音楽ナタリー Power Push - back number

裸電球からシャンデリアへ 光を放つバンドの覚悟

back numberが5thアルバム「シャンデリア」を完成させた。「JR SKISKI」CMソングの「ヒロイン」、「ポカリスエット イオンウォーター」CMソングの「SISTER」、NTTドコモCMソングの「手紙」、フジテレビ系月9ドラマ「5→9 ~私に恋したお坊さん~」の主題歌「クリスマスソング」などの話題曲を含む本作は、ロックバンドとしての生々しさと優れたポップネスを共存させた充実作に仕上がっている。

音楽ナタリーでは、今回もメンバーの清水依与吏(Vo, G)、小島和也(B)、栗原寿(Dr)にインタビュー。アルバム「シャンデリア」の制作過程を中心に、大型タイアップによって知名度をさらに上げ国民的バンドへの道を突き進んだこの1年について聞いた。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 須田卓馬
ヘアメイク / 関田泰典 スタイリスト / 松崎彩子

back numberは“裸電球”とか“蛍光灯”

──まず、「シャンデリア」というタイトルの由来について教えてもらえますか?

清水依与吏(Vo, G)

清水依与吏(Vo, G) アルバムが半分くらいできたときに、なんとなくいいなと思った言葉なんですけどね。まず「シャンデリア」っていう言葉が似合わないじゃないですか、back numberって。どちらかというと“裸電球”とか“蛍光灯”っていう感じなので。

小島和也(B) そうだね(笑)。

清水 ただ、今年は「これは自分たちに似合わないかもな」と思うこともたくさんやってきた1年だとも思っていて。とりあえず「シャンデリア」という言葉を頭に置いて曲順を考えてみたら、だんだん「やっぱりこのタイトルだな」という気持ちが強くなってきたんですよ。シャンデリアは周りから見るとすごくキレイだし、優雅な気持ちにもなれるけど、シャンデリア自身は「本来は照明器具だし、しっかり照らさないと」と思ってるんじゃないかなって。しかも、誰かにスイッチを押してもらわないと光ることもできないっていう。それは音楽も同じなんですよね。誰かが再生ボタンを押さないと聴いてもらえないわけだから。いつか切れる電球と同じで、命を燃やして音楽をやってるんだけど、常に誰かに支えてもらっている。そう考えると、共通点がたくさん見出せるんじゃないかって思ったんです。

──確かに今のback numberは、周りの人から見ると光を放ってますからね。ヒット曲が続いていて、注目度もさらに上がって。

清水 そう、キラキラして見える瞬間もあると思うんです。大型タイアップと言われるような曲をこれだけやっているし、「すごく調子よさそう」とか「光ってるね」と言われることもあるので。そういうバンドのイメージもしっかり受け止めるべきだと思うけど、シャンデリアはもともとはただのガラスだし、いろんな光を反射しながら輝いているんだよなって。それを含めて“シャンデリア”として見られることを恐れない覚悟ができたかもしれないですね。「なんとでも言ってください」っていう。

小島和也(B)

小島 タイトルを知ったのは制作の中盤くらいだったので、「歌詞のどこかにかかってくるのかな?」と思ってたんですよ。今まではアルバムのタイトルと歌詞の一部がつながっていたりしたので。でも、今回はなかったですね。

清水 「ミラーボールとシンデレラ」の“シンデレラ”は近いんじゃない?

小島 意味じゃなくて、言葉の響きがね(笑)。

清水 (笑)。まあ、歌詞を関連付ける余裕がなかったんでしょうね。

栗原寿(Dr) タイトルの意味についても、こういうインタビューで知る感じですからね。

“雪と片思い” vs. “クリスマスと片思い”

──実際、タイアップ曲が続くことに対して「自分たちの身の丈に合ってないのでは?」という葛藤もあったんですか?

清水 そこまで客観視するタイミングもなかったんですけどね。アルバムに入ってる曲でいうと、タイアップ曲は「ヒロイン」が最初なのかな。特に「JR SKISKI」の話が来たときはうれしさの反面プレッシャーも感じましたけど、もともとあった曲を気に入ってもらって決まったタイアップだったから、そこまで苦労することはなくて。そのあとの「泡と羊」(「サンスタートニック シャンプー」キャンペーンソング)や「手紙」は大変でしたけど、今までやってないことをやれたのが楽しかったんです。一番ヤバかったのは、やっぱり「クリスマスソング」ですね。「ヒロイン」とシチュエーションがあまり変わらないというか、“雪と片思い” vs. “クリスマスと片思い”みたいな感じじゃないですか。でも、なんだかんだ言って楽しみながらやってましたね。「このテーマで俺は何ができるか?」という挑戦もあったし、相手の土俵で相撲を取ることで得られるものもあったので。

──しかも1曲1曲、しっかり的を射ているし、結果も出してますからね。タイアップの要望に応えつつ、back numberらしさをアピールすることで、リスナーの幅を広げてきて。

清水 ありがとうございます。

栗原寿(Dr)

小島 昔の友達からの連絡も増えましたから(笑)。一番実感するのは、ファンの人たちからのTwitterのリプライですね。「曲が○○で流れてましたよ」とか。

栗原 テレビや街中で自分たちの曲を耳にする機会も増えたし、もともとback numberを応援してくれてた人、バンドやライブが好きな人以外にも一気に広がった感じはあります。変な感覚なんだけど、自分のことじゃないような感じもあって。

清水 でもこれだけ耳に触れてるんだから、そろそろ「自分のことじゃない」みたいに言ってられないですよね。Mr.Childrenとかは、日本中まんべんなく聴かれた結果が、日本全国でスタジアムライブをする今の状況につながっていると思うんです。もちろん僕らの場合はまだまだ聴いてもらわないといけないけど、実際どれだけ浸透しているのかを知らなきゃいけないタイミングが近付いているのは確かで。まあ、このタイミングで「シャンデリア」という言葉で自分たちを形容できるということは、少なくとも潔くやれた1年だったとは思いますけどね。

5thアルバム「シャンデリア」 / 2015年12月9日発売 / UNIVERSAL SIGMA
初回限定盤A [CD+DVD] 6264円 / UMCK-9785
初回限定盤B [CD+DVD] 4298円 / UMCK-9786
通常盤 [CD] 3240円 / UMCK-1528
CD収録曲
  1. SISTER
  2. サイレン
  3. ヒロイン
  4. 僕は君の事が好きだけど君は僕を別に好きじゃないみたい
  5. 泡と羊
  6. ミラーボールとシンデレラ
  1. クリスマスソング
  2. 助演女優症2
  3. 東京の夕焼け
  4. Liar
  5. アップルパイ
  6. 手紙
初回限定盤A DVD収録内容
  • urban live tour 2015@幕張メッセイベントホール
  • MOTTO
  • bird's sorrow
  • 青い春
  • アップルパイ
  • そのドレスちょっと待った
  • SISTER
  • チェックのワンピース
  • 春を歌にして
  • エンディング
  • 重なり
  • アーバンライフ
  • 003
  • 電車の窓から
  • 世田谷ラブストーリー
  • stay with me
  • ヒロイン
  • あとのうた
  • 海岸通り
  • スーパースターになったら
  • 花束
  • 泡と羊
  • 高嶺の花子さん
  • making of urban live tour 2015@幕張メッセイベントホール
初回限定盤B DVD収録内容
  • ショートフィルム3部作

世田谷ラブストーリー / 出発×泡と羊 / それでもなおできることのすべてを君に

  • ミュージックビデオ

ヒロイン / SISTER / 手紙 / クリスマスソング / サイレン

14thシングル「クリスマスソング」/ 2015年11月18日発売 / UNIVERSAL SIGMA
初回限定盤 [CD+DVD] / 1620円 / UMCK-9775
通常盤 [CD] / 1080円 / UMCK-5585
back number(バックナンバー)
back number

2004年に清水依与吏(Vo, G)を中心に群馬県で結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、2007年に小島和也(B, Cho)と栗原寿(Dr)を加えた現在の編成に。2009年に発売した初のミニアルバム「逃した魚」は大手レコード店で絶賛され、全国的に話題となる。2010年にフルアルバム「あとのまつり」を発表し、美しいメロディに切ない歌詞を乗せるというスタイルを確立。2011年4月にシングル「はなびら」でメジャーデビューした。2013年には東京・日本武道館でワンマンライブを成功させ、その後もコンスタントに作品を発表。2015年11月に14thシングル「クリスマスソング」をリリースし、12月には5thアルバム「シャンデリア」を発売する。