コミックナタリー Power Push - 福島聡「星屑ニーナ」
マエストロの新作は胸キュンSF!読ませるネームのツボを初披露
右と左、上と下を意識した画面構成
──ほかに視線誘導で工夫してることがあれば教えて下さい。
福島 1つのコマでフキダシが2つ以上あるときは、右上から左下へ配置します。ヨコ位置でもタテ位置でもそうしますね。これはさらに、フキダシの間に星屑とニーナを配置してます。こうすると、一連の動きでセリフも追えるし自然とキャラも目に入る。
──右下から左上って、絶対にないんですか?
福島 うーん、通常はないですね。右開きのマンガって、常に右から左に、上から下に読み進むものなので。フキダシに限らず、左から右へ読ませる絵ってないと思いますよ。そのルールに逆らわないのが、読みやすさとしてはすごく大事です。あと左右で言うと、肯定的なことを言わすときは左向き、否定的なことを言わすときには右を向かせたり。
──キャラの顔の向きで意味が変わるというのは、初耳です。
福島 これはたぶん人間の目線の動きが基本、右から左へなので、その流れに沿っているか、逆らっているかで、目に映り方が変わるんだと思います。
──そういう技法って、福島さんは最初から知っていらしたんですか?
福島 顔の向きは、若い頃演劇やってたときに知ったのかな。でも徐々にですよ。最初はもうそりゃあマンガ描くのヘタでした。
肉の美味しさを何倍にもしてくれる「あぶら身」
──さきほど画面構成は上下と左右を使うとおっしゃっていましたが、もう少し教えてください。
福島 ではこの、縦穴に入って降りていくシーン。ここは1ページまるまる「あぶら身」ですね。
──あぶら身? 全然意味がわかりません……。
福島 すいません、僕の中では「あぶら身」って呼んでるんです。心の中で(笑)。ステーキ肉を思い浮かべてください。こう、周りにあぶら身が付いてますよね。あれ、なくても困らないですよね。でもあれが美味しいじゃないですか。
──はいはいはいはい。
福島 なければないでストーリーに影響はないんだけど、あったら味になる部分。
──わかりました(笑)。ここは固定カメラで見てるような、ストップモーションで見せているわけですね。
福島 はい。上の段はまるまる、降下する動きに使っています。それで下に着いたら、次は横に移動して。
──地面の線を同じ高さで揃えて、横に移動する感じを出してるわけですね。プロットにあった「着地」というひとことを、こういう風に表現しているのが、すごいです。
福島 遊んでみたんですね。まあいずれにせよ、ストーリーには関係ないんですけど。そう、もちろんあぶら身ですから、多すぎても、しつこくていけない(笑)。
あらすじ
ゴミ捨て場に投げ出されたロボット・星屑は、電池を消耗し、壊れ、過去の記録をすべて失ってしまう。星屑を修理し、新しい命を与えたのは女子高生のニーナ!ニーナは星屑の先生になると約束し、彼に成長するロボットとしての使命を与えた。そして、3年後、6年後、60年後。作品中の時間はどんどん過ぎていく。ヒトは死ぬが、ロボットは死なない。成長するロボット星屑は、ニーナの記録を胸に残したまま更なるスピードで未来へと進んでいく、名付けて"タイム・スキップ・コメディ"。
福島聡(ふくしまさとし)
1969年8月24日群馬県生まれ。1990年、「箱庭王子」が月刊アフタヌーン(講談社)四季賞秋の部に準入選し、デビューとなる。以降は読み切りや短編を中心に発表。2001年からは月刊コミックビーム(エンターブレイン)にて子供の目線から死生観を描いた短編連作「少年少女」を連載。その後、同誌にて2004年から2008年まで「機動旅団八福神」を連載。2010年からはFellows!(エンターブレイン)にて「星屑ニーナ」を連載中。