ナタリー PowerPush - 藍坊主
ベストアルバム&初の武道館ライブ後にバンドが見据える“この先”
拓郎の加入がバンドのターニングポイントのひとつ
──武道館ライブはこれまでの総括でもあり、これからを感じさせるものでもあったと思うんですが。結成10周年を通過してみて、藍坊主にとってのターニングポイントってどこだったと思いますか?
田中 それはたぶん、結構たくさんありますね。
hozzy うーん、なんだろうな……。
(しばらく沈黙が続く)
田中 あ、みんな黙っちゃった(笑)。
藤森 確かにたくさんあると思うんだけど、拓郎の加入もそうだったんじゃないかな。
渡辺 おっ。
──2005年3月、ちょうどメジャー1stシングル「ウズラ」をリリースするタイミングですよね。
藤森 それくらいですよね。せーの、でバンドとして出発したのは最初のドラマーの亀井だったんですよ。拓郎はあとから入ってきて、言ってみれば、オイシイところから始まってるというか。
渡辺 下積みゼロ。
hozzy おぼっちゃんだ(笑)。
藤森 いきなりメジャーデビューですからね。でも、そっからの拓郎の快進撃を見てると、「それがあったから、今の藍坊主があるのかな」って思うんですよね。最初はドラムを叩ければいいってところから始まったかもしれないけど、途中から曲も持ってくるようになって。
hozzy アレンジでも重要なポジションにいますからね。……って、ちょっと偉そうでした、すいません(笑)。
渡辺 いえ、ありがとうございます。
──(笑)。当然バンドにとっては一大事ですよね、ドラマーが変わるって。どっちに転ぶか、やってみないとわからなかっただろうし。
藤森 そうですね。全然知らない人ではなくて、同じ地元にいた拓郎だった、っていうのも大きいと思うし。確実にターニングポイントだと思います。
俺らも同じようにカッコいいと思えるように叩いてくれ
──渡辺さんはどうですか?
渡辺 あとから加入したっていうのも関係してると思うんだけど、要所要所で「この3人を追いかけてる」って思うことがあって。例えば、ドラムのことでユウイチに言われたことがあるんですよね。「ハナミドリ」(2006年4月リリースの3rdアルバム)を作り始める前か、「ソーダ」(2005年5月リリースの2ndアルバム)の後くらいだと思うんですけど……僕、藍坊主に入る前って、全然違うジャンルの音楽をやってたんですよ。で、自分なりに「こういうフレーズがカッコいい」と思って叩いてたんですけど、それが3人にはあまり良く聴こえてなかったみたいで。
藤森 (笑)。
渡辺 で、ユウイチに「おまえがカッコいいと思ってやってるのはわかったから、俺らにもわかるようにやってくれ」って言われて。
hozzy ハハハハハ。
田中 いや、俺らも同じようにカッコいいと思えるように叩いてくれ、ってことですよね。
渡辺 だから、自分の中だけのカッコ良さだったんですよね。そこからドラムの見方も変わったし、アレンジとかにも参加するようになって。そうすると「hozzyや藤森がやろうとしてるのは、こういうことなのかも」って考えるようになるんですよね。そこにすり合わせる感じでドラムも考えるようになったというか。
藤森 うん。
渡辺 あとは歌詞ですよね。俺、個人的な音楽の聴き方として、歌詞にそこまで感動しないんですよ。インストもすごい好きだし。でも、藍坊主は歌がすごく大事だし、そこに感動している人がたくさんいる。だったら、それを自分もわかってないとダメだなって思って、歌詞のことを考えるようになったんですよね。そんな感じで「藍坊主って、こういうふうにやるんだ」っていうのを3人から気付かされたことは多かったと思いますね。
──いい話だなあ……。田中さんはどうですか?
田中 バンドにとって転機になったのは「水に似た感情」っていう曲ができたことだと思いますね。あの曲ができて、「今後、これをどう表現していくか」って考え始めたことが大きかったんじゃないかなって。
──「ソーダ」の時期ですよね。
田中 結成してから1stアルバムの「ヒロシゲブルー」くらいまでは青春パンクっていうジャンルが流行っていて、俺らも「青春パンクだね」って言われることが多かったんです。最初はそれがうれしかったんですよね。ただやりたいようにやってただけなのに、何かのジャンルとして扱ってもらえるんだって。言われてみればそういう要素もあるし、同じジャンルのバンドとライブやるのも楽しかったし。でも、ある時期を境に「そうじゃねえんだよな」って感じになったんですよね。で、そういうシーンから離脱するきっかけになったのが、「水に似た感情」だったと思うんですよ。
──バンド固有の表現に目覚めるきっかけだった、と。
田中 その前後くらいから、「最近できてる曲って、青春パンクじゃねえな」って話をしてたんですよ。ちょうどその頃、パンクロック系のイベントで、まったく雰囲気にそぐわない曲ばっかりやったことがあって。
hozzy わざとね。
田中 そのときは「(観客を)引かせたもん勝ちだ」とか言ってたんですけど(笑)、実はそうじゃなかったと思うんですよ。違う雰囲気の曲をぶつけることで、自分たちは何がやりたいのかっていうのを見つけようとしてたと思うんですよね、今振り返ってみると。あと、hozzyが下北沢の屋根裏で弾き語りライブに出たこともデカかったんですよね。
hozzy あれ、なんでひとりで出たんだろう?
田中 (笑)。確かあれもパンク系のイベントだったと思うんだけど、「新しい曲ができたんで」って、いきなり「水に似た感情」を歌って。それがめちゃくちゃカッコよくて、「この曲は大丈夫だ。これを信じよう」って思えたというか。自分たちの表現を探すっていう感じは、「水に似た感情」から始まったと思いますね。
──実際、その時期から急速に表現が深まっていきますよね。hozzyはどうですか?
hozzy 俺はまあ、「日々、是(これ)転機」が私の生き様というか。逆にどこかに留まってた時間はなかったんじゃないかなって。これから新しい曲を作りたいと思ったとしても、また違う考え方で作るだろうし……。今ユウイチも言ってたけど、"藍坊主はこういう感じ"っていうのを周りに決められたくないんですよ。別に何を言ってもかまわないけど、俺らは常に抜けていくよっていう。なんて言うか、俺はパンクでいたいんですよ、本当の意味で。18、19くらいのときにパンク好きの友達と「パンクってなんだ?」って話をよくしてて、ケンカみたいになることも多かったんだけど(笑)、そういう気持ちを持ちながらやってきたいんですよね。パンクっていう音楽ジャンルもあるけど、そうじゃなくて。優しい歌だってパンクだし。
──そうですね。
hozzy あと、生活と音楽が一緒なんですよ、俺は。毎日の生活とか、いろんな出来事を直視して、それを音楽に変換させる。それが藍坊主のひとつのカラーだと思うし、俺の役目かなと。
DISC1
- ハローグッバイ
- 鞄の中、心の中
- ウズラ
- 雫(しずく)
- 未知の道の道
- すべては僕の中に、すべては心の中に
- スプーン
- テールランプ
- コイントス
- ラストソング
- 羽化の月 (FORESTONE Ver.)
- 水に似た感情
- 星のすみか
- 伝言
- セブンスター
DISC2
- ガーゼ
- 桜の足あと
- 雨の強い日に
- 言葉の森
- 名前の無い色
- 空
- 春風
- マザー
- 柔らかいローウィン
- 空を作りたくなかった
- シータムン
- 瞼の裏には
- あさやけのうた
- ジムノペディック
- 忘れないで
DISC3(※初回限定盤のみ)
- Love & Peace
- 僕と同じ
- 雫 (高校生Ver.)
- 小心者
GOING UNDER GROUND 10th Anniversary Tour 2011 「Rollin' Rollin'」 vol.2 ~ emotional song
- 2011年6月11日(土)
名古屋CLUB QUATTRO
OPEN 17:00 / START 18:00
前売 3500円 / 当日 4000円
席種:オールスタンディング
W)GOING UNDER GROUND - 2011年6月12日(日)
大阪Music Club JANUS
OPEN 17:30 / START 18:00
前売 3500円 / 当日 4000円
席種:オールスタンディング
W)GOING UNDER GROUND
藍坊主(あおぼうず)
高校時代に藤森真一(B)とhozzy(Vo)が中心となり、前身バンド「ザ・ブルーボーズ」を結成。地元小田原を中心にライブ活動をスタートさせる。のちにバンド名を「藍坊主」に改名し、ギターに幼馴染みの田中ユウイチを加え、小田原や下北沢でのライブ活動やインディーズでの音源発表を重ねていく。2004年5月にアルバム「ヒロシゲブルー」でメジャーデビュー。翌年ドラムが渡辺拓郎に交代し、現在の編成となる。hozzyの力強いボーカルを主軸にしたメロウで力強い日本語ロックが高い支持を得ている。
2010年2月にはバンド結成10周年を飾るにふさわしい傑作となった5thアルバム「ミズカネ」をリリース。2011年4月には初のベストアルバム「the very best of aobozu」とシングル「星のすみか」を同時に発売した。また「星のすみか」は、アニメ「TIGER & BUNNY」のエンディングテーマに起用され、日本のみならず海外でも話題を集める。さらに同年5月にはバンド史上初となる日本武道館ライブを敢行し、大成功に収めた。