ALI PROJECTが2枚組のベストアルバム「愛と誠~YAMATO & LOVE×××」をリリースした。
本作はアリプロのデビュー25周年を記念して発売されたもの。DISC 1「YAMATO」には新曲「花と龍」をはじめ、代表曲「愛と誠」やアニメ「コードギアス 反逆のルルーシュ」のエンディングテーマ「勇侠青春謳」など“大和ソング”と呼ばれる勇ましい楽曲群が、DISC 2「LOVE×××」には美しいメロディの「胡蝶夢心中」、初期の人気曲「共月亭で逢いましょう」など愛を歌ったバラードが16曲ずつ収録される。またBlu-rayが付属する初回限定盤には京都・本山修験宗総本山 聖護院門跡で撮影された「愛と誠」のミュージックビデオが収められる。
宝野アリカ(Vo)と片倉三起也(Key)によれば、大和ソングは“アリプロがアイデンティティを獲得した”楽曲であり、バラードは“アリプロの原点”であると言う。その意味するところとは?
取材・文 / 須藤輝
大和ソングは宝野アリカの生き様?
──今年6月にベスト盤「血と蜜~Anthology of Gothic Lolita & Horror」をリリースされた際のインタビューで、「ベストアルバムとしては9枚目ですね」なんて話から入ったのですが(参照:ALI PROJECT ベストアルバム「血と蜜~Anthology of Gothic Lolita & Horror」インタビュー)、もう10枚目を出されるとは……。
片倉三起也(Key) 言ってませんでしたっけ?
宝野アリカ(Vo) 言ってなかったと思う。出すことは決まってたけど。
──で、今回の「愛と誠~YAMATO & LOVE×××」も、“大和ソング”とバラードをそれぞれ収録した2枚組で、やはりコンセプトアルバム的な内容になっています。
片倉 そうですね。「血と蜜」ではゴシックロリータな曲とゴシックホラーな曲を集めましたけど、アリプロのやっているいろんな音楽を、特定のテーマでカテゴライズしたアルバムを出したいとずっと思っていて。それを25周年に引っかけてやっちゃおうっていう流れなんですよ。
──大和ソングというものをカテゴリーとして意識しだしたのは、ベスト盤のタイトルにもなっている「愛と誠」(2005年発売の6thアルバム「Dilettante」に収録)からですか?
宝野 たぶんもう少しあと、「勇侠青春謳」(2006年発売の17thシングル)の頃からだと思います。このあたりからそういう曲が増えて、それらを一括りにするように大和ソングって言い出したのかな。
片倉 その言葉が生まれてからは、毎年どこかで意識的に作ってましたね(笑)。その中で「愛と誠」をベスト盤のタイトルにして、新たにミュージックビデオまで撮ったのは、もともとはプロデューサーの意見だったんです。この曲は大和ソングの代名詞のようなものでもあるし、認知度も高いので。あと、大和ソングっていうのはね、彼女の生き様みたいなものなんじゃないかと思うんですよ。
宝野 生き様とまではいかないですけど、やっぱり強いものに憧れるとか、今の日本はくだらな過ぎるとか(笑)、そういう気持ちがいろいろ集まってこういう形になっていったんじゃないですかね。
片倉 僕も毎年、靖国神社に参拝するんですけど……右翼じゃないですよ(笑)。ただの保守ですよ。なんだけど、そういう意識はね、どこかにあるんでしょうね。
宝野 あるよね。やっぱり。
片倉 戦争したいわけじゃないよ。
宝野 でも戦争はあったわけだし、それで命を落とした人たちがいて、今の平和な日本があるわけでしょ。そういうことを考えたら生半可に生きてられなくない?っていう思いを私は歌いたいわけですよ。で、音楽家って、何かしらメッセージを伝えるために歌ってると思うかもしれないけど、私にはそういうのまったくなかったの、最初はね。もちろん自分の好きな世界を好きなように、お話を作るみたいに歌いたいっていうのはあったんだけど、自分の中で「伝えなきゃいけないことがある」って気が付いたのが大和ソングですね。うん。
声優・大塚明夫に「国歌にすべき」と言われた
──ひと口に大和ソングと言っても、こうしてまとめて聴いてみると実にバリエーション豊かですね。
宝野 ねえ。
──イメージとしては「勇侠青春謳」のような雄々しい曲がまず浮かぶと思うのですが、「鎮魂頌」(2005年発売の6thアルバム「Dilettante」に収録)のような静謐なバラードもあれば、「神風」(2008年発売の8thアルバム「禁書」に収録)のようなテクノポップふうの曲まで。
宝野 「神風」はね、声優の大塚明夫さんが大好きで、聴くといつも大泣きするんだって(笑)。
片倉 変な人だね(笑)。
宝野 うん。「日本の国歌にすべきだ」とか言って。
片倉 サッカーの試合の前とかにこれ歌うの? 誰も歌えないよ(笑)。
──「YAMATO」収録曲で、お二人それぞれの推し曲ってありますか?
宝野 私はね、「青嵐血風録」(2007年発売の7thアルバム「Psychedelic Insanity」に収録)が一番好き。あと「少女殉血」(2003年発売のアニメ「AVENGER」のサウンドトラック「Avenger O.S.T.」に収録)と「KING KNIGHT」(2006年発売のアニメ「.hack//Roots」の2ndサウンドトラック「.hack//Roots」)。この3曲が特に好きですね。
片倉 僕も全部好きなんですけど、強いて言えば最後の3曲かな。「見ぬ友へ」(2013年発売の12thアルバム「令嬢薔薇図鑑」に収録)と「この國の向こうに」(2009年発売の9thアルバム「Poison」に収録)と「鎮魂頌」。
宝野 ああ、そうね。
片倉 全16曲中、1曲目から13曲目まで、いろんな勇ましい物語を経たあと、この14曲目から16曲目にかけて、より心に訴えてくる言葉がたくさんありますので。
宝野 「鎮魂頌」はね、靖国神社の歌なので。
──終戦60年に対する鎮魂の歌ですよね。
宝野 靖国神社の鎮魂の歌コンテストみたいなのがあって、応募したんですよ。で、最終審査まで残ったんだけど、もうCDになったあとだったので「これは優勝にはできませんが、素晴らしい曲です」と、審査員のつのだ☆ひろ氏に言われました!
片倉 変なことやってんなアリプロも(笑)。だけど、そのときから靖国神社の人と縁ができたんだよね。本殿まで連れてってもらったりとか、春秋の例大祭に呼んでもらったりとか。ホントにね、何やってんだろうね。その一方でゴシックロリータとかやってんだから、よくわかんないよ。
宝野 だよね。どれが本物のアリプロなんでしょう?
──全部だって話ですよね。
宝野 全部ですね。
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お盆進行でタイトル先行
- ALI PROJECT
「愛と誠~YAMATO & LOVE×××」 - 2017年9月27日発売 / FlyingDog
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初回限定盤
[CD2枚組+Blu-ray]
4860円 / VTZL-133 -
通常盤 [CD2枚組]
4104円 / VTCL-60455~6
- DISC 1「YAMATO」
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- 愛と誠
- 勇侠青春謳
- 神風
- 陸と海と空と
- 戦争と平和
- Valkyrja~騎士乙女
- 絶國TEMPEST
- 少女殉血
- 青嵐血風録
- 隼の白バラ
- 花と龍
- KING KNIGHT
- 永久戒厳令
- 見ぬ友へ
- この國の向こうに
- 鎮魂頌
- DISC 2「LOVE×××」
-
- 胡蝶夢心中
- 遊月恋歌
- BAR酔芙蓉へどうぞ
- 真夏の憂愁夫人
- 蜜薔薇庭園
- Rose Moon
- 月光夜
- 緋紅的牡丹
- RED WALTZ
- 薔薇娼館
- 修道院の廃庭にて
- 春葬
- 闇の翼ですべてをつつむ夜のためのアリア
- 星月夜
- 共月亭で逢いましょう
- Adieu
- 初回限定盤Blu-ray収録内容
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- 愛と誠(Music Clip)
- ALI PROJECT ワンマンライブ
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- 2017年11月2日(木)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
OPEN 18:15 / START 19:00
料金:全席指定 6000円(ドリンク代別)
一般発売:2017年10月7日(土)
- 2017年11月2日(木)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- ALI PROJECT(アリプロジェクト)
- ボーカルと作詞を務める宝野アリカと、作・編曲を担当する片倉三起也からなるユニット。1992年7月にALI PROJECTに改名しシングル「恋せよ乙女 -Love story of ZIPANG-」でメジャーデビューを果たす。官能的で妖艶なゴシック&ロリータの世界観と文学的な歌詞、現代音楽の影響も見られるサウンドで独自の音楽を追求し、コンスタントに作品を発表し続けている。ライブも精力的に行っており、「月光ソワレ」シリーズではオーケストラをバックに従えた幻想的なステージパフォーマンスが好評を博している。2017年3月には、独自のコンセプト“大和ロック”を追求したデビュー25周年記念シングル「卑弥呼外伝」、6月にはベストアルバム「血と蜜~Anthology of Gothic Lolita & Horror」を発表。さらに9月には“大和ソング”と呼ばれる独自の世界観を持った楽曲とバラードの2軸でまとめたベストアルバム「愛と誠~YAMATO & LOVE×××」をリリースした。11月には東京・Zepp DiverCity TOKYOにて単独公演を行う。