ナタリー PowerPush - THE BAWDIES

セルフプロデュースで自分たちを解放 “もう1枚の1stアルバム”完成

前作とは違う部分を詰め込んだもう1枚の1stアルバム

──ニューアルバム「THERE'S NO TURNING BACK」はとても象徴的なタイトルですね。前作「THIS IS MY STORY」で“僕たちの物語が始まる”という意思表示をした次に、“後には引けない”という意味のタイトルがくるわけですが、なぜこのタイミングでこのタイトルにしたんですか?

ROY 「THIS IS MY STORY」の次にシングル「IT'S TOO LATE」をリリースしたんですが、タイトルの“遅すぎる (=IT'S TOO LATE)”というのは「THE BAWDIESはどんどん先に進んでいくので着いてきてください」というメッセージだったんです。で、今度の「THERE'S NO TURNING BACK」っていうのは、THE BAWDIESがさらにその先まで来たと。THE BAWDIESは古き良き時代の音楽をルーツにしているけど、そういったルーツミュージックとともに前進しているんです。バンドの中にルーツミュージックが生きているから、あえて過去に戻る必要もないし、ここにすべてがあるからこの先は進むだけという意味で「THERE'S NO TURNING BACK」と名付けました。

──その自信の表れなのか、このアルバムはTHE BAWDIESらしさやバンドのオリジナリティが前作以上に明確になっていて、楽曲も今まで以上にバラエティ豊かになったと思います。

インタビュー写真

ROY サウンドに関しては「THIS IS MY STORY」がすごくTHE BAWDIESらしさを表現してるものだったので、そこから積み重ねた2ndアルバムじゃなくて、違う部分を詰め込んだもう1枚の1stアルバムを作りたかったんです。そうなったときに、メロディやサウンド以外で重要な部分という意味で、僕らの人間性がもっと出たら面白いんじゃないかなと思ったんですね。

──なぜ今までの作品では、そういった部分は出していなかったんですか?

ROY 僕ら自身がとても明るくてポップな人間なので、その部分を好き勝手に出すと今まで大切にしてきたルーツミュージック感が薄れてしまうんじゃないかと思って、あえて封印してきたんです。だけど今回はROY、JIM、TAXMAN、MARCYではないリョウ、ヨシヒコ、タク、マサヒコ(4人の本名)という素の部分を出したら、僕らの個性がもっとメロディラインに活きるんじゃないかなと思って。アイデアの部分をリョウ、ヨシヒコ、タク、マサヒコに考えさせて、それをROY、JIM、TAXMAN、MARCYが演奏した結果、今まで以上に自由なメロディラインやフレーズが生まれた。結果としては8人で作った感覚なんです。

リョウ、ヨシヒコ、タク、マサヒコがプロデュースした作品

──では成長した成果というよりも、別の一面を見せたという側面が強いんでしょうか?

ROY メロディラインは僕ら自身がもともと持ってたものを今回出しただけなので、作曲レベルが上がったっていうわけではないんですね。でも、この1年を通してTHE BAWDIESの4人の表現力は幅広くなったと思うんです。1年前ならこういう楽曲は作れたとしても同じようには表現できなかったし、THE BAWDIESっぽくないから外してたと思う。今回は何をやってもブレない自信があったので、どんな楽曲が生まれてもとりあえず演奏してやろうって気持ちが強かったんです。だから、もともと持ってるものを自由に発散させたという感じですね。

JIM ROYが言うところの“素の部分”を自由に出したら、レコーディング自体がすごく楽しくなったんですよね。ROYがメロディを持ってくると、彼とは小さい頃からの付き合いなので「あっ、ROYじゃなくてワタナベリョウが来た」ってわかる。だったら俺もキムラヨシヒコになってアイデアを出そうと。で、ギターを弾くのはJIMだし、歌うのはROYなので、そこでまた1本筋が通るようになった。だから、本当の意味でのソウルアルバムに近いんじゃないかな。俺らが衝撃を受けたTHE SONICSとか、そういうバンドが持ってる生々しさや人間力がすごく詰まってると思ってます。

──そういう作品に仕上がったのはセルフプロデュースだったことも大きく影響してますか?

ROY そうですね、自分たちでやったのは大きいと思います。セルフプロデュースなんですけど、リョウ、ヨシヒコ、タク、マサヒコにプロデュースしてもらったTHE BAWDIESみたいな感じですね。

インタビュー写真

TAXMAN NAOKIさん(LOVE PSYCHEDELICOのギタリスト。アルバム「THIS IS MY STORY」やシングル「IT'S TOO LATE」をプロデュース)に教えてもらったことを、今度は僕たちだけでちゃんとやれるかどうかというのも大事だったし。楽しいんですけど冷静に判断できるようになってたのはすごく良かったし、いいタイミングでセルフプロデュースができたなと思います。

──前作「THIS IS MY STORY」はクリアな音でかっちり作られていて、ある意味メジャー1枚目にふさわしい作品でしたが、今回の「THERE'S NO TURNING BACK」は初期衝動的な勢いがあってデビューアルバムっぽいですよね。

JIM ベクトルがちょっと違うんですけど、「THIS IS MY STORY」はTHE BAWDIESの1stアルバムらしい、素晴らしいアルバムだと思うんです。でも、今回はもっとバンドのパーソナルな部分が見えるというか、「THIS IS MY STORY」よりも距離感が近くて。パッション的な意味では今回の作品も1stアルバムなんですよ。それは作ってる段階で感じていて、音で遊んだというか音を出してるだけで本当に楽しかったので、それこそバンドを始めてみんなで初めてスタジオに入って「せーの!」でジャンって鳴らしたときの興奮に似ていて。そこは前作とはまた別の魅力だし、その部分が出せたことに満足してます。

TAXMAN 本来の自分たちをそのまま出したから変に背伸びしなくてもいいし、カッコよくなきゃいけないというのもなくて。カッコ悪い部分を出しても大丈夫なんだっていう気持ちもあったし、気取らずにやれたからそういう衝動的なアルバムになったのかなという感じがしますね。

THE BAWDIES(ぼうでぃーず)

小学校からの同級生であるROY(Vo,B)、JIM(G)、MARCY(Dr)と、高校からの同級生TAXMAN(G,Vo)によって2004年1月1日に結成。メンバーが敬愛するリトル・リチャード、レイ・チャールズに代表される、リズム&ブルースやロックンロールをルーツとする。唯一無二の圧倒的なボーカルを武器に、ロックンロールの本来持つピュアな魅力やエネルギーをストレートに伝える楽曲やライブが各地で噂を呼ぶ。
2006年3月に1stアルバム「YESTERDAY AND TODAY」、2008年2月に2ndアルバムとアナログ盤「Awaking of Rhythm And Blues」をリリース。2度のオーストラリアツアー、34公演にわたる全国ツアーを成功させ、数々のロックフェスにも出演。さらに自主企画「FREE FOR ALL」を実施するなど、めざましい活躍を見せ、着実に知名度を高めていく。
2009年3月、先行限定7インチアナログ盤+配信シングル「EMOTION POTION」を発表。2009年4月には、NAOKI(LOVE PSYCHEDELICO)初プロデュース曲を含む、メジャー1stアルバム「THIS IS MY STORY」をリリースする。2010年2月には同作で第2回CDショップ大賞を受賞。同年3月にシングル「HOT DOG」をリリースし、オリコンウィークリーチャートトップ10入りを果たす。4月にメジャー2ndアルバム「THERE'S NO TURNING BACK」をリリース。5月からは40本以上におよぶ全国ツアーも決定している。