コミックナタリー Power Push - 福島聡「星屑ニーナ」

マエストロの新作は胸キュンSF!読ませるネームのツボを初披露

ボーナストラック:森薫&入江亜季が乱入、ネーム合戦に

──誰がこんな事態を予測したでしょう。たまたま近所にいたということで、Fellows!の2枚看板、森薫さんと入江亜季さんが見学に来てくださいました。

入江 お邪魔しまーす。

──いま福島さんに、ラフなネームを実演してもらったところなんですが、例えば森さん入江さんが同じ「お腹空いたと川辺に着地。小魚を捕ろうとするもヘタ」という一文からネーム切ったら、ぜんぜん違うネームになりますよね。

入江 とりあえずもっと真剣に魚捕るんじゃない?(笑)

 もし自分のキャラクターに魚を捕らせるなら、川の中に入るとかありえないですよ。逃げますから、魚!(笑)

福島 ニーナはそういうキャラクターだからいいの!

 まあキャラの問題もありますけど、でもメインのコマには全然違うシーンを持ってきたりするでしょうね。

──先ほど福島さんはネームの前にラフネームを描くとおっしゃってましたが、おふたりもそういうのを描かれるんですか?

 私はネームの前に「ゲタネーム」と呼んでるのを作ります。最初からコマ割りまでばっちり決められたらいいんですけど、どうしても悩んでしまうので。先に描きたい内容をぜんぶ、大小考えずに描いちゃって、あと要素が多すぎたらこの時点で削ったりしますね。

ゲタネーム

──いわゆるCMの絵コンテみたいな感じですね。

入江 私もこれやってます。何コマになるとかわかんないもんね。

 そうですね。足したほうがいいところは足したり。

福島 可能性のある絵を全部バーって出すんだね。それ、俺も煮詰まったらやります。

──もういっそ、3人で描き比べしてみませんか? 同じお題で。お題はFellows!編集長から出してもらいましょう。お願いします!

【お題】美しいお姉さんがハンカチを落とす。男の子がそのハンカチを拾って、追いかけて渡す。笑顔でありがとうと言われ、キスされる。

3人 なにそれ! 無茶苦茶じゃん!

──ベタでいいじゃないですか(笑)。はいではスタート!

(黙々とネームを切る3人)

インタビュー写真インタビュー写真インタビュー写真

──福島さんが1番乗りでしたね。では見てみましょう。

福島のネーム森のネーム入江のネーム

 やっぱりメインにもってくるところが全然違いますね。私は女の人の顔がメインで、入江さんは男の子の必死な顔、福島さんは最後のキスだね。見せゴマって当たり前のように考えてたけど、こうやってみると人によって違う。

──入江さんのは男の子を愛でるマンガになってますもんね。

 渡すまでがすごく長いね(笑)。一生懸命階段登ってて、かわいい~。

入江 ハンカチ落ちて届けるって聞いたら、こういうマンガかと思って……! 渡すの大変だったー、みたいな。

──女性2人は最後のキスのコマが割と小さいけど、福島さんは……。

入江 ちょっとちょっと、おっさん!

 こんないきなり「ブチュー」ってありえないですよ!「あ、あ、ありがとうございます!ブチュー!」って(笑)。

福島 電波な女の人です。いいじゃない!

 これもうコマ割りがどうとかじゃなくて、3人とも発想が違うわ(笑)。

福島聡「星屑ニーナ」1巻 / 2010年12月15日発売 / 定価651円(税込) / エンターブレイン・BEAM COMIX

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あらすじ

ゴミ捨て場に投げ出されたロボット・星屑は、電池を消耗し、壊れ、過去の記録をすべて失ってしまう。星屑を修理し、新しい命を与えたのは女子高生のニーナ!ニーナは星屑の先生になると約束し、彼に成長するロボットとしての使命を与えた。そして、3年後、6年後、60年後。作品中の時間はどんどん過ぎていく。ヒトは死ぬが、ロボットは死なない。成長するロボット星屑は、ニーナの記録を胸に残したまま更なるスピードで未来へと進んでいく、名付けて"タイム・スキップ・コメディ"。

福島聡(ふくしまさとし)

福島聡

1969年8月24日群馬県生まれ。1990年、「箱庭王子」が月刊アフタヌーン(講談社)四季賞秋の部に準入選し、デビューとなる。以降は読み切りや短編を中心に発表。2001年からは月刊コミックビーム(エンターブレイン)にて子供の目線から死生観を描いた短編連作「少年少女」を連載。その後、同誌にて2004年から2008年まで「機動旅団八福神」を連載。2010年からはFellows!(エンターブレイン)にて「星屑ニーナ」を連載中。