ナタリー PowerPush - avengers in sci-fi

スケール倍増の新作「dynamo」誕生 痛快スペースサウンドの原動力に迫る

avengers in sci-fiは丸裸にすればすごくシンプル

──木幡さんが今アヴェンズでやってることって、当時すごく大事だったものそのままなんじゃないかと、お話を聞いていて思いました。

うん。そうですね。今は「昔メロコアのコピーやってました」なんて言うと「それでこういう音楽になっちゃうんですか?」っていう反応をされることが多いんですけど、別にこのバンドも装飾の部分を全部剥がして丸裸にしてみれば、骨格の部分はメロディックパンクなり、NIRVANAなりにちかい、シンプルなサウンドなんですよね。僕がちゃんとコピーしてきた音楽って、そういうもんだったりするんで。曲の構造だとか、そういうことに関することはやっぱりコピーから学ぶことが多いじゃないですか。なので、好きだったバンドの音が基本になってると思うんですよね。

──メッセージや精神性でも受け継いでると思うところはある?

なんだろうな……フィジカルな部分というか。NIRVANAにしろメロディックパンクにしろ、耳で聴くだけじゃわからない、自然と体を揺さぶられるようなフィジカルな強さがすごいあって。そういうものじゃないとロックとしては物足りないんじゃないかな?って思うことはありますね。どんなにR.E.M.やRADIOHEADが深いことを言っても、別にそれを否定するワケじゃないですけど、ロックとしては何かが欠けているような気はしますね。特に「KID A」以降の最近のRADIOHEADなんかってのは。

──最近でもないけど(笑)。

(笑)。僕らメロディックパンクに没頭してたのって、1997年とかそのぐらいの時期なんですけど、その頃の時期の洋楽のロック、特にUKロックはフィジカルな部分がどんどん欠けちゃっていた時期で。そういうのに対する反抗心みたいのは結構ありました。それが今でも続いてるというか、やっぱフィジカルに訴える強さみたいなのがロックの醍醐味なのかな、って思ってるフシはありますね。

インタビュー風景

──それが3ピースで、どんな複雑な音も出すっていうところにつながるんですか?

そこに関しては、パソコンだとか打ち込みに関する知識がないからなんです。

──どっちが難しいかと言えば、むしろアヴェンズがやってることのほうが難しいと思うんですけど(笑)。

いや、そうなんですよね(笑)。今思うとそうなんですけど、当時は「飛行機が飛ぶ気がしない」っていうのと同じで、ドラムがクリック聴きながらパソコンの音に同期させて叩くなんて、可能な気がしなかったていうか(笑)。そう思い込んでたところがあって。そうですね。僕がすごくエレクトロニカとかそういう音楽に傾倒してた時期があって、ちょっと電子的な質感だったり、フューチャリスティックだとか、スペイシーだとか、そういう世界観の音楽を作りたいっていう気持ちが強かったんで、そのためにできることは、エフェクターで音を作ることだったんです、当時の自分にとって。

──最初は何を持ってましたか。

最初はやっぱりディストーションですね。その後は普通にコーラスだとかフランジャーだとか割と一般的なエフェクターに手を出すんですけど、転機になったのはディレイですね。

──人の作品で「この音、なんだろうな?」と思うようになったり?

そうですね。ギターがエコーしてるっていうか、1回弾いた音が延々と鳴り続けてるとか、「この音はどうやって出してるんだろう?」ってずっと思ってたんですけど、それがディレイと出会ったことで解決して。ホントにクリエイティビティを与えてくれるものです。

僕らの音楽で走りたくなるというのは正直な反応

インタビュー風景

──エレクトロニカというか、テクノ/ダンス系だとどんなアーティストを聴いていたんですか。

その辺はフロア仕様一辺倒の現場感バリバリの人っていうよりは、THE CHEMICAL BROTHERSとかUNDERWORLDとか、ロックとエレクトロニックミュージックの中間点みたいな人たちの音楽から入って、あとはAPHEX TWINとかSQUAREPUSHERとか、2000年前後にすごい元気だった人たちが主です。

──木幡さんのセレクトはホントに王道ですね。ところで、シングルでもリリースされて、今作にバージョンを変えて収録されている「Delight Slight Lightspeed」とか聴いてると、昔「electraglide」でUNDERWORLDが来日したとき、あまりにも楽しくて、踊るんじゃなくて幕張メッセを走ったことを思い出しまして。

ははは! 僕は走った記憶はないんですけど、むしろそっちのほうが正直な反応なんじゃないですか?(笑)

──アヴェンズのこのアルバムを聴いてるとすごく走りたくなるんです(笑)。

(笑)。まぁ単純に、「走る」っていうのはけっこう近い感覚かもしれないです。よくダンスミュージックとロックのミックスっていう例えをされることが多いんですけど、そんなにダンスじゃないですよね? もちろんダンスミュージック的な素材は使ってはいるんですけど、なんていうか、もっとパンク的な料理の仕方をしてるというか。10分かけて踊る音楽っていうよりは、イントロ10秒間のバーストのためにある音楽。すごくパンク的だと思ってるんです。

ニューアルバム「dynamo」 / 2010年10月20日発売 / 2800円(税込) / Getting Better / VICL-63678

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CD収録曲
  1. El Planeta / Love
  2. Wonderpower
  3. Cydonia Twin
  4. Intergalactic Love Song
  5. Delight Slight Lightspeed(dynamo version)
  6. Before The Stardust Fades
  7. There He Goes
  8. Lovers On Mars
  9. Where Stars Sleep
  10. Caravan
  11. Future Never Knows
  12. Space Station Styx
  13. El Planeta / Birth
avengers in sci-fi(あう゛ぇんじゃーずいんさいふぁい)

木幡太郎(G,Vo,Syn)、稲見喜彦(B,Vo,Syn)、長谷川正法(Dr,Cho)による3ピースバンド。高校の同級生同士だった木幡と稲見に、長谷川が加わり2002年頃から活動を開始する。2004年12月に初の正式音源となるミニアルバム「avengers in sci-fi」を発表。ジャンルや形式にとらわれないスタイルと、ポップでスペイシーなサウンドを作り出すことから、そのスタイルは「ロックの宇宙船」と呼ばれている。2007年には、新人バンドの登竜門と言われる「FUJI ROCK FESTIVAL '07」の「ROOKIE A GO-GO」ステージに出演。2009年にはメジャーレーベルGetting Betterに移籍し、同年12月にミニアルバム「jupiter jupiter」をリリース。また同年、木村カエラのシングル「BANZAI」をプロデュースするなど、多方面で活躍している。