劇中では一平が電車に飛び込もうと決意した矢先、隣の駅で人身事故が発生。一平は目の前に現れた幽霊から「娘に付きまとっている男を殺してくれないか?」と依頼される。男を殺すまで取り憑くという幽霊の脅迫に一平がとった選択とは? この幽霊・森口友宏に
森口の娘・綾を唐田えりか、綾につきまとう元夫・若松克敏をゴールデンボンバーの
空気階段・水川かたまり インタビュー
──今日は主演俳優としてたくさんの媒体の取材を受けているんですよね。
はい。慣れないメディアの方々の取材を受けていたので(いつものお笑いナタリーが来て)ホッとしています。
──完成した作品をご覧になった率直なご感想をまず聞かせてください。
めっちゃ出てるなと思いました、自分が(笑)。そこがやっぱり気になって気になって。自分が映画のスクリーンにずっと出ているっていうのがすごく違和感がありましたね。僕、時々あるんですけど別のことを考えちゃうというか。映画の途中で、そんなわけはないんですけど、正名(僕蔵)さんが映画を観ている僕のほうを向いて「全部嘘だからな!」と言ってくる、みたいなイメージが頭の中に入ってきて、正名さんが出てくるたびにそういうことを考えていたら、あんまり集中できませんでした(笑)。
──主演のオファーを受けたときのことは覚えていますか?
あるとき、僕らの仕事が管理されているカレンダーをざっと見ていたら、「かたまり映画主演(仮)」というのが入っていました。間違いなくドッキリ番組だと思いました(笑)。「映画主演」なんてものすごくドッキリっぽいじゃないですか?(笑) 「もうちょっと騙せそうな感じで書いてくれよ」と思っていたら、マネージャーから「映画主演のお話が来ています」と台本を渡され、読んでみると「あれ? これは本当っぽいぞ?」と。実際にクランクインの日に現場に行ったところでようやく「本当に映画の主演なんだ」と実感が湧いてきました。そこで100%確信した感じでしたね。
──確信するまでに時間がかかりましたね。
そうなんです。なので初日まではそれほど気負わずにいられました。いざ現場に行くと、スタッフさんはいっぱいいるし、正名さんはいるし、知らない業界用語が飛び交っているしで……。本当に、超“借りてきた猫”みたいな感覚でした。「主演だから引っ張っていくぞ!」なんて気概は全然なくて、「とにかく迷惑をかけないように」「とにかく撮影が押さないように」ということを考えていました。
──台本を読んだとき、物語の内容についてはどう感じましたか?
まず、めっちゃいい設定だなと思いました。いつもコントを作るときも見るときも設定に注目してしまうので、コントを見て思う感覚に近かったかもしれません。最初の設定を見た段階で「いい映画確定だな」と思いました。田中監督の前作「メランコリック」を観たときも思いましたけど、「設定で引き込む」という部分にはすごくこだわりがあるんだろうなと思いました。
──普段やっているコントの演技とは違いましたか?
コントをやるときは、自分で考えたキャラクターなので自分の中にそのキャラクターの性格があるんですけど、今回に関しては監督の中にイメージがある。「人のイメージに近づけていく」っていうのはやったことがないので、普段のコントとは違いましたね。最初、動きながらワンシーンだけ読んでみたら、監督が「バッチリですね、言うことないです」みたいなことを言ってくれたんです。僕としては「そんなわけねえだろ!」と思ったんですけど(笑)。僕が緊張していたのでとりあえず和ませるために褒めてくれたのかなと思いつつ、それでまんまと自信がちょっとつきました。
──かたまりさんから見て、関谷一平はどういうキャラクターですか?
すごくピュアな人間。お笑いが好きで構成作家になりたくてなって、わりと忙しく仕事をしている彼の現状は、たぶん大多数の人が満足する環境ではありますよね。好きなことで飯が食えているわけですから。でも、その環境にいるのに「これは自分がやりたいことじゃない」とか、あれこれ考えて死のうとするところまで行くって、純粋すぎるゆえの弱さがある人間なんだろうなと思いました。
──かたまりさんご本人と重なる部分はありましたか?
近い部分もあると思います。やりたいこと、やりたくないことってけっこうはっきりしていて、やりたくないことに直面したときに「うわー」ってなることは僕もあるので。でも、僕は「これは全然やりたくないけどお金をもらえるしな」と思ってやるし、ホームから飛び降りようなんてまったく思わない。最初はやりたくなかったことも、やったらやったで「楽しかったな」とか思っちゃいますし(笑)。関谷一平ほど深刻なことは考えないけど、「気持ちはわかるよ」という感じでした。
──一平に取り憑く幽霊役の正名僕蔵さんとのバディはいかがでしたか?
正名さん以外とバディを組んでいたらもしかしたら僕は降板していたかもしれないっていうくらい、本当にお世話になりました。普段のコンビ以外の、例えばユニットコントやドラマに出るときに、「気持ちいいリズムになってないな」みたいなことってやっぱりどうしてもあるんですが、正名さんとは最初のシーンからすごくリズムが合って。もちろん正名さんが調整して合わせてくれている部分もあると思うんですけど、すり合わせたりもしていないのに「しっくりこないな」っていうのが全然なくて、すごくやりやすかった。いいバディでしたね。
──それはなぜだと思いますか?
好きな食べ物が一緒だからですかね(笑)。生きてきた環境が実は近かったとか? 理由はちょっとわからないです。
──撮影で印象に残っていることは?
アクションシーンです。喜矢武豊さんと格闘するシーンが2カ所ぐらいあって、そこはすっごい楽しかったです。アクション部の方に「こう動いたら激しく見えます」みたいなのを教わって。あと、血のりを吐いたり、タンスをバーン!と倒したり、お笑いの現場ではあまりできないこともやらせてもらいました。いくらぶっ壊してもすぐまた修復してくれて「もう1回撮りましょう!」ってできるのは、マジで映画だなって思いましたね。
──主演として映画の現場を経験して、「今度は自分が撮ってみたい」という気持ちにはなりませんでしたか?
それはないですね! やっぱり見ていて、ちょっとこれは難しそうすぎました(笑)。本当にちゃんと映画が大好きで、映画を学んできている人じゃないと、とてもじゃないけど監督業ってできないなと思いました。
──たとえばいい設定が思いついたときに「映画でやってみたい」という発想にはならない?
ああー、それは思うかもしれないです。舞台でやってウケるのが一番気持ちいいから全部コントでやってきたんですけど、こうやって映画の撮影に参加させてもらって、映画になったときの面白さってあるんだなっていうのは感じました。ただ、自分で監督をして撮ることはできないので、「こういう設定を思いついたので、どうですか?」っていう提案はもしかしたらできるかもしれません(笑)。
──誰か、腕のある監督さんに。
僕は何もできないので(笑)。でも、今まで自分で考えたものを映画にしようなんて考えたこともなかったので、それがもしかしたらできるのかもしれないと思えたのは、この映画に参加して今までとは違う視点が増えたってことだと思います。
(インタビュー撮影:吉本悠哉、スタイリスト:岩田沙帆、ヘアメイク:久保マリ子)
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