「賭ケグルイ」|勝ち負けだけではない、緊張感が楽しい!河本ほむら(原作)×小沢一敬(スピードワゴン)×林祐一郎(監督)が“ギャンブル”トーク

「ギャンブルの心理戦」はアニメに向いている?

河本 小沢さんはかなりのゲーム好きとお見受けしますが、ギャンブル……賭け事も好きですか? 僕はこんなマンガを作ってはいるんですけど(笑)、ギャンブル自体はやらないんですよね。

小沢一敬

小沢 マンガ関係の人でホントにギャンブルにハマってるのって、蛭子(能収)さん以外いないんじゃないですか?(笑) けっこう誤解されてるなと思うんですけど、僕は麻雀は得意だしゲームは好きだけど、賭け事自体はあまり好きではないんですよ。

 実は僕もギャンブルはやらないんです。ゲーム的なところだと、以前監督を担当したアニメ「牙狼-GARO-」がパチンコになったのでスタッフと一緒に行ってみたくらいですかね。「賭ケグルイ」のメインスタッフの中にもギャンブルにハマっている人はあまりいないです。

小沢 逆にギャンブルにハマってたら、これだけの作り込まれた作品はできないと思う。ギャンブルが好きな人は、「負けることも面白い」と言いますよね。俺は負けたことがないからその感覚はわからないけど。

河本 おお(笑)。

小沢 僕、「勝ち負け」に関してはなんとも思ってなくて。もともと雀荘で働いてたことがあるんですけど、長いスパンでやっていくと、勝つ日もあるし負ける日もある。だから「負けた!」っていう日があっても、その日で死んだら負けになるけど、「明日は勝つかもしれない」と思ってる。全部が途中だと思ってるんですよ。それは仕事でも同じ。もし仕事でスベったら、人によっては「負けた」と思うかもしれない。でも、2年後にそのスベった話をしゃべったらものすごいウケるかもしれないですよね。負けた時点で人生が終わるわけじゃないから、勝ちも負けも存在しないと思っているんです。

河本 深い……。

小沢 いやいや、浅いですよ!?

──主人公の夢子も勝ち負けにはあまりこだわっていないといいますか、「勝負の中でどれだけリスクを負うか」「刺激を得られるか」ということを重視していますよね。

主人公の夢子は、賭け事のリスクを楽しむ“賭ケグルイ”だ。

小沢 勝負の間の心理戦だったり、決着が着くまでのドキドキする過程が楽しいんですよね……勝つとか負けるとかそんな話ばっかりですけど、今日って「ギャンブルナタリー」ではないですよね?

──コミックナタリーです(笑)。そういったゲーム中の臨場感も味わえる「賭ケグルイ」は、ギャンブル好きな読者からも高く評価されています。河本さんはギャンブルシーンを描く際にどのようなことを意識していますか?

河本 原作として僕が気を付けていることは、「絶対に負けたくない」「負けたら人生を失う」という緊張感のある状況を設定することですね。演出上のことは、作画の尚村先生にすごく補っていただいています。

小沢 第5巻の「選択(チョイス)ポーカー」のエピソードは、イカサマがなくてもめちゃくちゃ緊張感がありますよね。キャラの関係性が面白くてアツい。

河本 ありがとうございます! 読者さんからの反響も非常に大きかったエピソードです。

小沢 心理戦ものの作品ってすごくアニメに向いてると思うんですよ。心の声や葛藤を、マンガだったら数行のテキストでまとめなきゃいけないけど、アニメだと実際に声でしゃべらせることができるから、うまく表現できそうだなと。

 心の声が表現できるというのは確かにそうなんですが、難しい部分もありますね。声は聴こえるけど、絵としては止まってしまっている。アニメは常に動かしていかなければならないものなので、カット割りや音楽などで演出を工夫しています。ゲーム自体の緊迫感を演出するには、とにかくカット割りやタイミングの「間」が大事。ゆるいと緊張は生まれないし、詰めすぎてもダメ。観ていて一番気持ちのいい、「ここで来てほしい!」という間でやるようにしている。声優さんの演技にも助けられています。

私立百花王学園ではギャンブルに負け、上納金が下位100位になると通称“家畜”と認定され、男はポチ、女はミケと呼ばれてしまう。

小沢 ちなみに、若いアニメーターの子たちは“ポチ”って看板を首から下げてるんですか?

 あはは(笑)。今度からミスをしたら付けるようにしますかね。アニメが終わるまでには全員が付けてたりして(笑)。

早見沙織さんが演じる夢子は「夢子そのもの」

──7月からアニメ「賭ケグルイ」のオンエアがスタートしました。第1話はいかがだったでしょうか。

小沢 面白かったです! 絵の雰囲気がマンガとほとんど同じで、「原作がそのままアニメになってるな」という感じ。

アニメ「賭ケグルイ」第1話のラストシーンより。

河本 僕は「賭ケグルイ」でネームまで書いているんですが、尚村先生に作画をしていただいてその世界が拡がって、アニメでさらに変化するのが本当に面白いです。アニメの第1話では、最後に鈴木が言う「彼女は“賭けぐるい”だ」というシーンが印象的でした。だんだんブラックアウトしていって、夢子の赤い目が残っていく演出がカッコいい。

 夢子を描いていると、どんどん興が乗ってくるんですよね(笑)。第1話の「投票じゃんけん」は、実は動きとしては地味で、「カードをめくる」というものしかない。派手なアクションで引き付けることはできない分、「どうやったら最後まで興味を持って観てもらえるだろう」ということを考えました。絵コンテの段階から工夫をしていましたが、声と音楽が付くと想定の3倍くらいハイテンションなものになってくれました。

河本ほむら

河本 僕は原作を書いているときはあまり「このキャラはこういう声で」と想定していないんですが、声のイメージは「完璧だな!」と思いました。スタッフの皆さんがキャラのイメージをしっかりわかっていただいているんだなと。特に早見沙織さんが演じている夢子は、本当に「夢子そのもの」でしたね。

小沢 マンガがアニメ化されるときに「なんか声のイメージが違うな。俺が想像してた○○はこういう声じゃないのに……」って思うことって正直あるんですよ。「賭ケグルイ」はみんな納得いきました。

 オーディションでは、キャラのイメージと声質が合っているかどうかを重視しました。1人もイメージと違う人はいないと太鼓判を押せますね。第1話の段階ではまだ出てきていないキャラも、今収録を進めていますが、すごく合っていると思います。

「賭ケグルイ双」4巻より、生徒会の広報であり学園のアイドル・夢見弖ユメミ。©Homura Kawamoto・Toru Naomura/SQUARE ENIX

河本 夢見弖(ゆめみて)ユメミの登場も今後楽しみです。どんなふうになるんだろう。噂によると、踊るという話を聞いたんですが……?

小沢 ユメミ、遊べそうなキャラだなあ。

 そうなんですよ。彼女はほかのキャラクターとやや毛色が違うし、チャレンジするゲームもテレビのバラエティ番組みたいなもので。アニメシリーズの中でも、ちょっと雰囲気の変わった回になりそうです。

──河本先生はアフレコ現場にもよく行っているとお聞きしました。

河本 アフレコの現場に行くのは人生初でした(笑)。「こんなにアツい現場があるのか……!」と息を飲むくらい、すごく白熱している。音響監督の藤田亜紀子さんの演技付けがアツいし、声優さん方も熱心にそれに応えているのを見て感動しました。

林祐一郎

 藤田さんのディレクションは素晴らしいです。そして早見さんの夢子は、聞いてて鳥肌が立つくらい、こっちの予想を超えてくる。おっとりしているところから、とにかく怖くて迫力があるところまでの、落差がすごい。他のキャストの皆さんも、想定していた演技をどんどん超えてくださっています。「声の芝居がいいので、表情をもうちょっと変えよう」ということもあるくらい。表情変化は「賭ケグルイ」という作品の中で大きな魅力の1つなので、声と合わせて楽しんでいただきたいです。

──ありがとうございます。それでは最後に、おひとりずつ「賭ケグルイ」の読者へメッセージをお願いします。

小沢 第1話を観たら、恐らく第2話も観てしまうでしょう。賭けてもいいっ!

 早見さんはじめ、声優の皆さんの声の魅力がたっぷり出たアニメになっていると思います。美少女に罵られたい人は確実に観たほうがいいです(笑)。

河本 「自分が書いた原作がこんな形になるとは……!」という驚きを毎回味わっています。アニメの「賭ケグルイ」は、マンガの「賭ケグルイ」が好きな方も、まだ触れていない方も、絶対楽しんでもらえる作品になっています!

左から小沢一敬、林祐一郎、河本ほむら。
テレビアニメ「賭ケグルイ」
テレビアニメ「賭ケグルイ」公式サイト
放送情報

MBS:毎週土曜26:38~
TOKYO MX:毎週土曜22:00~
テレビ愛知:毎週水曜27:05~
RKB毎日放送:毎週水曜26:30~
BS11:毎週日曜26:00~

配信情報

Netflix:毎週日曜配信

スタッフ

原作:河本ほむら・尚村透(掲載 月刊「ガンガンJOKER」スクウェア・エニックス刊)
監督:林祐一郎
シリーズ構成:小林靖子
キャラクターデザイン:秋田学
音楽:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
制作:MAPPA

キャスト

蛇喰夢子:早見沙織
早乙女芽亜里:田中美海
鈴井涼太:徳武竜也
皇伊月:若井友希
西洞院百合子:奈波果林
生志摩妄:伊瀬茉莉也
夢見弖ユメミ:芹澤優
豆生田楓:杉田智和
黄泉月るな:鵜殿麻由
五十嵐清華:福原綾香
桃喰綺羅莉:沢城みゆき

「賭ケグルイ」Vol.1
2017年10月13日発売 / エイベックス・ピクチャーズ
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[DVD] 6480円 / EYBA-11507

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尚村透、河本ほむら「賭ケグルイ⑦」
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小沢一敬(オザワカズヒロ)
1973年10月10日生まれで、出身地は愛知県知多市。1998年12月に井戸田潤とお笑いコンビ・スピードワゴンを結成し、テレビや舞台など多方面で活躍している。2015年に地元・愛知県知多市のふるさと観光大使と「なごやめしPR大使」に就任。著書にTwitterなどでの発言をまとめた「失恋出来るなら恋したってかまわない」がある。スピードワゴンとしては毎月最終月曜日に下北沢にて主催ライブを開催中。
林祐一郎(ハヤシユウイチロウ)
アニメ演出家、アニメーター、監督。スタジオ・ライブ所属。監督としての代表作に「牙狼〈GARO〉-炎の刻印-」「劇場版『牙狼〈GARO〉-DIVINE FLAME-』」など。
河本ほむら(カワモトホムラ)
アマチュア時代、2009年より牛乳名義でWEBマンガを新都社(にいとしゃ)にて執筆。2013年にガンガンJOKER新人漫画賞でネーム部門奨励賞を受賞し、「賭ケグルイ」でデビュー。ガンガンJOKER(スクウェア・エニックス)にて2014年4月号より連載中。司法試験合格歴あり。高校時代はバスケットボール部に所属。
尚村透(ナオムラトオル)
第9回スクウェア・エニックスマンガ大賞奨励賞受賞。2009年より「失楽園」をガンガンJOKER(スクウェア・エニックス)にて連載し、全6巻で完結。同誌にてアニメ「TARI TARI」コミカライズのネーム構成を担当したのち、2014年より「賭ケグルイ」の作画を担当。

2017年8月4日更新