が好きな連中で。それについて特に詳しいやつがいるわけではないし、専攻して勉強しているやつがいるわけではないんですけど。例えば中学生のときにマラソンの練習をしていて、走りながらそういう宇宙の話をしたりね。そういうことをしていましたね(笑)。

直井 何も変わってないっていう(笑)。さらに、藤くんがさっき言っていたように30歳を過ぎてもみんな思っていることが同じだっていうことが確認できて。そんなタイミングでこういう曲が上がってくるので、そこでまた昔の記憶が鮮明によみがえりますよね。つくづくこのCDがリリースされるとき俺ら(恥ずかしさから)気持ち悪い感じになっちゃうなあと思うんですけど。もう、しょうがねえか!って(笑)。

一同 (笑)。

──そんなメンバーと同じように、リスナーも自らの思いや物語を投影できる「親密な普遍性」を宿した歌になっていると思う。

藤原 うれしいです、そう言ってもらえると。僕らは僕らでこういう話をしますけど、リスナー皆さんにはぜひそれぞれの日常のBGMとして聴いてもらえたらうれしいです。聴いたその人自身の歌になると思うので。僕らは僕らの歌だと思っているし。そういうものだと思うんですよね、僕らの音楽って。

──そう思います。

藤原 余談ですけど、「プラネタリウム」(2005年)というシングルをリリースしたときに、僕、何の意識もせずにカップリングに「銀河鉄道」という曲を書いてしまって(笑)。冷静に考えたら「プラネタリウム」と「銀河鉄道」って、なんか俺すげえベタだなと思ってしまって。自分で自分をぶっ飛ばしてえなって(笑)。

一同 (笑)。

藤原 でも、この曲は「銀河鉄道」というタイトル以外ありえないと思って、ドキドキしながらメンバーに聴いてもらったら「あ、タイトル超いいじゃん!」って言ってくれて。「こいつらで良かった!」って思ったんですよね(笑)。

──いい話だなあ(笑)。

藤原 ホント良かったって。自分の中で、そこで全部納得できるというか。それまではいろんなことにビビるんですけど、「タイトル超いいじゃん!」って言ってくれるやつが周りに3人もいるんだからそれでいいやって。

今回のレコーディングから言いたいことを言おうと決めていた

──「宇宙飛行士への手紙」のサウンドは、4つ打ちを軸にスタートしてから、どんなところがポイントになりましたか?

藤原 いちばん最初に弾き語りで作ったときのアコギの演奏が全部サウンドに直結しているんです。リフもアコギで弾いていたものを採用して。リズムパターンもほぼアコギからですね。4つ打ちというのは最初からお題としてあったんですけど、ときどき入るスネアのアクセントとかもギターのアクセントがそのまま採用されてます。なので、かなり素直なアレンジになりましたね。

直井 うん、けっこうデモのとおりだよね。

──升さんは、この曲の4つ打ち感とどう向き合いましたか?

升秀夫(Dr) 4つ打ちがどうこうというよりも、あくまで「この曲のリズム」という感じで向き合いましたね。でも難しいです、キックを4つきれいに気持ちよく打つというのは(笑)。やっていて、これでいいのか、悪いのかわからなくなってくる感じがあるんですよ。同時期に「R.I.P.」のレコーディングをしていて、あの曲は「昨日あれだけ手が回らなかったのに今日は回った!」みたいな達成感があったんですけど、この曲に関してはずっとモヤーッとした感じがあって(笑)。でも、こうして完成すると音もいい感じに仕上がっていて、よかったなあと思います。

──そのあたり同じリズム隊として直井さんはどうですか?

直井 この曲は、僕自身は歌に引っ張られて、ひたすら気持ちよくシンプルな8ビートを弾いているだけなんですけど。今回のレコーディングから、言いたいことを言おうと決めていて。それはこの曲に限らず。秀ちゃんにとってそれが有益な情報にならなくても、自分が思っていることをとりあえず言おうと。「もっと動物的にやってほしい」とか「もっとロックにやってほしい」とか。それが曲として間違っていても俺のせいじゃないよ、みたいな(笑)。今までは秀ちゃんのパートだから秀ちゃんが全部決めればいいっていう解釈で、周りが口を出すことではないと思っていたところがあって。でも、もう30歳すぎたし「いいや、言いたいこと言おう」と思って。「俺はこういう音楽はヤだよ」って。気持ちの問題ですよね。だから、プレイに関して肝になるようなことは何も言ってないんですけど(笑)。

──でも、感情的な部分を声に出して伝えるようになったというのはすごく大きな変化ですよね。

直井 うん、そうですね。

 まあ、だいたいそういうときは俺もアップアップな状態で思考が落ちてる感じなので(笑)、なるべく素直に意見を聞くようにしていて。そうやって、どんどん意見を言ってもらえることはありがたいです。

ニューシングル「宇宙飛行士への手紙 / モーターサイクル」 / 2010年10月13日発売 / 1260円(税込) / TOY'S FACTORY / TFCC-89318

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CD収録曲
  1. 宇宙飛行士への手紙
  2. モーターサイクル
  3. good friends
BUMP OF CHICKEN(ばんぷおぶちきん)

アーティスト写真

藤原基央(Vo,G)、増川弘明(G)、直井由文(B)、升秀夫(Dr)の幼なじみ4人によって、1994年に中学3年の文化祭用バンドとして結成。高校入学後に本格的な活動をスタートする。地元・千葉や下北沢を中心にライブを続け、1999年にインディーズからアルバム「FLAME VEIN」を発表。これが大きな話題を呼び、2000年9月にはシングル「ダイヤモンド」で待望のメジャーデビューを果たす。その後も「jupiter」「ユグドラシル」といったアルバムがロックファンの熱狂的な支持を集め、2007年には映画「ALWAYS 続・三丁目の夕日」主題歌に起用されたシングル「花の名」を含むメジャー3rdフルアルバム「orbital period」をリリース。2008年には全国33カ所41公演、22万人動員の大規模なツアーを成功させている。