今年7月にデビュー25周年を迎えるALI PROJECTが、25周年プロジェクトの第1弾としてアニバーサリーシングル「卑弥呼外伝」をリリースした。
「卑弥呼外伝」はアリプロワールド全開とも言える、オペラを思わせる壮大かつ荘厳なサウンドが7分3秒にわたり響き渡る大作。コーラスにはJAM Projectが参加し、夢の“PROJECT”コラボが実現した。音楽ナタリーでは、宝野アリカ(Vo)と、片倉三起也(Key)に、この曲が生まれた背景や、25周年を迎える現在の気持ちを聞いた。
取材・文 / 須藤輝
ブレなく25年
──今年はALI PROJECTのデビュー25周年ということで、今こうして25周年プロジェクトが動き出しています。が、お二人自身はこの25周年を重要な節目と位置付けてらっしゃるのか、あるいは1つの通過点に過ぎないとお考えなのか、どちらですか?
宝野アリカ(Vo) まあ、後者ですよね。
片倉三起也(Key) もちろん、アニバーサリーということで僕ら2人も盛り上がってはいたんだけど、ここでひと区切りというよりは、やっぱりこの先のことを考えてますね。
──この25年間、お二人の活動にほぼブレがないというのもすごい。
宝野 だって、ほかにやることないんだもん(笑)。まあ、それがイコール「やりたいこと」なんでしょうけど。
片倉 やりたいことだけをやり続けてきたっていうのはあるんで。
──その「やりたいこと」がはっきりしているというか、お二人がデビューした当時の1992年は、例えば渋谷系が流行ったりしていましたが……。
片倉 まさにそうなんですよ、オザケン(小沢健二)さんとかね(笑)。
──初めからそういった潮流とはまったく別の場所にいらっしゃいましたよね。
宝野 でもね、デビュー当時はドリカム(DREAMS COME TRUE)全盛の頃で、彼女たちが音楽シーンの中心みたいな感じだったから、アリプロも「ちょっと暗めのドリカム」ということで売り出しましょうと。
──ははは(笑)。
片倉 当時の所属レーベルの意向もあってね。でも、いくら僕が明るい曲を書いてもね、歌うのはこの人だから。
宝野 当時は明るい曲が嫌いだったし(笑)。だからそういう葛藤もありつつ、ちょっとは迎合しながらやってきましたけど、やっぱりうまくいかなかったですね。でも、あのときうまくいかなかったからこそ今があるような気もする。
アクが強くないとつまらない
片倉 そう。「売れない」って、いい面もあるんですよ。最初から売れてたら、もうやめてたかもしれないよね。ただね、アリプロは「変わらないね」って言われることも多いし、実際、僕らも変わってないと思うんだけど、進化もしているつもりなんですよ。要は、大きく変わっていくことだけが進化ではないというか、変わらずに進化することもある。
──例えば、直近のアルバム「A級戒厳令」(2016年8月発売)収録の「女化生舞楽図」ではルンバをやられていたり。
宝野 そうそう。
片倉 やっぱり飽きちゃうんだよね、同じことばかりやってると。
──そうした音楽的な引き出しの豊富さもアリプロの魅力ではないかと。
片倉 アリプロの音楽にはいくつかの骨子があるんですね。例えばゴシック&ロリータとか、わりと右寄りの音楽とか(笑)。
──いわゆる“大和ソング”ですね。
片倉 あとはクラシックだったり、エスニックな音楽だったり。長い間活動してきた中で、そのつど取り入れたい要素をどんどん集約していくうちに、自分たちのジャンルができてきたような感覚ですね。
宝野 うん。いろんなことやりたくなっちゃうのよね。
──そうやっていろんなことをやっても最終的に「ALI PROJECTの音楽」としか言いようがないものに仕上がっている。言葉は悪いですが、そのアクの強さもお二人のブレなさにつながっている気がします。
宝野 あははは(笑)。そうですね。アクが強くないと、やっててもつまらないですよね。
今この国で、私たちはどう生くべきか?
──では、25周年記念シングル「卑弥呼外伝」についてお聞きします。まず、なぜ「卑弥呼」をモチーフに?
宝野 昔から卑弥呼をテーマにしたいなとは思っていたんです。で、今回は記念シングルということで長い曲になるというのはあらかじめわかっていて、事実7分の曲になったんですけど、その長い曲に見合う歌詞をどうしたらいいか。それを考えていた去年の11月に、日本武道館で開催された自衛隊の音楽祭に行ったんですよ。そこで、なんだか“日本の心”を感じて、このシングルで日本の最初の女王様である卑弥呼を扱ったら、また新たな大和ソングが生まれるんじゃないかって。あと、今回はJAM Projectさんのコーラスが入ることも決まっていたので、そういう雄大さにも合うと思って「よし、卑弥呼で行こう」と武道館で決めました。
──以前、アルバム「汎新日本主義」(2010年)のリリースが発表された際に、仮の曲名で「卑弥呼」というのが一瞬出回りましたよね。それを、7年越しで回収されたのかなとも思ったのですが。
宝野 そう、「汎新日本主義」でも日本の女王様のことを歌いたいなって思ったんですよ。ただ、そのときは「卑弥呼」という言葉は出さずに、そのイメージだけを「絶國TEMPEST」という曲に落とし込んだんです。で、「卑弥呼」という言葉を使いたいと思ったのが今回ですね。そして、私が卑弥呼として歌うのか、客観的な視点で卑弥呼について歌うのか。いろいろ悩んで卑弥呼に関する本もたくさん読んだんですけど、前者は「絶國TEMPEST」のときに似たようなことをやってますし。この曲は卑弥呼に恋い焦がれる立場で、遠い昔に生きた卑弥呼を思いながら「あなたの末裔として私たちは今この国に生きています」みたいなアプローチで書きました。だから一応、大和ソングなわけですよ。
片倉 女性の応援歌みたいなところもあるよね。
宝野 そうそう。でも、あまりにも曲が雄大だったので、前面には出していないんですけど。私たちは今この時代、この国で「さあ、どうする?」みたいなことを、卑弥呼を通して語れたらいいなと。
──曲調も相まって、聴き手が鼓舞される、強い歌だなと感じました。
宝野 強さは必要ですよ、今の日本に(笑)。
次のページ »
JAM Projectのコーラスに、宝野アリカの歌が負けちゃう?
- ALI PROJECT「卑弥呼外伝」
- 2017年3月29日発売 / Lantis
-
[CD+Blu-ray]
2376円 / LACM-14581 -
[CD+DVD]
1944円 / LACM-14582
- CD収録曲
-
- 卑弥呼外伝
[作詞:宝野アリカ / 作・編曲:片倉三起也 / コーラス:JAM Project] - 卑弥呼外伝(off vocal)
- 卑弥呼外伝
- Blu-ray / DVD収録内容
-
- 卑弥呼外伝 Music Clip
- 卑弥呼外伝 -Shooting in Hawaii-
- ALI PROJECT「25周年記念ベストアルバム(タイトル未定)」
- 2017年6月21日発売 / Lantis
-
[2CD+Blu-ray]
4860円 / LACA-9514~5
- ALI PROJECT TOUR 2017 "GOTHIC Lolita & Horror" ver.(仮)
-
- 2017年6月25日(日)千葉県 舞浜アンフィシアター
- 2017年7月13日(木)愛知県 DIAMOND HALL
- 2017年7月14日(金)大阪府 なんばHatch
- ALI PROJECT(アリプロジェクト)
- ボーカルと作詞を務める宝野アリカと、作・編曲を担当する片倉三起也からなるユニット。1985年より蟻プロジェクトとして活動を始め、1992年7月にALI PROJECTに改名しシングル「恋せよ乙女 -Love story of ZIPANG-」でメジャーデビューを果たす。官能的で妖艶なゴシック&ロリータの世界観と文学的な歌詞、現代音楽の影響も見られるサウンドで独自の音楽を追求し、コンスタントに作品を発表し続けている。ライブも精力的に行っており、「月光ソワレ」シリーズではオーケストラをバックに従えた幻想的なステージパフォーマンスが好評を博している。2017年3月には、独自のコンセプト“大和ロック”を追求したデビュー25周年記念シングル「卑弥呼外伝」を発表。6月にはベストアルバム(タイトル未定)をリリースし、その後は千葉、名古屋、大阪の3都市を回るライブツアー「ALI PROJECT TOUR 2017 “GOTHIC Lolita & Horror” ver.(仮)」を行う。