「YPAM2022」台湾の振付家ブラレヤン・パガラファが語る「LUNA」からフリンジまで (3/3)

2022年の「YPAMディレクション」のポイントは?

ここでは、今年の「YPAMディレクション」にラインナップされた4作品のうち、「LUNA」以外の3作品について、プログラムディレクターのメッセージを交えて紹介する。

ディレクターコメント

世界の舞台芸術の動向をいち早く反映して応答するよう国内外のプロデューサー / キュレーターたちと協働して実現してきたTPAMディレクションですが、YPAMディレクションではもう一つ踏み込んで、横浜 / YPAMから世界に提案する作品の発信を目指そうとしています。「仮構の歴史」はTPAM時代の2019年にワーク・イン・プログレスとして上演され、「ジャスミンタウン」はYPAM2021に公開リハーサルとして上演、いずれも世界初演でした。そして「ニッポン・イデオロギー(仮)」も来年度の本公演に向けたワークインプログレスです。ぜひ観客のみなさまには、横浜から世界に向けて発信され、これから評価されることになる作品の共犯者、見届け人となっていただければとてもうれしいです。


「ニッポン・イデオロギー(仮)」イメージ©2022 OLTA

「ニッポン・イデオロギー(仮)」

2022年12月9日(金)~11日(日)
神奈川県 KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ

作・演出:オル太
出演:オル太 ほか

多摩美術大学出身の井上徹、川村和秀、斉藤隆文、長谷川義朗、メグ忍者、Jang-Chiによるアーティスト集団・オル太が、YPAMの委嘱で“ニッポンのイデオロギー”に焦点を当てた作品を立ち上げる。今年はワークインプログレスとしての試演で、「YPAM2023」で完成作品を発表予定。

「ジャスミンタウン」ビジュアル(Image: Zhang Yongji)

「ジャスミンタウン」

2022年12月10日(土)・11日(日)
神奈川県 KAAT神奈川芸術劇場 ホール

コンセプト・振付:ヤン・ジェン
パフォーマー:王謙誠、近江師門、川島かほり、区愛美、区愛玲、鍾牧虬、鍾羽緹、陳珺、陳天璽、永田琥珀、馬双喜、溝口璃温、李世福、劉丹、盧建聰
ゲストダンサー:三木珠瑛、村上生馬、リアント、李怡純子、李真由子

北京を拠点にした新鋭の振付家ヤン・ジェンの新作。ヤン・ジェンは海外ツアーを通じて、各地の中華街における華僑・華人の多様なアイデンティティのあり方に興味を持つようになり、本作では、横浜中華街の人々と作品を立ち上げる。なお本作は、世界各地の中華街の住民と取り組むプロジェクトの第1弾となる。

「仮構の歴史」より。(Photo by Komunitas Salihara / Witjak Widi)

「仮構の歴史」

2022年12月14日(水)~17日(土)
神奈川県 BankART KAIKO

演出:マーク・テ
出演:ファーミ・レザ、ラーマー・パウジ、ファイク・シャズワン・クヒリ

本作は、マレーシアを拠点に活動するファイブアーツセンターの最新作で、2015年に発表された国際共同製作「バリン」のスピンオフ。「TPAM2019」でワークインプログレスが発表された。本作ではマラヤ共産党の元党員たちのインタビュー映像をもとに、歴史観を巡る考察が繰り広げられる。

「YPAM連携プログラム」

横浜の芸術文化団体である、KAAT神奈川芸術劇場、横浜赤レンガ倉庫1号館、モントリオールの舞台芸術見本市・CINARS、横浜赤レンガ倉庫1号館との特別協力による公演プログラム。沖縄出身の劇作家・兼島拓也(作)とThéâtre MUIBOの田中麻衣子(演出)によるKAAT神奈川芸術劇場プロデュース「ライカムで待っとく」、モントリオールを拠点とする総合アート集団シアター・ジャンクションが作り出す“カオスモス(ChaosとCosmosの造語)”なパフォーマンス「カオスモス:脱植民地化されたキャバレー」、今年は「身体を超えた先に─ダンスとテクノロジー─」をテーマに開催される「ヨコハマダンスコレクション2022」がラインナップされた。


KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「ライカムで待っとく」ビジュアル

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「ライカムで待っとく」

2022年11月27日(日)~12月4日(日)
神奈川県 KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ

作:兼島拓也
演出:田中麻衣子
出演:亀田佳明、前田一世、南里双六、蔵下穂波、小川ゲン、神田青、魏涼子、あめくみちこ

※2022年11月28日追記:本公演は新型コロナウイルスの影響により27日から29日までの公演が中止となりました。

シアター・ジャンクション「カオスモス:脱植民地化されたキャバレー」より。(Photo:Jasmine Allan-Côté)

[CINARSショーケース]
シアター・ジャンクション「カオスモス:脱植民地化されたキャバレー」

2022年12月7日(水)・8日(木)
神奈川県 KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ

「indivisible substance」より。(写真提供:West Kowloon Cultural District / 香港)

「ヨコハマダンスコレクション2022」

2022年12月1日(木)~17日(土)
神奈川県 横浜赤レンガ倉庫1号館 ほか

シンポジウム「障害者による芸術文化活動のこれから」ビジュアル

シンポジウム「障害者による芸術文化活動のこれから」

2022年12月9日(金)
神奈川県 横浜情報文化センター 情文ホール

スピーカー:恵志美奈子(世田谷パブリックシアター劇場部学芸)、鈴木励滋(生活介護事業所カプカプ所長、演劇ライター)、新井英夫(体奏家・ダンスアーティスト)、山上庄子(Palabra株式会社代表取締役)、大澤寅雄(連携事務局/特定非営利活動法人アートNPOリンク理事長)

今年はみんなの“集いの場”もオープン!
「YPAMフリンジ」

「YPAMフリンジ」とは、「YPAM2022」開催期間中に横浜・神奈川エリアで実施される公募プログラム。今年は横浜・神奈川エリアの劇場やホール、美術館、商店街、ホテルなどさまざまな文化施設で配布されている「YPAMフリンジプログラム冊子」を作成し、フリンジ作品の公演内容や会場がよりわかりやすくなったほか、フリンジ参加者はもちろん舞台芸術に関心がある人は誰でも立ち寄れるフリースペース「YPAMフリンジセンター」が横浜の初音町にオープン。「YPAM2022」期間中は毎日営業しているので、ぜひ立ち寄ってみては。

YPAMフリンジプログラム冊子

YPAMフリンジプログラム冊子

ディレクターコメント

今年から、YPAMフリンジは、フリンジフェスティバルの密度を高めようと、会場を横浜・神奈川エリアに限定しました。大きな決断でしたが、フリンジ参加者のみなさんのご協力のもと、横浜・神奈川に潜む舞台芸術への潜勢力を掘り起こしながら、地域密着型の自由に参加できるフェスティバルとして定着させていくことができればと考えています。その拠点として「YPAMフリンジセンター」を新規オープンしました。YPAM会期に向けて独自企画も計画中です。自然派ワインもご用意しています。ぜひお立ち寄りいただき、今日見た作品や、舞台芸術について大いに語り合いましょう。

YPAMフリンジセンターの様子。

YPAMフリンジセンターの様子。

YPAMフリンジセンターの様子。

YPAMフリンジセンターの様子。

2022年11月28日更新