SWAYが語る「ブラックパンサー」|魅力的すぎるヴィランに憧れて

マーベル・スタジオの最新作「ブラックパンサー」が3月1日に公開される。「クリード チャンプを継ぐ男」のライアン・クーグラーが監督したこの映画は、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)史上初めて黒人ヒーローを主人公としたアクション大作。劇中の音楽や、映画にインスパイアされたアルバム「ブラックパンサー ザ・アルバム」は、グラミー賞5冠のラッパー、ケンドリック・ラマーとアンソニー“トップ・ドッグ”ティフィスが全面プロデュースを手がけた。

ナタリーでは本作の公開を記念し、ジャンルをまたいだ特集を展開する。映画ナタリーには、DOBERMAN INFINITYやHONEST BOYZ®としても活動し、「HiGH&LOW」シリーズなどで俳優業もこなすラッパー・SWAYが登場。マーベルファンであり、“豹”をモチーフにした楽曲も発表している彼に、本作の感想やケンドリック・ラマーへの思い入れについて聞いた。本作のヴィランであるエリック・キルモンガーに影響を受け、同じアクセサリーまで作ってしまったというSWAYの熱いトークをお見逃しなく。

取材 / 宮崎敬太 文 / 浅見みなほ 撮影 / cherry chill will.

僕の考え方が古すぎた、と思わされた

──今回SWAYさんにご登場いただいた理由としては、ヒップホップつながりやマーベル好きであることはもちろん、ブラックパンサーと同じ“豹”をモチーフにした楽曲を発表されていたということもありまして。

あっ、なるほど! HONEST BOYZ®の「要!」ですね! ははは(笑)。

──歌詞の中で「豹」を連呼していたり、ライブ中に豹の映像を映し出したりしていたのが印象的だったので(参照:神に感謝しろよ?「HiGH&LOW」ライブでHONEST BOYZが「要!」初披露)。

SWAY

あれは、もともとHONEST BOYZ®のリーダーでもあるNAOTOさんが「HiGH&LOW」に出ることになったので、僕らで挿入歌を作ろうと言ってできた曲です。NAOTOさん演じるジェシーが豹柄の服を着てるってことで、豹がテーマの1つになって。まずトラックだけがある状況で、僕とVERBALさんでいろんなフレーズを当てはめて歌詞を考えていたんです。僕が「わかりやすくYO!ってどうですか?」「でもNAOTOさん、豹柄着ますよね。最後だけ豹にします?」って言って、本当にノリで決まりました(笑)。最後だけ「実はこの柄が好き、豹豹豹豹豹豹豹!」って言ってます。

──貴重なお話ありがとうございます。では本題に移りまして、SWAYさんはもともとマーベル映画がお好きだと伺いました。

マーベル映画、大好きです! 基本的にマーベルっていうハンコが付いているだけで、優先的に観に行きますね。特にデッドプールと、この(マーベル・シネマティック・)ユニバースの中ではキャプテン・アメリカが好きで。「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」も観たんですが、実はああいうメインキャラクターがたくさん出てくる映画より、1人が主人公になっている物語のほうが好みなんです。だからこの「ブラックパンサー」はめちゃめちゃ楽しかったですね。こういう黒人のカルチャーやアイデンティティが詰まったマーベル映画は、これまでなかったと思いますし。あとNBAのオールスターで「ブラックパンサー」が取り上げられていたり、その中のダンクコンテストにブラックパンサーのマスクをかぶって出場した選手がいたりしたんです。黒人の方たちがこの作品をフックアップして、映画という枠を超えてみんなで盛り上げようとしている感じがしていますね。

──海外では文化的なお祭りのような雰囲気になっていますよね。

それと、現代と軸の部分でつながっているところがあって。要は、限りある資源を自分たちだけのものにしていいのかっていう話じゃないですか。

「ブラックパンサー」より。左からマイケル・B・ジョーダン演じるエリック・キルモンガー、チャドウィック・ボーズマン演じるティ・チャラ。

──ヴィブラニウムという鉱石を世界から隠してきたワカンダ王家を継ぐ主人公ティ・チャラと、それを奪い、秘密を暴こうとするエリック・キルモンガーの対立が描かれますからね。

どっちの意見に賛成するかによって、敵と味方の見え方も変わるのが面白かったですね。今までだったら、敵は街を破壊して人々を殺す悪いやつだったので。そういう意味で「ブラックパンサー」には考えさせられる部分が多かったです。ライアン・クーグラー監督は僕と同い歳なんですが、そんな人がこんなにすごい脚本と映像を作ったのか!と思いました(笑)。

──同じヒップホップ好きでもありますし、同世代感のような、監督の感性に共感できる部分はありましたか?

「ブラックパンサー」より。左からチャドウィック・ボーズマン演じるティ・チャラ、マイケル・B・ジョーダン演じるエリック・キルモンガー。

共感というより、僕の考え方が古すぎたと思わされましたね。主人公はこうじゃなきゃいけない、敵はこうじゃなきゃいけないっていう概念を覆されたというか。最初にキルモンガーが出てきたとき、敵だと思いませんでしたから。博物館で「これは何々で……」って説明してるカッコいいやつが出てきたと思ったら、「まさかこの人、敵なの!? めっちゃおしゃれ!」みたいな(笑)。敵をあんなにカッコよく登場させていいのかなって思いましたもん!

キルモンガーに影響を受けて、同じグリルを作った

──キルモンガーには、登場シーンから心をつかまれますよね。

こんなにイケてる敵で大丈夫!? 人気的にも、勝てる!?みたいな(笑)。ティ・チャラとの決闘シーンでも、正直キルモンガーにも負けてほしくないと思いながら観てました。

──映画を観ると、キルモンガーのファンになる人も多いようです。

「ブラックパンサー」より、マイケル・B・ジョーダン演じるエリック・キルモンガー。

いやあ、僕もキルモンガーの大ファンになりましたね! 演じているマイケル・B・ジョーダンがあまりにもイケメンすぎて……。彼が映画の中で、グリルっていう歯に着けるアクセサリーを下の八重歯2本にしているんですよ。僕、キルモンガースタイルに影響を受けて、同じものを作りました。「これ、絶対作ろう」と思いながら映画を観ていて、終わったら即、知り合いのアクセサリー屋さんに頼んだんです(笑)。もうまもなく完成して、届くと思います。

──かなり熱心なファンぶりですね。見た目もカッコいいキルモンガーですが、ほかにどんな部分に心惹かれましたか?

やっぱり悪役に思えないんですよね。実は被害者でもあるし、ヴィブラニウムを奪って世界征服をしようとしてるだけではなく、もっと深い考えもあって。その主張も正しいと思うんです。ただ、最後にはやっぱり、チャドウィック・ボーズマン演じるティ・チャラがカッコいいなと思いました。僕、映画が終わったら即マイケル・B・ジョーダンとチャドウィック・ボーズマンをInstagramでフォローしたんです(笑)。影響受けすぎですよね、ははは!

──ブラックパンサー / ティ・チャラにはどんな印象を抱きましたか?

「ブラックパンサー」より、チャドウィック・ボーズマン演じるティ・チャラ(手前)。

今までのマーベル映画は、弱い者が強くなるシリーズが多かったと思うんですよ。スパイダーマンはいじめられっ子だし、キャプテン・アメリカも改造される前は弱かったし。でもこの映画は、強い者がブラックパンサーになれるっていう部分で新しさがあると思いました。ただティ・チャラ自身に強いイメージはなくて、優しすぎるのが彼の弱さでもあり、よさでもある。王の座を継ぐための戦いもパーフェクトな試合ではなかったですよね。今回の物語に込められたメッセージは、戦ってお互いの意見を殺し合うんじゃなくて、ぶつかり合って和解すべきということなのかなって。誰がいい、悪いではなくて、みんながそれぞれ正しいことを言っているから、最終的に理解し合ってよりよい国にしていくべきだ、みたいな。もちろんヒーローものだから現実離れしたアクションシーンもあったんですけど、伝えたいメッセージは今の自分たちの生活とかけ離れていないのかなって。

──実際に本作は、アメリカでの公開4日間の興行収入が歴代3位を記録していて。こんなに文化的な内容でそれほど話題になるのには、トランプ政権下のアメリカの状況も関係しているのかなと思います。

最近アメリカの友達からも、ホームレスが増えたっていう話を聞いたりして。それを外国にいる僕らに教えてくれるなんて、それだけ深刻なことなんだろうなと思います。子供たちが純粋に「ヒーローになりたい!」と思うような映画も多いですが、今回はそれだけじゃない気がしますよね。大きい何かを伝えるためのツールになっているというか。

「ブラックパンサー」
2018年3月1日(木)全国公開
「ブラックパンサー」
ストーリー

アフリカの秘境・超文明国家ワカンダには、ある秘密があった。それは、世界を滅ぼしてしまうほどのパワーを秘めた希少鉱石“ヴィブラニウム”の産出地であるということ。歴代のワカンダ王は、この鉱石が悪の手に渡らないよう秘密を厳守するとともに、鉱石を研究し最先端のテクノロジーを生み出していた。父を亡くした若き国王ティ・チャラは、儀式を経て国を守るヒーロー“ブラックパンサー”に即位する。しかしまだその心構えを持てず、かつての婚約者ナキアへの思いも断ち切れないティ・チャラは葛藤していた。その頃、ワカンダを狙う謎の男エリック・キルモンガーと、武器商人のユリシーズ・クロウが手を組み、大英博物館にあったヴィブラニウム製の武器を盗み出し……。

スタッフ / キャスト

監督:ライアン・クーグラー

脚本:ライアン・クーグラー、ジョン・ロバート・コール

出演:チャドウィック・ボーズマン、マイケル・B・ジョーダン、ルピタ・ニョンゴ、ダナイ・グリラ、マーティン・フリーマン、ダニエル・カルーヤ、レティーシャ・ライト、ウィンストン・デューク、アンジェラ・バセット、フォレスト・ウィテカー、アンディ・サーキスほか

DOBERMAN INFINITY「OFF ROAD」
2018年4月18日(水)発売 / LDH MUSIC
DOBERMAN INFINITY「OFF ROAD」

初回限定盤 [CD+DVD]
4536円 / XNLD-10014/B

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DOBERMAN INFINITY「OFF ROAD」

通常盤 [CD]
3218円 / XNLD-10015

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SWAY(スウェイ)
SWAY
1986年6月9日生まれ、北海道出身。2014年に結成されたDOBERMAN INFINITYでMCを担当するほか、HONEST BOYZ®や「HiGH&LOW」シリーズから生まれたMIGHTY WARRIORSとしても活動中。ソロとしても多くのビッグアーティストの楽曲に客演参加し、2017年11月にDef Jam Recordingsよりソロデビューシングル「MANZANA」をリリースした。劇団EXILEメンバーの野替愁平名義で俳優業もこなしており、「ホットロード」やドラマ「ワイルド・ヒーローズ」、「HiGH&LOW」シリーズなどに出演した。2018年4月18日には、DOBERMAN INFINITYの3rdアルバム「OFF ROAD」が発売される。

2018年3月6日更新