コミックナタリー PowerPush - アトム ザ・ビギニング

SFアイドル・西田藍が手塚眞 / ゆうきまさみ / カサハラテツローに聞く「鉄腕アトム」“エピソード・ゼロ”誕生秘話

月刊ヒーローズ(ヒーローズ)にて連載中の「アトム ザ・ビギニング」は、手塚治虫の名作「鉄腕アトム」の“エピソード・ゼロ”を描く物語。同じ大学でロボット工学を研究する若きお茶の水博士と天馬博士が、自らの制作したロボット・A106(エーテンシックス)と繰り広げる冒険を描いている。

コミックナタリーでは単行本1巻の発売を記念し、SFファンであり書評家としても活躍中のアイドル・西田藍を召喚。「アトム ザ・ビギニング」に登場するお茶の水の妹・蘭ちゃん風のコーディネートで、同作で監修を務める手塚眞、コンセプトワークスを務めるゆうきまさみ、マンガの執筆を手がけるカサハラテツローの仕事場をそれぞれ訪問してもらった。SFアイドル・西田が聞き出した、3人のロボット観とは何なのか。ぜひその目で確かめてほしい。

文/安井遼太郎 撮影/笹森健一(P1、3)、小坂茂雄(P2)

西田藍
 
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手塚眞(監修)インタビュー

左から西田藍、手塚眞。

まず西田が足を運んだのは、言わずと知れた手塚作品の総本山・手塚プロ。「鉄腕アトム」をはじめとする手塚作品のグッズがひしめき合う部屋に、西田ははしゃいでいた。

まったく違うアトムが始まったら面白い

西田 本日はよろしくお願いします!

左から手塚眞、西田藍。

手塚 よろしくお願いします。一応これ、私の名刺です。

西田 あ、私も名刺を持っているのでお渡しします。

手塚 ありがとうございます。名刺にアイドルって書いてあるんですね。自分の肩書にアイドルって書くの、珍しいなあ(笑)。

西田 こういうの、書いた者勝ちなので(笑)。「アトム ザ・ビギニング」で監修を務められている手塚眞さんにまずお聞きしたいのは、そもそもなぜ「鉄腕アトム」をリメイクすることになったのかということからなのですが。

「アトム ザ・ビギニング」より。お茶の水は、練馬大学でロボットを研究している学生。

手塚 最初はね、アトムに絞ってはいなかったんですよ。ところが以前、浦沢直樹さんと長崎尚志さんが作られた「PLUTO」というマンガがありましたよね。あの作品はすごく完成された物語なんだけど、逆に「PLUTO」だけで世界観が限定されてしまっても面白味に欠けるから、まったく違うアトムが始まったら面白いね、と話していたんですよ。

西田 それで、天馬博士とお茶の水博士の学生時代を描くことになったのはなぜでしょう。

手塚 実は手塚治虫はアトムの誕生年について、2003年から2030年に改めたことがあるんですね。その頃のお茶の水博士と天馬博士が40歳代だったと考えると、ちょうど現代と近い年代に、20代の若々しい学生の2人がロボットの研究をしていてもおかしくないなと思って、あ、いいんじゃないかと。そこから始まりました。

天馬博士とお茶の水博士のドラマ

西田 なるほど。手塚さんは監修として携わられているとのことですが、具体的にはどのように?

手塚 基本的には僕があんまり細かく決めたりすることはせず、ゆうき先生にしろカサハラ先生にしろ、好きに考えてもらえればいいかなと思ってるんです。例えば僕からは、お茶の水博士と天馬博士については、パッと見たときに「かわいい」とか「カッコいい」って感想が出てくるような青年にしたほうがいいんじゃないかなどと伝えました。

「アトム ザ・ビギニング」カット

西田 若いときの天馬博士、すごくカッコいいです! 女の子にすごくモテそうな感じで。でもお茶の水博士も、おとなしくて誠実なところに意外と隠れファンがいそうですよね。

手塚 そうそう。まあ、女の子だったらどっちかを選ぶだろう、って感じだよね。西田さんはどっち派ですか?

西田 私はまだ迷い中で……。今は天馬博士派なんですけど、ぽわーっとしているお茶の水博士が、自分の研究にのめり込んでいったときにどうなるかっていうのがすごく楽しみで、決められなくて(笑)。

手塚 やっぱり「アトム ザ・ビギニング」はアトムが生まれる前のロボットの物語、という本筋はあるんだけど、それとは別に、天馬とお茶の水の関係をドラマとして描いていく部分もあるわけなんです。最初はすごく仲がいいんだけど、時々ケンカしてみたりとかね。この後2人がどういう経緯を経て原作の「鉄腕アトム」の関係になるのか。そこが一番の読ませどころだと思います。

A106がアトムの原型ではないかもしれない

西田 そうか、この物語のラストは「鉄腕アトム」の最初につながるんですよね。決まっている分、そこにどう行き着くかはすごく難しそう。

手塚 もしかしたら僕ら3人が3人とも、別々のストーリーを考えてるかもしれないんですよね(笑)。それはこのあと話し合って決めていくわけだから、自分たちも実はまだ見えていない。すごく楽しみですよ。例えばこのA106が、そもそもアトムの原型になるのかすらわからないわけです。

手塚眞

西田 なるほど。巻が進むごとにそれが明らかになっていくわけですね。

手塚 ええ。でも1巻目だけでも、回を追うごとにハラハラドキドキさせてくれる展開ですよね。最初にゆうきさんからロボレス(ロボットによるプロレス)をやるって聞いたときには少し驚いたんだけど、カサハラさんが描いたのを見てみると、高専ロボコンみたいな雰囲気の中に近未来のニュアンスもあって。これまでのマンガに出てくるロボレスものと全然違っていて、すごく安心したんですよ。

西田 私が小さい頃に通っていた福岡のロボスクエアというところに、ロボットを操作できるところがあって。そのときには私、ロボットって完全に機械だなって思っていたんです。だからA106がロボットに話しかけたとき、すごくびっくりして、「あ、怖い」って思っちゃって。ロボットに自我が芽生え始めている、みたいな。そういう怖さというか、ある意味ときめきみたいなものを感じました。

手塚 現代って、ロボットがすごく身近にいる世界じゃないですか。遠い未来の話だったら感情を持ったロボットがどんどん出てきてもおかしくないけれど、時代が近いこの作品ではそうはいかないんですよね。そこらへんのバランスは、ゆうき先生もカサハラ先生もすごく考えながら描いていらっしゃると思います。

アトムが登場しないアトムの物語

西田 A106はすごく見た目はメカメカしいというか、アトムとは違う見映えですよね。手塚さんはどちらがお好きですか?

手塚 僕は実は、メカにはあまりグッと来ないタイプで。手塚治虫の絵ってソフトな感じがするから、ロボットを描いても柔らかい感じがするんですよね。そちらのほうが僕は好きで。

西田藍

西田 私も「鉄腕アトム」でアトムが生まれて意地悪な目に遭わされたりとかすると、ちょっとキュンとして。助けてあげたいって気持ちになりました。

手塚 手塚治虫が描いたアトムもだいぶ、造形が変化しているんですよ。腕に継ぎ目のようなものが出てきたり、またなくなったり。あと最初は学校に通っていて、制服を着ていたときもあった。ここにちょうど、その姿の人形があるんですが……。

西田 本当だ、服を着ていますね。「アトム ザ・ビギニング」の1巻と並べると、やっぱり不思議な感じです。どうしてこの子になるんだろう。

手塚 まだこのA106がアトムになるかはわかりませんけどね。「アトム ザ・ビギニング」はアトムが登場しないアトムの物語、ということで、すごく面白いところから始められたと思うので、期待して読んでほしいです。

西田 1巻の最後にしてちょっと怖かったりしたんですけど、どう裏切られるんだろう……。私もすごく楽しみにしています。

手塚治虫 / ゆうきまさみ / カサハラテツロー / 手塚眞 / 手塚プロダクション 「アトム ザ・ビギニング(1)」 / 2015年6月5日発売 / 605円 / 小学館クリエイティブ
「アトム ザ・ビギニング(1)」

ロボットの未来がここにある。
鉄腕アトム誕生までを描く物語、開幕──!!

原因不明の大災害に見舞われた近未来の日本。それから5年後、復興が進む日本のとある大学に、ロボット開発にすべてを懸ける2人の若き研究者の姿があった──。

“ゆうきまさみ”דカサハラテツロー”という、ロボット漫画を描き続けてきた2人が新解釈で描く、永遠のヒーロー“鉄腕アトム”誕生までの物語がいよいよ開幕!!

手塚眞(テヅカマコト)

東京生まれ。ヴィジュアリスト。高校時代から映画・テレビ等の監督、イベント演出、CDやソフト開発、本の執筆等、創作活動を行っている。1999年映画「白痴」でヴェネチア国際映画祭招待・デジタルアワード受賞。TVアニメ「ブラック・ジャック」で東京アニメアワード優秀作品賞受賞。手塚治虫の遺族として宝塚市立手塚治虫記念館、江戸東京博物館「手塚治虫展」等のプロデュースを行う。著作に「父・手塚治虫の素顔」(新潮社)、「トランス位牌山奇譚」(竹書房)ほか。

西田藍(ニシダアイ)

アイドル。1991年生まれ。「ミスiD(アイドル)2013」で準グランプリを受賞しデビュー。文芸アイドルとして書評、エッセイなど執筆活動も行う。NHK Eテレ「ニッポン戦後サブカルチャー史」出演。S-Fマガジン2014年10月号(早川書房)にて表紙グラビアを飾り、同誌2015年1月号より「にゅうもん! 西田藍の海外SF再入門」を連載中。SFと美少女と女学生の制服が大好き。