コミックナタリー Power Push - 「シティーハンター XYZ Edition」

獠がプロポーズ!? 幻のエピソードがアニメ化 小室×北条「Get Wild」語る対談もお蔵出し!

神風動画スタッフインタビュー

「新しいアニメ」ではなく目指したのは「マンガの映像化」

──神風動画さんといえば「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」のオープニング(OP)や挿入ムービー、アニメ「ジョジョの奇妙な冒険」「ガッチャマン クラウズ」のOP制作など、ここ数年さまざまな話題作の映像を手がけていますね。

水崎淳平代表

水崎淳平 法人化して13年目になりますが、名前を知ってもらうようになったのは最近かもしれませんね。OPだけではありますが、今までやってこなかったTVアニメのお仕事をするようになったのが大きかったかなと。僕らはずっとミュージックビデオ(MV)やゲームのOP、テレビCMなどを手がけてきた。普通のアニメスタジオが副業でやっていたようなことをメインの仕事にしてきた会社なんです。

──もともとアニメーションというより映像がお好きだったんでしょうか?

水崎 そうですね。大学生の頃にケンイシイさんの「EXTRA」ってアニメーションを使ったMVを見たんです。元STUDIO4℃の森本晃司さんが手がけた作品なんですが、すごくオシャレでカッコよくて、アニメーションに対する印象がガラッと変わった。「これは世界に売れるブランドだぞ」って。そこから見よう見まね、独学でアニメのようなものを作るようになりました。

──そんな神風動画さんが「シティーハンター」の新作映像を手がけたわけですが。

制作段階のアニメより。

水崎 「シティーハンター」は、そもそも従来のアニメーションとは違ったものに挑戦したいということでオファーをいただいたんですね。TVシリーズの進化版をやるなら、サンライズさんがやるべきですし。いわゆる一般的なアニメではなく、「モーションコミック(マンガに着色し、声を入れた映像コンテンツ)の進化形として何ができるか」というのが出発点になりました。

──たしかに新作アニメではなく「モーショングラフィックアニメーション」という名称を使用されていますね。

水崎 はい。そもそも、原作者の北条先生が「マンガというのは映像の絵コンテである」という考え方を持ってらっしゃって。だから「獠のプロポーズ」にしても、先生の中にはすでに映像ができあがっていて、それをコンテにしたのが原作マンガなんだろうと。

先名美帆 だから、今回は映像化にあたって原作マンガをそのままコンテにしています。そういう大きな方針や手法を水崎が決めて、監督の私が詳細を詰めていった形です。

キャラクターの動きに個性を出せるモーションキャプチャー

──映像も通常のアニメーションとは違った手法で作られているそうですね。

モーションキャプチャーから作られた3DCG。

水崎 実際の人間の動きをデータにして3DCGにする、モーションキャプチャーという手法を使っています。先に声優さんに声を入れていただいて、それに合わせて動きをつけました。お話をいただいてしばらく、どういう手法で作ろうか悩んだんです。新宿の雑踏を実写で撮ってロトスコープ(実写映像をトレースしてアニメ映像を作る手法)しようかとか。でも、実際に新宿に行ってカメラを構えると、歩いている人がカメラを見て避けてしまったりする。カメラも固定にせざるを得なくて、群衆のなかを進むような画も撮れない。また実写のロトスコープだと、後から構図を変えたり、人物を足したり引いたりもできない。だったらモーションキャプチャーで自由に絵作りをして、それをロトスコープしようと。

──アニメーションの世界では、モーションキャプチャーやロトスコープはまだ珍しい手法ですよね。そもそもなぜ起用を?

モーションキャプチャーの準備をする様子。

水崎 「ウィッシュルーム 天使の記憶」というゲームの映像を担当したときにロトスコープを使ったのですが、その画作りが好きだったんです。このときはゲームでしたが、映像の世界で使ってみたいというのがずっと頭の片隅にあった。今回「新しい映像作品を」と考えたときにそれがピタッとハマったんです。

──アニメーションでモーションキャプチャーを使うメリットというのは、どういう点にあるのでしょう?

水崎 日本の普通のアニメーションは1カットごとに1人のアニメーターが担当しているんですね。だから、1人のキャラクターを複数のアニメーターが描いている。でもディズニーなんかは、1キャラクターを1人のアニメーターが担当する形を取っていて。モーションキャプチャーはディズニーの形に近くて、各キャラクターを担当する役者の演じたものをベースにしています。なので、同じような動きでも、冴羽獠なら冴羽獠、香なら香で、演じた人のクセが出る。最終的にどの程度映像に反映されたかはわかりませんが、1人のキャラクターとしての個性が出やすいのが面白いところですね。

北条司「シティーハンター XYZ edition」全12巻発売中 / 各1728円 / 徳間書店
1巻
2巻<
3巻<
4巻
5巻<
6巻<
7巻
8巻<
9巻<
10巻
11巻<
12巻<
北条司(ホウジョウツカサ)

北条司

1959年福岡生まれ。1980年、週刊少年ジャンプ(集英社)にて読み切り「おれは男だ!」でデビュー。代表作に3人組の女怪盗を描いた「キャッツ♥アイ」、新宿で生きるスイーパー・冴羽獠を主役にした「シティーハンター」など。「シティーハンター」の世界をベースにしたパラレルワールド作品「エンジェル・ハート」を2001年より開始。同作は「エンジェル・ハート 2ndシーズン」のタイトルで、現在も月刊コミックゼノンにて連載中。

©北条司/NSP 1985