ALI PROJECT|アリプロの真骨頂“大和ソング”と特殊なラブソング

5倍の値が張るブックレットの特殊用紙

──で、その入稿を急かされたパッケージですが、ブックレットも含めてかなり凝ってますね。

ALI PROJECT「愛と誠~YAMATO & LOVE×××」パッケージ見本

宝野 また現実的な話になっちゃうんだけど、特典のブックレットの紙は、美術品に使うような高い紙なんだって。

片倉 値段が普通の紙の5倍する。

宝野 じゃないとこの金色が出せないの。だからね、入稿も早かったし。

片倉 しかもね、僕らが考えたわけじゃないんだけど、モンタージュ写真集っていうのかな? ブックレットのページの上下が別々に開くようになって、宝野さんの顔の上半分が洋風、下が和風みたいになったり。

──僕は1990年代に青春を送った人間なので、こういう凝ったパッケージやブックレットにはわりとなじみがあるのですが、以前ほどパッケージに力を入れない時代になってきてる今、そういう遊び心は貴重かもしれませんね。

宝野 パッケージは重要ですよね。配信の時代なればこそ。別に配信を否定してるわけじゃなくて、私たちも最近は、シングルカットされた音源は配信してますし。別にそれはいいんです。海外の方も買いやすいですから。ただ、やっぱりモノとして残るものはこだわりたいですよね。

聖護院の学僧に、たまたまアリプロのファンがいて

──そのCDのジャケットと「愛と誠」のMVは、京都の本山修験宗総本山 聖護院門跡で撮影されています。

宝野 前回のベスト盤「血と蜜」はフランスのお城で撮ったので、今回は大和ソングということもあって、“和”だと思って。聖護院は重要文化財ですからね。お城のときもそうだったんですけど、今回も内装とかに触っちゃいけない。

片倉 聖護院の、一般公開されてないところで撮らせてもらったんですよ。普通だったらなかなか撮影許可が下りないらしいんですけど、たまたま学僧の中にアリプロのファンがいて。

──すごい(笑)。

宝野 そうなのよ。「アリプロさんだったらいいでしょう」って言ってくれて。さらに、10月にそこで「語らい会」という名でトークショーまでやらせていただけるんです。

片倉 その学僧っていうのが、大学を卒業したばかりの男の子と、この春まで女子高生だった18歳の女の子でね。

──すごいとしか言いようがないですね。若い子にアリプロの音楽が届いているというのも素晴らしいですし。

宝野 その2人が私たちに1日中付いて襖の開け閉めとかをしてくれたんですよ。私たちは触れないからね。でね、女の子も修行中の身なんだけど、もう涙を流して写真を撮ってくれて。

片倉 可愛いかったよね。

宝野 ね。まだ18歳なのに、頭を剃って2年間修行するんですよ。しかも、ほかのお寺だったら修行中でも外出できるところも多いらしいんですけど、聖護院は2年間山門から出られないんですって。だから、映画やライブはおろかテレビも観ちゃいけないし、音楽もお経のCDしかダメ。でも、家業を継がないといけないから18歳でお寺に入って、もうアリプロと接する機会がないなと思ったら……。

片倉 僕らのほうから来ちゃった(笑)。

──そりゃあ、泣きますわ。どこでアリプロのことを知ったんですかね。

宝野 「ローゼンメイデン」って言ってました。やっぱりローゼンは大きかったのよね。

片倉 そこから好きになって、ほかのも全部聞いて。「歌詞が好き」って言ってたね。

──その女の子が生まれた18年前は、お二人はすでにバリバリ活動していたわけですもんね。

宝野 ホントよね(笑)。ありがたいことです。

次は妖怪になりたい

──デビュー25周年プロジェクト第1弾であるシングル「卑弥呼外伝」リリース時のインタビューで、お二人は「25周年は通過点」と認識してらっしゃいましたが(参照:ALI PROJECT「卑弥呼外伝」インタビュー)、その後、2種類のベスト盤のリリースを経て、改めて何か感じたことはありますか?

片倉 「卑弥呼外伝」のときも言いましたけど、僕はあの胸苦しさを経験して「この歳になって悩んだりとかするんだな」って(笑)。で、初心に戻るって話したじゃないですか。

──そして、余計に曲が書きたくなったと。

片倉 その感情が、ベスト盤を出してより強くなりましたね。おもはゆいんですけど、ものすごく新鮮な気持ちになっていて。だから今、いらない譜面とか、パソコンの中にある昔のデータとかバンバン捨ててるの。そうやってちょっと身ぎれいにしたら頭の中もクリアになってきた感じがしてるので、まだまだ書けそうかなって言うか、書きます。

宝野 やっぱりこういうきれいなパッケージで形になるとね、何年経とうが新鮮だし、同じ気持ちでうれしいですよ。ビジュアル的にはね、和服も着たし、ドレスも着たし、軍服も着たし、じゃあ次は何かなって。やっぱり、もっと妖怪的なやつをやりたいなとか思いますね。

──妖怪ですか。

片倉 もう付いていけないんだけど(笑)。

宝野 もうさんざんやり尽くしてる気がするけど、昔の歌を聴いたり印刷物にして歌詞を見返したりすると、まだ使ってない言葉があるし、まだなってないものあるって気付いたりもするんですよ。だから、まだまだ続いていきますよ。

ALI PROJECT
ALI PROJECT
「愛と誠~YAMATO & LOVE×××」
2017年9月27日発売 / FlyingDog
ALI PROJECT「愛と誠~YAMATO & LOVE×××」初回限定盤

初回限定盤
[CD2枚組+Blu-ray]
4860円 / VTZL-133

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ALI PROJECT「愛と誠~YAMATO & LOVE×××」通常盤

通常盤 [CD2枚組]
4104円 / VTCL-60455~6

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DISC 1「YAMATO」
  1. 愛と誠
  2. 勇侠青春謳
  3. 神風
  4. 陸と海と空と
  5. 戦争と平和
  6. Valkyrja~騎士乙女
  7. 絶國TEMPEST
  8. 少女殉血
  9. 青嵐血風録
  10. 隼の白バラ
  11. 花と龍
  12. KING KNIGHT
  13. 永久戒厳令
  14. 見ぬ友へ
  15. この國の向こうに
  16. 鎮魂頌
DISC 2「LOVE×××」
  1. 胡蝶夢心中
  2. 遊月恋歌
  3. BAR酔芙蓉へどうぞ
  4. 真夏の憂愁夫人
  5. 蜜薔薇庭園
  6. Rose Moon
  7. 月光夜
  8. 緋紅的牡丹
  9. RED WALTZ
  10. 薔薇娼館
  11. 修道院の廃庭にて
  12. 春葬
  13. 闇の翼ですべてをつつむ夜のためのアリア
  14. 星月夜
  15. 共月亭で逢いましょう
  16. Adieu
初回限定盤Blu-ray収録内容
  • 愛と誠(Music Clip)
ALI PROJECT ワンマンライブ
  • 2017年11月2日(木)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
    OPEN 18:15 / START 19:00
    料金:全席指定 6000円(ドリンク代別)
    一般発売:2017年10月7日(土)
ALI PROJECT(アリプロジェクト)
ボーカルと作詞を務める宝野アリカと、作・編曲を担当する片倉三起也からなるユニット。1992年7月にALI PROJECTに改名しシングル「恋せよ乙女 -Love story of ZIPANG-」でメジャーデビューを果たす。官能的で妖艶なゴシック&ロリータの世界観と文学的な歌詞、現代音楽の影響も見られるサウンドで独自の音楽を追求し、コンスタントに作品を発表し続けている。ライブも精力的に行っており、「月光ソワレ」シリーズではオーケストラをバックに従えた幻想的なステージパフォーマンスが好評を博している。2017年3月には、独自のコンセプト“大和ロック”を追求したデビュー25周年記念シングル「卑弥呼外伝」、6月にはベストアルバム「血と蜜~Anthology of Gothic Lolita & Horror」を発表。さらに9月には“大和ソング”と呼ばれる独自の世界観を持った楽曲とバラードの2軸でまとめたベストアルバム「愛と誠~YAMATO & LOVE×××」をリリースした。11月には東京・Zepp DiverCity TOKYOにて単独公演を行う。