コミックナタリー PowerPush -鈴木小波「ホクサイと飯さえあれば」

“作る過程”をフィーチャーした飯マンガ ヤンマガサードに移籍し復活

ひとりごとにならないようにホクサイを

──前作と今作の間では8年の月日がありますが、前と今のブンについて変えている点はありますか。

実はほぼなくて……(笑)。ああ、でも大学生のブンはさらに人見知りだと思います。前作よりもかなり不思議ちゃんというか、とっつきにくい感じになっているかなあと。

──8年経ってコミュ力がついたんですね(笑)。ブンは大学で絵を描いているけど、まだマンガを描いてはいないです。

とりあえずブンは大学を出てマンガ家になるという着地点は決まっているので、ここからだんだんと目的を見つけて成長していくことになると思います。これからマンガ家になるきっかけとか、その辺色々と描いていけたら。ちょうどヤンマガサードVol.5に掲載されるエピソードが、そのきっかけのきっかけくらいが出てくるかなあ、という感じですね。8年あれば人はいろいろ成長しますし。これから「飯さえあれば」のほうでいろんなエピソードが描ければ、前作の深みも増すんじゃないかと思います。

その場でホクサイを描いてくれた鈴木。

──この着地点が見えているからこその面白味がありますね。ホクサイのこともお聞きしたいのですが、ぬいぐるみをサブキャラクターに据えた理由はなんだったんでしょうか。

グルメマンガで1人で作ってると、セリフが全部ひとりごとになってしまうじゃないですか。説明しないといけないから。

──ええ。例えば「きのう何食べた?」では、ずっと史朗さんがしゃべっていたり。

「きのう何食べた?」はそこが魅力だと思うんですが、私はひとりごとをずっと描くのってつらくて……。なので、それを緩和するというか、読みやすくするためには、誰かツッコミ役がいたほうがいいのかなと思って、それでホクサイを登場させました。「ホクサイと飯さえあれば」というタイトルは、「大好きなぬいぐるみのホクサイと美味しいごはんさえあれば人生楽しい」という意味を込めて。余談ですけどホクサイの耳は、3本あるうちの1本がダミーです。忍者なので、1本切られても大丈夫(笑)。

盛り上がるシーンは魚眼レンズの構図で

──作画についてもお伺いしたいのですが、枠線をすべてフリーハンドで描かれているのは理由があるんでしょうか?

うーん、なんとなく……ですね(笑)。

食べ物はできるだけリアルに描かれている。湯気はマンガっぽく描くのが鈴木のこだわりだ。

──特にこだわりがあるわけではなく。

ちょっと味がある感じにしたかったんでしょうかね。あと前作ではトーンを一切使ってなかったんですけど、ごはんマンガはトーンを使ったほうが美味しそうに見えるかと思って、今回は使うようにしています。ごはんもできるだけリアルに、写真のように見えるように気を付けています。

──前作でトーンを使用していなかったのは、何か理由が?

なんとなく、です……(笑)。あ、でも、普通のマンガではない感じにしたかったんだと思います! あと「和食縛り」もそうでしたけど、縛りがあったほうが面白い表現ができるのかなと思っていて、実はもうずっと前から集中線も使わないようにしています。

──へえ、それは「飯さえあれば」以外でも?

ええ。アクションマンガでも集中線は使わないようにしています。集中線に頼ってしまうところが増えるので。まあ勢いがなくなると言えばなくなるんですけど、でもその分構図を工夫したり。

──鈴木さんの作品は、構図が独特で面白いです。「ホクサイと飯」の表紙も俯瞰ですし。

印象的なシーンは、1枚の絵で360°の風景が見渡せる構図に。

なるべく全体を見せたいときは魚眼レンズを使って、無理矢理見えないところも1枚の絵に収まるようにしています。甘酒の回の、桜のシーンもそうですね。ここぞという、物語が盛り上がるところに使用しています。

──甘酒の回に出ているジュンちゃんもそうですが、徐々にキャラクターも増えていってますね。今後はどんな展開になっていく予定ですか。

キャラクターはいろいろと出していきます。あとはブンとマンガとの出会いや、デビューするのか就職するのか、そういったところも描きたいですね。とりあえずの目標は、前作の8年後に繋げることなので、打ち切られないようにがんばります(笑)。そしてゆくゆくは、8年後のその先も描いていければ!

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鈴木小波「ホクサイと飯さえあれば」1巻 / 2015年4月6日発売 / 650円 / 講談社
鈴木小波「ホクサイと飯さえあれば」1巻
鈴木小波「ホクサイと飯さえあれば」1巻 / kindle版
あらすじ
伝説のインドアご馳走マンガ、復活移籍新連載!!

かつて掲載誌の休刊に伴い惜しまれつつ終了した「ホクサイと飯」。本作「ホクサイと飯さえあれば」は、その8年前のお話。大学進学のため上京した山田ブンが、愛するぬいぐるみ(?)ホクサイと共に、東京・北千住の町でアイディア満載のビンボーレシピで美味しいご馳走作ります! トラブルがあっても、ホクサイがいて、美味しい飯さえあれば、毎日ハッピー!!

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鈴木小波(スズキサナミ)
鈴木小波

千葉県出身、東京在住。ふたご座。O型。2002年デビュー。代表作に「ホクサイと飯」「ヤオツクモ」「盛り合わせガール」など。2014年よりヤングエース(KADOKAWA 角川書店)で「燐寸少女」を、ヤングマガジン サード(講談社)で「ホクサイと飯さえあれば」を連載中。最近納豆にハマっている。