「LOVE×××」がなければ「YAMATO」はなかった
──では、続いて「LOVE×××」の話に移りたいのですが、こちら大和ソング集とは対照的な……。
宝野 あははは(笑)。まあ、「LOVE×××」があるから、「YAMATO」もまた成り立つんですけど。
片倉 「LOVE×××」は言ってみればバラード集なんですけど、こっちは「星月夜」(1996年発売の5thシングル)とか、古い曲も入ってますよね。歌詞においても、虚構ではあるけれども、彼女の膨大な物語が一連の曲に詰め込まれてるんです。そういうことを昔からやっていて、だからバラードって、アリプロにとってベーシックな要素だったんじゃないかと思うんですよね。その意味では、「LOVE×××」は「YAMATO」のB面みたいなんだけど、宝野さんも言ってるように「LOVE×××」がないと「YAMATO」はないんです。
──アリプロの音楽の基盤としてバラードがある。
片倉 僕の場合は、美しいメロディとか展開の面白さとか、そういうのはバラードで勉強するんです。だから「YAMATO」の速い曲も再生スピードを遅くすると、実は「LOVE×××」の曲になるんですよ。そういう意味でも僕にとっては音楽の基本ですね。
──宝野さんは、前回のインタビューで「昔の曲は好きじゃない」とおっしゃっていましたが、「LOVE×××」収録の古い曲に関してはいかがですか?
宝野 ここに入ってるものは、選曲も曲順も全部片倉さんが決めてて……。
片倉 宝野さんはね、時間がなかったの。
宝野 なんか忙しかったんですよね。でも、歌詞をまたパソコンから取り出して、もう1回チェックしながら聴いているうちに「わあ、素敵」とか思って。曲によって声質が違うし、すごくロマンチックだし。私の声は、実はこういうのに一番向いてるのかもって気も、しないでもない。
片倉 だから原点なんだよね。アリプロの。
宝野 何も考えないで、白紙の状態で歌ったらこうなるのかなって。大和ソングの場合は「大和ソングを歌うぞ!」っていう気持ちでああいう声になってるから。
──「星月夜」などは、とても可愛らしいですし。
片倉 可愛いよね。曲もすごいシンプルだしね。
宝野 まあ、「BAR酔芙蓉へどうぞ」(2015年発売の14thアルバム「快楽のススメ」に収録)ぐらいになるとわりと最近なので、こなれた感じもありますけど、それはそれで。うん、昔の曲は昔の曲で、嫌いじゃないかなって思いました(笑)。
しかし“大和”的な発想はデビュー前からあった?
──「LOVE×××」で一番古い曲は「共月亭で逢いましょう」(1992年発売の1stシングルのカップリング)です。で、このシングルの表題曲「恋せよ乙女~Love story of ZIPANG~」って、実は大和ソングじゃないかなと思ったんですけど。
宝野 あ。
片倉 なるほど。そうですよね。女性を鼓舞する歌と言うかね。
宝野 でも、この曲好きじゃないしな。
片倉 そんなこと言うなよー(笑)。
──ひどい(笑)。
片倉 あのタイアップ(黄桜の冷酒「飛沫」のCMソング)、僕が取ってきたんだから。
──さらに言えば、前回のインタビューで、記事にはしませんでしたが、インディーズ時代の楽曲「桜の花は狂い咲き」(1988年発売のアルバム「幻想庭園」に収録)は「今で言う大和ソングにつながっているのかもしれない」と宝野さんはおっしゃっていました。
片倉 そんないい加減なこと言ってた?
宝野 言ったっけ? でも、和風の歌詞を乗せるという意味ではそうですね。今の大和ソングではないかもしれないけど、和風アリプロは最初からあったってことですよね。
片倉 「恋せよ乙女」のときも、CMの制作サイドから「桜の花は狂い咲き」の路線の曲を作ってくれみたいなことを言われたから、大和ソング的な発想自体は脈々とあったんだね。
特殊なシチュエーションじゃないと宝野アリカの恋は盛り上がらない
──「LOVE×××」の収録曲は、ラブソングでもありますよね。そこに、作詞において宝野さんの恋愛観がどの程度反映されてるのかなと。
宝野 うーん、あんまり反映されてないんじゃないかな。昔の曲はわりと「ラブソングを書かなきゃ」って感じで作ってると思うんですけど……ああ、一番好きなのは「RED WALTZ」(2012年発売の11thアルバム「贋作師」に収録)ですよ。これは女スパイの恋愛ですから。
──特殊なシチュエーション(笑)。
宝野 そうじゃないと盛り上がらないわけですよ。普通の恋愛ではイヤなんです。「薔薇娼館」(2013年発売の12thアルバム「令嬢薔薇図鑑」に収録)の主人公も愛人みたいな立場だし。
──「星月夜」などはわりとストレートな恋の歌なのに。
宝野 「胡蝶夢心中」(2007年発売の7thアルバム「Psychedelic Insanity」に収録)とか「Rose Moon」(1998年発売の3rdアルバム「Noblerot」に収録)あたりもそういう感じじゃない? 「Rose Moon」は電話がどうとか言ってるもんね。
片倉 そうだ(笑)。
宝野 この間、取材か何かで「歌詞に『電話』なんて言葉を使ったことありません。絶対イヤです」みたいなことを言ったんだけど、改めて歌詞を読んで「あれ、使ってるわ」って。
片倉 アリプロの歌詞は基本的に空想的、虚構的なものだから、そこ現実的なアイテムを出すとちょっと興ざめしちゃうんですよね。だから「電話」も今だったらNGワード。
宝野 いまなら「スマホ」? わー、絶対ありえない。こんなもんに囚われてる世の中ってどうよ、みたいな歌詞になら使うかもだけど(笑)。
──虚構的とおっしゃいましたが、その舞台裏ではやれ入稿がどうとか、前回のインタビューではMVの尺の都合で曲の長さが決まったとか、かなり現実的な話をされて、そのギャップがすごい(笑)。
宝野 私たちも好き勝手やってるわけじゃないんだから。ちゃんと言われたことは守ってやってるんすよ。
片倉 僕たち普通だよ。
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5倍の値が張るブックレットの特殊用紙
- ALI PROJECT
「愛と誠~YAMATO & LOVE×××」 - 2017年9月27日発売 / FlyingDog
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初回限定盤
[CD2枚組+Blu-ray]
4860円 / VTZL-133 -
通常盤 [CD2枚組]
4104円 / VTCL-60455~6
- DISC 1「YAMATO」
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- 愛と誠
- 勇侠青春謳
- 神風
- 陸と海と空と
- 戦争と平和
- Valkyrja~騎士乙女
- 絶國TEMPEST
- 少女殉血
- 青嵐血風録
- 隼の白バラ
- 花と龍
- KING KNIGHT
- 永久戒厳令
- 見ぬ友へ
- この國の向こうに
- 鎮魂頌
- DISC 2「LOVE×××」
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- 胡蝶夢心中
- 遊月恋歌
- BAR酔芙蓉へどうぞ
- 真夏の憂愁夫人
- 蜜薔薇庭園
- Rose Moon
- 月光夜
- 緋紅的牡丹
- RED WALTZ
- 薔薇娼館
- 修道院の廃庭にて
- 春葬
- 闇の翼ですべてをつつむ夜のためのアリア
- 星月夜
- 共月亭で逢いましょう
- Adieu
- 初回限定盤Blu-ray収録内容
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- 愛と誠(Music Clip)
- ALI PROJECT ワンマンライブ
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- 2017年11月2日(木)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
OPEN 18:15 / START 19:00
料金:全席指定 6000円(ドリンク代別)
一般発売:2017年10月7日(土)
- 2017年11月2日(木)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- ALI PROJECT(アリプロジェクト)
- ボーカルと作詞を務める宝野アリカと、作・編曲を担当する片倉三起也からなるユニット。1992年7月にALI PROJECTに改名しシングル「恋せよ乙女 -Love story of ZIPANG-」でメジャーデビューを果たす。官能的で妖艶なゴシック&ロリータの世界観と文学的な歌詞、現代音楽の影響も見られるサウンドで独自の音楽を追求し、コンスタントに作品を発表し続けている。ライブも精力的に行っており、「月光ソワレ」シリーズではオーケストラをバックに従えた幻想的なステージパフォーマンスが好評を博している。2017年3月には、独自のコンセプト“大和ロック”を追求したデビュー25周年記念シングル「卑弥呼外伝」、6月にはベストアルバム「血と蜜~Anthology of Gothic Lolita & Horror」を発表。さらに9月には“大和ソング”と呼ばれる独自の世界観を持った楽曲とバラードの2軸でまとめたベストアルバム「愛と誠~YAMATO & LOVE×××」をリリースした。11月には東京・Zepp DiverCity TOKYOにて単独公演を行う。