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老舗少女誌・ウィングスがリニューアル!初登場の売野機子が、新連載に込めた思いとは

1982年に創刊され、30年以上の歴史を持つ新書館の少女マンガ誌・ウィングス。本日4月28日に発売された6月号にて、デザインを一新しリニューアルを果たした。また「MAMA」「薔薇だって書けるよ」の売野機子や、「こどものじかん」「少年三白眼」シリーズなどの私屋カヲルが新たに執筆陣にラインナップし、新しい風を吹き込む。

コミックナタリーではこれを記念し、表紙と巻頭カラーを飾った売野機子にインタビューを敢行。ウィングスでの新作「かんぺきな街」についてや、これまでの経歴についてたっぷりと語ってもらった。

取材・文/岸野恵加

 
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売野機子インタビュー

マンガの息抜きに別のマンガを描く

──売野先生はウィングスに初登場ということで、新作についてはもちろんですが、マンガ家デビュー以前のことも細かく伺っていければと思っています。もともとは会社員をされていたんですよね。

はい、休憩時間にマンガを描いてました。

──その頃はどんな作品を描いていたのか、お聞きしても?

普通の同人誌ですよ。とあるアニメの二次創作をしていました。台風で友達の家に閉じ込められたときに観たらあっさりハマって。ネットで面白いSS(ショートストーリー、主にネット上に掲載されるものを指す)を探してたんですけど、あんまり出会えず、だったら自分が描くしかないなって。自家発電です。

──それまでマンガを描いたことは1度もなかった?

なかったですね。始めてからは楽しくなっちゃって、毎月100ページくらい描いてました。コミケも毎回出て、楽しすぎて会社を辞めちゃった。

売野のデビュー作「薔薇だって書けるよ」が掲載された楽園 Le Paradis [ル パラディ]第1号。

──それからどうして、オリジナルを描こうと思ったんですか。

酔っ払ったときに同人の友達と約束しちゃって。それで「晴田の犯行」という作品を描いてコミティアに出たんですが、そこで楽園(Le Paradis [ル パラディ]、白泉社)の編集長に声を掛けていただいてデビューが決まりました。

──オリジナル1作目で即デビューということですよね。

そうです、本当にありがたいことで。でも当時のノートを見返すと、デビュー決まってからも二次創作のネームばっかりで、たまに商業用のがちょっとあるくらいで。まだ同人をバリバリやるつもりだった形跡が残っていました(笑)。

──(笑)「商業作家としてしっかりやっていこう」と決意したのはいつ頃?

いつだろうなあ。同人でやっていた当時は、自分の身の丈に合わないくらいうれしい感想をたくさんいただいてたので調子に乗ってて。商業デビューとか、あんまり自分の中では重要なことじゃなかったんです。でも描いた作品が載った掲載誌を見ると、自分だけすごい下手くそで。「これは大変なことになったかもしれない。がんばらなきゃ」って思いました。それは今でも変わらず思ってますけどね。

──デビューからもうすぐ6年が経とうとしていますが、マンガに向き合う姿勢は変化しましたか。

……自分ではよくわからないですね。マンガを描くのは相変わらず大好きで、楽しいです。だけど毎日毎日、つらいな、もうやめたいな、とも思う。そういうときはマンガの息抜きをしようと思って別のマンガを描いてたり。そうして走り続けないと、自分の性格上、止まっちゃったらもう一生描かなくなると思うんです。

「どういう作家に影響を受けたか」って聞かれるの、傷つきます

──売野先生の作品の魅力のひとつとして、セリフやモノローグの、リズム感や言葉のチョイスが絶妙なところがあると思うんです。どういう作家さんや作品が、ご自身の栄養となっていると思いますか?

「かんぺきな街」より。

すいません。そういう質問、聞かれるのがこれで50回目くらいなんですけど……。毎回すごく、傷つくんです。

──気分を害されたなら申し訳ないです。しかし、傷つくというのはどうしてでしょうか?

うーん……。小学生の頃くらいから、文章を書いたら「もっと普通に書いていい」と怒られたり、朗読しても「感情を込めなくていい」と先生に言われたり、自分の言葉が人を傷つけやすかったり、他人と言葉がズレていてつらい思いをすることが多かったんです。それがマンガを描きはじめたら褒められるようになって、「自分のダメだったところが生かせることがあるんだ」ってうれしかったんですね。なのに「それはどんな作品の影響なんですか?」って言われてしまうと、他人の手柄みたいでなんだか傷ついてしまう。だからもし言葉の遣い方を褒めていただけるんだとしたら、それは生まれつきと思っていただけるとうれしいです。

──なるほど。では自分の中では「この作家さんに特に影響を受けた」っていう方は特にいないと。

「24年組に影響を受けてるでしょ?」とか、よく言われるんですけど、特に明確に影響を受けた作家さんや作品はわからないです。そのときそのときで面白いマンガを読んできただけなので。私、本当にマンガ大好きで、たぶんみなさんが思ってるよりたくさんマンガを読んでるんですよ。

──全ジャンルまんべんなくですか?

少年マンガ以外は。少年マンガだけはなぜか、読んでも何が起きてるのかわからなくて……。たぶん生まれつき、少年マンガを読む脳の一部が欠けてるんだと思います。

──(笑)。

デビュー単行本「薔薇だって書けるよ 売野機子作品集」の帯には、上條淳士がコメントを寄せた。

実家の隣が貸本屋だったので、子供の頃はほぼ毎日入り浸ってました。3畳くらいしかない狭いお店だったけど、いろんなジャンルの最新マンガが揃ってた。折原みとさんとか、よく読んでましたね。あとは親が持ってた上條(淳士)先生のマンガや、YOUNG YOU(集英社)、Kiss(講談社)も、隠してたけど探しだして夢中になって読みました。アニメも好きでしたけど、親が厳しくて見せてもらえなかったんです。「(新世紀)エヴァンゲリオン」のアスカの絵を落描きしてるのを家庭教師に見られて「エヴァ好きなの?」って聞かれたんだけど、「観たことないんです……」っていう可哀想な返事をしたこともありました。

──あはは(笑)。

そしたら家庭教師の先生が、毎週テストで100点取ればその週の「エヴァ」を録ったVHSをこっそりくれるっていう計らいをしてくれて。成績がグングン伸びた(笑)。自分の絵はどちらかというと、マンガよりもアニメに影響を受けていると思います。でも中1のときを境に、マンガやアニメにまったく触れなくなっちゃった。母が私のマンガを燃やしはじめて。

──焚書を。

ええ、オタクになられるのが気持ち悪かったみたい。それで無気力になって、マンガもアニメも思春期の頃はまったく見なかったんです。

「ウィングス」6月号/ 2015年4月28日発売 / 724円 / 新書館
ラインナップ
  • 売野機子「かんぺきな街」
  • 尚月地「艶漢」
  • 私屋カヲル「猫とごはんと装丁家」
  • 松本花(原案:毛利亘宏[劇団「少年社中」]、原作:井原西鶴)「贋作・好色一代男」
  • チノク「一炊の三馬鹿」 
  • 荒川弘「百姓貴族」
  • 篠原烏童「ファサード カリカチュア」
  • 碧也ぴんく「天下一!! 番外篇・君と我とは」
  • なるしまゆり「少年魔法士」
  • 草間さかえ「魔法のつかいかた」
  • りさり「子はかすがい」
  • 獸木野生「〈PALMシリーズ〉TASK」
  • 箱知子「ブレーメンの音楽隊」
  • 池田乾「戦う! セバスチャン♯」
  • 池田乾「少年セバスチャンの執事修行」
  • 金色スイス「佐藤君の柔軟生活」
  • 御手洗直子「31歳ゲームプログラマーが婚活するとこうなる」
  • 街子マドカ「かわうそは僕の嫁」
  • カラスヤサトシ「VS孫子」
  • ミキマキ「少年よ耽美を描け」
  • 花園あずき(原案・キャラクターデザイン:ぼへ 協力:CROWN WORKS)「魔法☆中年 おじまじょ5」
  • 堀江蟹子「ご先祖様とアタシ」
  • 西谷ミツマル「ド真ん中ストレート!」
  • 菅野彰 (カット:南野ましろ)「帰ってきた海馬が耳から駆けてゆく」
特別付録

尚月地「艶漢」描き下ろしタトゥーシール

売野機子(ウリノキコ)
売野機子

1985年9月9日生まれ。O型乙女座。2009年に楽園 Le Paradis [ル パラディ](白泉社)に掲載された「薔薇だって書けるよ」でデビューを果たす。楽園 Le Paradis [ル パラディ](白泉社)、フィール・ヤング(祥伝社)、BE・LOVE(講談社)などさまざまな雑誌で執筆し、現在は月刊コミック@バンチ(新潮社)にて「MAMA」を連載中。「かんぺきな街」でウィングス(新書館)初登場。ほか著作に「薔薇だって書けるよー売野機子作品集ー」「同窓生代行ー売野機子作品集2ー」「しあわせになりたいー売野機子作品集3ー」「ロンリープラネット」など。