コミックナタリー Power Push - 福島聡「星屑ニーナ」
マエストロの新作は胸キュンSF!読ませるネームのツボを初披露
ネームに織り込んだ読みやすさへの工夫
──読者はネームの時点でどんな工夫が盛り込まれているのかなんて、わからないと思うんです。もちろん読者だからそれは当然なんですが、いまお話を聞いていたら、上手いネームっていうのはどういうことなのか、プロットがネームに移されるときにどんなミラクルが起きているのか、そのあたりを伺いたくなってきました。
福島 お話が面白いかどうかは別問題として、読みやすさ的なことなら少し言えるかもしれんです。たとえばいま、「星屑ニーナ」第9話(Fellows! Vol.14掲載)のプロット、ラフネームそしてネームを持ってますから、もし掲載誌があれば、照らし合わせながら見てましょうか。
福島 たとえば3ページ目の冒頭2コマ。これは基本中の基本ですが、ここがどこであるかという状況を、ヨコ位置のコマを使って説明しています。まずお話がどこで起こっているのかを提示しておくと、読む方も混乱しなくてすんなり入れるはずだろう、と。
──ヨコ位置なのはどうしてですか。
福島 タテ位置より情報量が多く見せられるからですね。このキッチンならレンジ、流し、冷蔵庫といっぱい描けますから。ただ編集者からは、ヨコ位置のコマが増えると説明的になりすぎるので控えろと、いままさにお達しが出ているところです(笑)。
──まずは状況を提示するのが基本と。あとは?
福島 読みやすさという意味では、読み手の視線をいかに上手く誘導するかを、割と考えながらネームを作ります。
──たとえばどんな誘導の方法があるんでしょうか。
読みやすい画面をもたらす視線の誘導テク
福島 7ページ目のニーナが「あの蝶についていく」っていうシーンがわかりやすいかな。ここは蝶とバイクの位置関係を示すために縦長のコマを使ってるんですが、その下にもうひとコマ設けていますよね。フキダシを追っていくと最下段のコマでいったん視線が止まります。
──そのコマでバイクのスイッチを入れています。
福島 はい。すると次のコマへ、目線は大きくタテに上へ移動します。こんな大きく移動させるのは通常あんまり良くないんですが、ここではスイッチを入れたバイクが空へ上昇してますよね。これ、伝わってるかな……。
──ああ、目線が上に動くのと、バイクの浮き上がる動きがリンクしてるんだ! アニメみたく動かさなくても、動きを出すことができるんですね。
福島 そうです。こういうのってマンガならではの誘導の仕方じゃないかな。あと、見てもらいたいものは線でつながるように構成してます。いまのシーンの続きだと、バイクの「ルルルル」って音。この描き文字がひと役担ってますね。
──フキダシだけじゃないんですね!
福島 できるかぎり全部の素材を使って、意図を持った画面構成にしてるつもりです。貧乏性なので、いろいろ詰め込みたくなっちゃう。別のページですけど、ニーナが「あそこ照らして」って言って指を差すシーン。これなんかあからさまですよね。次に読むフキダシを差しています。さらに星屑も次のコマのフキダシに目線が行ってる。
──うわ……ぜんぜん気づきませんでした。
福島 気づかれるくらいだと、やりすぎですね(笑)。でもキャラの目線はだいたい次のコマに向いてます。毎回できるわけじゃないですけど、できるだけそういう風にしてます。
あらすじ
ゴミ捨て場に投げ出されたロボット・星屑は、電池を消耗し、壊れ、過去の記録をすべて失ってしまう。星屑を修理し、新しい命を与えたのは女子高生のニーナ!ニーナは星屑の先生になると約束し、彼に成長するロボットとしての使命を与えた。そして、3年後、6年後、60年後。作品中の時間はどんどん過ぎていく。ヒトは死ぬが、ロボットは死なない。成長するロボット星屑は、ニーナの記録を胸に残したまま更なるスピードで未来へと進んでいく、名付けて"タイム・スキップ・コメディ"。
福島聡(ふくしまさとし)
1969年8月24日群馬県生まれ。1990年、「箱庭王子」が月刊アフタヌーン(講談社)四季賞秋の部に準入選し、デビューとなる。以降は読み切りや短編を中心に発表。2001年からは月刊コミックビーム(エンターブレイン)にて子供の目線から死生観を描いた短編連作「少年少女」を連載。その後、同誌にて2004年から2008年まで「機動旅団八福神」を連載。2010年からはFellows!(エンターブレイン)にて「星屑ニーナ」を連載中。