コミックナタリー PowerPush - ファイブスター物語

あなたを永野護ワールドへと誘う 西島大介&さやわかのF.S.S.入門

1986年からアニメ誌・月刊ニュータイプ(角川書店)に掲載されている、永野護の「ファイブスター物語」。作品世界で巻き起こる出来事を事前に年表として公開し、歴史の幕間をマンガ化して見せる壮大な物語がファンの心を掴み離さない超長編作品だ。

その完成された世界観から、ライトユーザーには敷居が高いと思われがちな「ファイブスター物語」。コミックナタリーでは「ひらめき☆マンガ学校」の講師である西島大介、さやわかに指南役を依頼し、初心者歓迎の特別授業を行なってもらった。未読の人もすぐ読みたくなる、誰でもわかる「ファイブスター物語」講座を開講する。

文/さやわか 聞き手・撮影/唐木元 編集/淵上龍一

 
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ひらめき☆マンガ学校、参上!

西島 さて、今日は我々「ひらめき☆マンガ学校」の講師2人による特別講義! 生徒役の聞き手は、「ファイブスター物語」(以下、「F.S.S.」)がよくわからないとお嘆きのコミックナタリー編集長、唐木さんです。

──周りの人が面白いって言うからトライしたんだけど、難解でとっつきづらくて……。

さやわか この作品の何がすごいのか、徹底的に教えてあげますよ! その前に、どうせみんな「ひらめき☆マンガ学校って何なのよ」とか思ってるだろうから、まずはそれを説明しましょう。僕と西島君が講師を務めるこのマンガ学校は2009年に開校されました。16人の生徒を育て上げるプロジェクトで、現在「2学期」までを終了しています。

西島 普通のマンガ学校と違うのは、「マンガ」とか「マンガ家」という概念を拡張することで、誰でもマンガ家になれてしまうこと。

写真左がさやわか、右が西島大介

さやわか 具体的に言うと、生徒を「作家」としてコミックナタリーに登録してもらって、強引にマンガ家に仕立て上げてしまう、とか。作品を描かなくても、社会的に「マンガ家」という肩書きを与えられるとなぜかマンガ家になってしまう。そういう手を使って「マンガ家」を世に放つ学校です(笑)。それを「マンガ家」という概念の拡張と呼んでいるわけですね。

──(え……え—————!?)

さやわか こういうことを言ってると「そんなデタラメなやり方でマンガ家になれるわけがない」と思うかもしれないけど、いまや我が校の生徒は、「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」の谷川ニコ、「ぼくらのへんたい」のふみふみこ、映画「恋に至る病」の丸木戸サドル(=木村承子)、「レッドドラゴン」のしまどりる他、幅広い分野で活躍しております。

西島 このへんの話は、詳しくは単行本第1巻を参照です(笑)。この単行本、マンガ編集者さんはかなり読んでるらしいですよ~。

初心者にオススメ! 「F.S.S.」の読み方

さやわか で、こっからが本題です。僕らはいま話したように普通じゃないマンガ学校をやっている。そして実は「F.S.S.」も、普通のマンガではないんですよ。そして作者の永野護さんも普通のマンガ家ではない。だからこそ、この作品や作者を語るのに、僕らは最適な人材として今回の講義を行うことになったわけです。

ホワイトボードを使い講義をする西島大介(左)、さやわか(右)。

西島 そもそも「F.S.S.」は、「普通のマンガ」としてはかなりハードルが高いもんね。生徒であるコミックナタリー編集長は、どんなマンガか理解できているんでしょうか。

──もちろん読んだんですけど、ちょっと何の話なのかわかりにくくて……。

西島 第1巻がまたハードル高いし。たとえば「レディオス・ソープの正体はアマテラスだ」っていう設定も一読しただけではわかりにくいけど、アマテラスがソープとして行動しているときはアイシャ・コーダンテがアマテラスの影武者をやっている、というのも、最初はわからないと思う。

──え? アイシャは影武者なんだ?

さやわか そうです。第1巻でレディオス・ソープがいるシーンに出てきてるアマテラスはアイシャ。

──レディオス・ソープがアマテラスで、アマテラスがアイシャなの? えー?!

さやわか ……みたいなところが、わかりにくい(笑)。第1巻だからわかりやすくしなきゃいけないとかぜんぜん考えてなくて、いきなり何の説明もなくアマテラスがソープだったり、アイシャがアマテラスだったりしてるんだよね。

──一般的なマンガのセオリーだと「まず引きの絵を描いて舞台設定がどこだか明示しましょう」とか「登場人物が互いの名前を呼び合って、登場人物を紹介しましょう」ということになりますよね。

西島 その意味では「F.S.S.」はマンガ編集者がオッケーを出すような描かれ方は一切されていません。少なくとも担当編集者に「読みやすいマンガ」として鍛えられた形跡はないですね。永野護さんが創造した本物の「世界」が純度100パーセントのまま垂れ流れている状態。だからマンガとして、ストーリーはわかるけど説明がほしくなる部分もたくさんある。だけどそれを自分で調べながら「あ、こういう意味だったのか」って1個ピースが埋まると、あとはダーッと埋まっていくよ。

さやわか あるシーンを理解できた瞬間に、何かとてつもない秘密を知ったような気になれるよね。それが「F.S.S.」という物語の醍醐味。僕はいつも新しい巻を読む時は、まず本を開いて口絵に載っている登場人物一覧をじっくり読んで、各キャラクターがどういう役割を持ってる人なのかを最初に把握しておきます。あとは巻末の年表と読み比べながら本編を読んで「そういうことか。あー、なるほど」って言いながら読む。そうすると、すごく面白いんですよ。

西島 キャラ表だけでも面白いよ。マンガ以上の内容が詰まってたりするし。

さやわか たとえて言うなら「F.S.S.」は「孫策は孫堅の息子」とかまったく説明されずに描かれてる「三國志」みたいな感じですね。

──それ、予備知識がないとまったく読めないんじゃ……。

さやわか いやいや、だからこそ本物の中国の歴史を懸命に学ぶわけですよ。そうすると物語の「三國志」で何が描かれているのかも理解できるわけじゃないですか。それと、あとで説明するけど「F.S.S.」の骨格の部分にあるドラマはものすごく王道なものなんですよ。

「F.S.S.」が普通のマンガじゃない4つの理由

西島 ただまあ、いずれにしても「F.S.S.」は「普通のマンガ」じゃないですよね。そもそも、コミナタに載ってそうなマンガじゃないしね。

さやわか ひらめき☆マンガ学校としては、ここがポイントですね。「F.S.S.」が普通のマンガじゃない理由、その(1)は「コミックナタリーに載ってなさそう」です(笑)。マンガというのは内容じゃなくて、読者や掲載メディアの扱いによって性格が決まる。この逆転の発想が「ひらめき」です。まあ、そもそもね、コミックナタリー的な「マンガ」と言ったら、だいたい次のようなものを指すわけですよ。

a.ミツロウ
b.ライオン
c.ペン入れ動画

一同 わはははははは!

西島 上記3つは、作者と読者が共感しあうような、素敵な作品ばかりですね。でも「F.S.S.」はそういう作品じゃないんだよ。作品としてすごく敷居が高いというか、そもそも読むのが難しい。

さやわか では、次いきましょう。「F.S.S.」が普通のマンガじゃない理由のその(2)「アメトーークで『F.S.S.芸人』がやれない」(笑)。

西島 無理だね。「ジョジョ芸人」「ガンダム芸人」はいるけど。「僕たちはファイブスター物語芸人です!」とか、ありえないよね……。人気がないとかそういうことじゃなくて、芸人さんは忙しいから、番組収録の予習として一気に「F.S.S.」を読もうとしても、無理だと思うんだよ。

 

さやわか そして「F.S.S.」が普通のマンガじゃない理由、その(3)「コスプレのハードルが高い」。

西島 高いね~。永野さんのデザインを再現しようとすると、「まず体重を10キロ落として」みたいな感じだもんね。肉を削いで手足を細くするような人体改造が必要というか……。いや、これは嘘じゃなくて、この物語はそもそも、そういう怖い世界だからね。

永野護「ファイブスター物語」
5つの星からなる星団の歴史と、モーターヘッドと呼ばれる戦闘兵器を駆る騎士・ヘッドライナーたちの活躍を描いたSFファンタジー。既刊12巻分の内容を雑誌掲載時の構成で再編集したリブート版は、目下7巻まで刊行中。
永野護「ファイブスター物語 トレーサー Ex.1」 / 2012年10月10日発売 / 1260円 / 角川書店
ジョーカー星団史上初、永野護公認のファンブックついに登場!人気クリエイター、ミュージシャン、役者、芸人がイラスト、インタビューなどで「F.S.S.」の世界を語りつくす!
劇場アニメ「花の詩女 ゴティックメード」 / 2012年11月1日公開
永野護が監督する劇場アニメ。2012年11月1日(木)より角川シネマ新宿、シネマサンシャイン池袋ほかで上映開始。
永野護(ながのまもる)

デザイナーとして「重戦機エルガイム」をはじめ、数々のアニメ、ゲーム作品などにデザインを提供。1986年から月刊ニュータイプ(角川書店)で「ファイブスター物語」を連載開始。同作は数多くのファンを獲得し、現在も連載中。2012年11月1日に、初監督した劇場ロボットアニメーション「花の詩女 ゴティックメード」が公開を控えている。

西島大介「西島大介のひらめき☆マンガ学校 マンガを描くのではない。そこにある何かを、そっとマンガと呼んであげればいい。」
表紙
2010年6月1日発売 / 1365円 / 講談社
講談社BOXが主催するマンガ家養成企画として2009年にスタート。マンガ家の西島大介、ライターのさやわかが講師を務め、公募で集めた生徒全員をマンガ家にすることを目標に授業を行なっている。「そこにある何かを、そっとマンガと呼んであげればいい」を合言葉に、マンガという概念を拡張中。授業内容をまとめた単行本1巻が発売されており、第2巻も今秋刊行予定。
西島大介「Young,Alive,in Love」1巻 / 2012年10月10日発売 / 630円 / 集英社
“あの日”から僕らは何か変わったのだろうか──。三つの巨大な湯沸し器が100年間稼働している東京都M市。ガイガー・アプリで放射能を測定するマコトと幽霊が視えるオカルト少女マナ。「視えないもの」が降り注ぐ街で、二人は恋に落ちた!大切なのは除染それとも除霊?西島大介が描くポスト3.11のLOVE&POP開幕!!