コミックナタリー PowerPush - 映画「ベルセルク 黄金時代篇III 降臨」

衝撃のクライマックス「蝕」がいよいよ開宴「進撃の巨人」の諫山創&窪岡俊之監督インタビュー

三浦建太郎原作の劇場アニメ「ベルセルク 黄金時代篇」3部作の完結編となる「ベルセルク 黄金時代篇III 降臨」の公開が、2月1日に迫った。原作連載時に多くのファンを震え上がらせた衝撃のシーン「蝕」がついに映像化されるとあって、大きな話題を呼んでいる。

コミックナタリーでは「ベルセルク」ファンを代表して、「進撃の巨人」で快進撃を続ける諫山創に、作品の魅力を訊くインタビューを敢行。また5年にわたる「ベルセルク」の映画化プロジェクトに身を捧げた監督・窪岡俊之に、映像化困難といわれた「蝕」を描く覚悟や、3部作を完成させた心境を尋ねた。

取材・文/岸野恵加 撮影/唐木元(諫山)、岸野恵加(窪岡)

 
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諫山創インタビュー

「これはただごとではないな」というのが伝わってきた

──「ベルセルク」の連載が始まったのは1989年ですが、諫山さんは1986年生まれ。初めて作品に接したのはいつ頃ですか?

中学生くらいのとき、親戚の家で15か16巻を読んだのが最初ですね。断罪の塔のエピソードあたりです。

──ということは、黄金時代篇が終わった後ですね。

諫山創

はい。嫌なこと忘れて、乱交パーティーしようぜ! っていうシーンだったんですけど。

──中学生が、すごいのを最初に見ちゃいましたね(笑)。

そうですね(笑)。話の全体像とか主人公が何なのかとかも全くわからなかったんですが、線の描き込みとか、これはちょっと、ただごとではないなっていうのが画面から伝わってきました。

──全編を通して読んだのはいつですか。

高校のクラスに「ベルセルク」を持ってくる友達がいまして、回し読みで1巻から初めて読みました。

──改めてストーリーを追って、どんな感想を抱かれました?

途方もないというか……とにかく壮大で。でも、1本の映画みたいにすごくしっかりとまとまっている印象を受けました。あと自分は変身ヒーローものが好きなので、「ベルセルク」に出てくる肉体変容の描写が好きなんです。断罪の塔の場面で頭巾のような仮面を被ってるやつがいて、その仮面が顔になったり、被ってる人の顔が奥に見えたりと曖昧になるところが印象に残ってますね。すごくピンポイントなところですけど。

自分は逃げちゃう側の人間なんで

──肉体変容というと「進撃の巨人」で、エレンが巨人に変身するシーンを連想します。そこは諫山さんのツボにハマるポイントなんですね。そのほか「ベルセルク」と「進撃の巨人」の共通点として、前提として大きな絶望があって、それでももがいて生きていこうとする人たちを描いているところが挙げられると思うのですが。

「ベルセルク」21巻より。

三浦先生は、一貫してそういうテーマを描かれている気がします。「ベルセルク」でファルネーゼというキャラが生死が懸かったとき神に祈ろうとして、ガッツに「祈るな!! 祈れば手が塞がる!!」って言われるシーンがあるんですが、あれはすごい名言ですよね。現実と向き合え、っていうことが顕著に表れてるなと思って。

──何かにすがるのではなく、自分で動け、というメッセージが込められている。

はい。あと「ベルセルク」の前に三浦先生が描かれてた作品で、何不自由なく暮らしてた現代っ子がタイムスリップして、弱肉強食の世界で強くなっていくっていうのがありまして(武論尊原作「ジャパン」)。原作付きで三浦先生は作画だけなのに、テーマ的には「ベルセルク」だったのでびっくりしました。作家性がすごく出ていると思います。

武論尊原作、三浦建太郎作画「ジャパン」文庫版

──芯は同じことを描いてきているということですね。一方「進撃の巨人」で諫山先生は「戦え!」ってセリフを何度もキャラクターに言わせていますが、どういうお気持ちで描いてるんですか? 少年誌だから、やはり若い読者を奮い立たせたいという思いがあるんでしょうか。

いや……自分は、そっち側の人間じゃないんで。

──そっち側……戦う側?

はい。逃げちゃう側の人間なんで、何か嫌なことあったら現実逃避しちゃう。

──「ベルセルク」とか読んで、「俺もがんばろう!」って思ったりしないですか。

……ならないです。

──(笑)。逃げたくなるのはいつ?

原稿描く前……ネーム描く前ですね。

──自分を励ましてくれたり奮い立たせてくれるものに助けられてきたからこそ、諫山さんが描く物語にもそういう要素が入ってるのかなって、読者目線では思ってました。

「進撃の巨人」4巻より。

読んでるときだけはそういう気分になるんですけど、読み終わったらもう「……寝よう」って。

──あはは(笑)。それで「巨人」みたいなマンガが描けるのがすごいです。絶望の淵から立ち上がっていくキャラクターの姿に、勇気をもらう人も多いと思いますが。

自分自身はまったくそういうタイプではないんですよね。子供の頃、川遊びで高いところから飛び降りたりするじゃないですか。そういうとき、自分に言い訳して飛ばずに逃げてきたんです。でもそれが通過儀礼をやりそびれたというか、モヤモヤとして残っていて。そういうモヤモヤを抱えてる人が、逆にマンガで「戦え!」っていうようなことを描いたりしがちなんですよ。

──あくまでマンガだから、自分の中にないものをメッセージとして出せたり、違う自分になれたりするということでしょうか。

そうですね。マンガの中なら何やってもいいというか、例えば生きてて犯罪とかはしちゃいけないしできないですけど、マンガの中ならできる。思いっきり暴れたいっていう衝動も発散することができるんですよね。

映画「ベルセルク」

全世界累計3300万部を超えるダークファンタジー超大作コミック「ベルセルク」の、長大なる原作の世界観全てを映像化する「ベルセルク・サーガプロジェクト」の第1弾として、ファンの間でも最も人気の高い「黄金時代篇」を3部作で映画化。2012年2月4日に「ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵」、6月23日に「ベルセルク 黄金時代篇II ドルドレイ攻略」が公開され、そして完結作となる「ベルセルク 黄金時代篇III 降臨」が2013年2月1日に封切られる。

映画「ベルセルク 黄金時代篇Ⅲ 降臨」ポスター

映画「ベルセルク 黄金時代篇III 降臨」2013年2月1日(金)全国ロードショー

あらすじ

ミッドランド王都ウインダムの地下深く―反逆罪によって囚われたグリフィス奪還のため、キャスカはじめ鷹の団の残党は、グリフィス幽閉の地“再生の塔”へ向かう。修行の旅から帰還し、力強く成長したガッツの剣はもはや無双、見事グリフィスを取り戻す。しかし、両手両足の腱を切られ、舌を抜かれたグリフィスに、かつての夢を追う術はない。ガッツ、キャスカ、そしてグリフィスの願いは……。

キャスト

岩永洋昭、櫻井孝宏、行成とあ、梶 裕貴、寿美菜子、矢尾一樹、豊崎愛生、中村悠一、三宅健太、大塚明夫

スタッフ

原作:三浦建太郎(スタジオ我画)/白泉社 監督:窪岡俊之 脚本:大河内一楼 キャラクターデザイン・総作画監督:恩田尚之 アニメーションディレクター:岩瀧智 美術監督:新林希文・中村豪希・竹田悠介 音楽:鷺巣詩郎
主題曲:平沢進「Aria」(テスラカイト)
製作:BERSERK FILM PARTNERS(ルーセント・ピクチャーズエンタテインメント・バップ・白泉社・Beyond C・KDDI・ムービック・Yahoo! JAPAN・グッドスマイルカンパニー)
アニメーション制作:STUDIO4℃
配給:ワーナー・ブラザース映画

諫山創(いさやまはじめ)

1986年大分県出身。2006年、週刊少年マガジン(講談社)のMGP(マガジングランプリ)にて「進撃の巨人」で佳作受賞。2008年、同誌の新人マンガ賞にて「orz」で入選、同作にてデビューを果たす。2009年、別冊少年マガジン(講談社)にて「進撃の巨人」の連載を開始。同作は2011年に第35回講談社漫画賞少年部門を受賞。実写映画化、TVアニメ化も決定している。