コミックナタリー Power Push - 福島聡「星屑ニーナ」
マエストロの新作は胸キュンSF!読ませるネームのツボを初披露
1コマを2コマに割って時間経過を見せる
──このニーナがごはんを食べてるシーン。ネームでは1コマなのに、完成原稿は2コマに分けてますよね。これはどうしてですか?
福島 細かい話ですけど、パクってごはんを食べた後も喋り続けてるんです。この口のままじゃハフハフは言わないって気づいたんですよね。それで時間経過を見せるためにここで切ったんですね。
──ひとつの絵をわざわざ割るだけの動機があったんですよね。
福島 この下のほうにお弁当がまたいでますよね。これで絵はひとつと見せて、映画で言うところのパンしていく感じを出しています。
──これはテクニカルですねー。あの、例えば、駆け出しのマンガ家さんから「ネーム見てください」って言われたりすることあると思うんですが、どんなアドバイスをしていますか?
福島 ちゃんと読める字で、セリフが書いてあることですね(笑)。いろいろ話しましたけど、セリフが読めないんじゃ、全部意味ないんで。あとネームの絵はラフですから、僕はなるべく説明を書き入れてます。
──確かに。窓、川、カミの毛、森の中の木の家、☆、27……。
福島 ☆は星屑、27はニーナのことです。どの人物であるか、自分はわかってますけど、担当さんが見るものですから、ちゃんと書いておくとニュアンスが伝わりやすくなります。こういうささいな事って割と大事なんですね。
業界初?! コメンタリーつきでネーム生描き
──プロットという文字で書かれた要素が、ネームというビジュアルに変換されるとき、マンガ家さんが、どんな意図を持って作っているのか、少しずつですがわかってきました。
福島 もちろん普段は、もっといろんなことをぐちゃぐちゃと考えながら、描いてます。
──無茶を承知で言うんですが、そのぐちゃぐちゃという思考の過程をですね、見せていただけたりはしないでしょうか。普段は黙々と描かれてると思うんですが、考えてることをこう、口に出しながら。
福島 すごいリクエスト来ましたね(笑)。やってみましょうか。お題は何がいいですか?
──プロットの時点では存在したけど、ネームでは省かれてしまったシーケンスがありますよね。これなんてどうですか? プロットで「お腹空いたと川辺に着地。小魚を捕ろうとするもヘタ」と書かれているシーン。
福島 削られた幻のページを作るわけですね。「お腹空いたと川辺に着地。小魚を捕ろうとするもヘタ」か……。見開きで入るかな……。
福島 できたー! 時間的にも5分くらいでしたかね。
──出だしでニーナの顔のアップがドンとくるんですね。
福島 それなりのインパクトを考えて。2コマ目はその次のコマにつなぐためのコマです。で、4コマ目で全体像が見えた。いま、誰がどこにいるかという状況をちゃんと示して読みやすさにつなげていきます。
──ドンときて引き込む。このツカミのキャッチーさは、福島さんの得意とするところですよね。「星屑ニーナ」の1話目冒頭も、いきなりロボットが捨てられるシーンから始まる。普通はそのいきさつを描きがちです。なぜ捨てられたかとか、前のご主人はこうだったとか。
福島 僕はもともと短編出身なので、そこらへんは鍛えられてるのかもしれません。下手なうちは、舞台説明とかから始めちゃいがちなんですよね。謎のモノローグとか(笑)。まあ新人のうちに描いた最初の5、6ページって、だいたい要らないもんですよ。
あらすじ
ゴミ捨て場に投げ出されたロボット・星屑は、電池を消耗し、壊れ、過去の記録をすべて失ってしまう。星屑を修理し、新しい命を与えたのは女子高生のニーナ!ニーナは星屑の先生になると約束し、彼に成長するロボットとしての使命を与えた。そして、3年後、6年後、60年後。作品中の時間はどんどん過ぎていく。ヒトは死ぬが、ロボットは死なない。成長するロボット星屑は、ニーナの記録を胸に残したまま更なるスピードで未来へと進んでいく、名付けて“タイム・スキップ・コメディ”。
福島聡(ふくしまさとし)
1969年8月24日群馬県生まれ。1990年、「箱庭王子」が月刊アフタヌーン(講談社)四季賞秋の部に準入選し、デビューとなる。以降は読み切りや短編を中心に発表。2001年からは月刊コミックビーム(エンターブレイン)にて子供の目線から死生観を描いた短編連作「少年少女」を連載。その後、同誌にて2004年から2008年まで「機動旅団八福神」を連載。2010年からはFellows!(エンターブレイン)にて「星屑ニーナ」を連載中。