「もうその日の一番人気じゃない」ミキ昴生、寄席は観客からの「笑かしてくれ」という挑戦状

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9月17日(火)から23日(月・祝)まで、「東京グランド花月」が東京・IMM THEATERで開催される。「東京グランド花月」は、大阪で長い歴史を誇るよしもとの看板寄席「グランド花月」の東京版として2014年にスタート。吉本新喜劇と吉本興業の看板芸人たちによる珠玉のネタが楽しめる寄席公演だ。

左からEXITりんたろー。、EXIT兼近、ミキ亜生、ミキ昴生。

左からEXITりんたろー。、EXIT兼近、ミキ亜生、ミキ昴生。

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「東京グランド花月」チラシ

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このたびの公演に出演するミキEXITの取材会が先日、吉本興業東京本部で実施された。キャリアを重ねた今も毎年全国ツアーを開催し、ネタを作り続けている2組。「東京グランド花月」が芸人にとってどんな舞台か、そして寄席の面白さと難しさ、テレビでも活躍する今もなお劇場に立ち続ける理由を聞いた。

ミキ&EXIT インタビュー

──「東京グランド花月」はほかのイベントに出演するのとは気持ちが違いますか?

ミキ昴生 師匠が出はるっていうのが一番違います。東京でこんな大師匠方と一緒になることはないです。師匠のオーラとか凄みみたいなものも見ていただきたい。

EXITりんたろー。 先輩の芸も見られる。このキャリアになってもちゃんと作りづけている姿は刺激になりますし、ゆくゆくはこうなりたいって思わされます。

昴生 楽屋もピリッとなって、あんまり騒げないんです(笑)。兼近は髪の毛染めてこなあかんと思います。

EXIT兼近 ええ? 逆に失礼になりますよ。中途半端な芸になるので。これが芸ですから。

ミキ亜生 いつもスーツじゃない社員さんもスーツを着てきて、そのピリ付き感が芸人にも伝わっていつもより神聖な雰囲気になっていると思います。お弁当が豪華なんですけど、騒げない。「うわあ!」とか言えずに、もう選ばずスッと取ります。

EXIT(左)とミキ(右)。

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──寄席の面白さ、難しさは?

昴生 お客さんが芸人目当てに来てないんですよ。NGK(寄席形式の公演)では、出演者も決まっていない半年前でも観光客の方で満席になるんです。ということは、誰が出るとか関係なくNGKを目がけて来てる。「とにかく笑わせてくれ」と。そういう環境はこっちもドキドキします。僕ら目当てで来ていないお客さんが「笑かしてくれ」と。こんな挑戦状ないと思います。お客さんも毎回変わって、リアクションも全部違うから、全部が全部違う舞台になるのは寄席だけなんちゃうかな。ファンが集まるライブやったら、その人たちが喜ぶことを言ったら笑うじゃないですか。寄席はそうじゃないお客さんだから、どうにかして実力で笑かなあかん。だから「東京グランド花月」に出る人たちはそれができるとよしもと内で認められている人たちです。

亜生 この前、NGKでミルクボーイさんが「ありがとうございますー!」っていうつかみをやったら客席のおじいさんが花束を持ってきて。そんなことが寄席では起こるんです。あと、サバンナ八木さんが「“関節”キッス!」っていうギャグしたら、お客さんから「帰れー!」と言われていました(笑)。普通のライブでそんなの見られないと思います。

兼近 寄席のときはしゃべりとか動きとかを“チャラく”します。我々のことを観に来てくれた人の前ではこのままでしゃべっているんですけど、初めて見てくれる人が多いところでは、わざとちょっと姿勢も悪くして。

昴生 そんなからくり言うなよ! 常にチャラくいてよ!(笑)

亜生 僕も、寄席のときは「お兄ちゃん」じゃなくて「兄ちゃん」って言ってます。

昴生 何が違うん?

亜生 わかりやすく!

りんたろー。 自分たちもあの手この手を試したいから、りんたろー。が前に出るようなネタも最近は作っているんですけど、寄席だと「早く兼近にしゃべらせろ」みたいな空気が(笑)。いつかそれをひっくり返したいです。

──「東京グランド花月」の出演者はテレビでも活躍しながら今でもネタを作って舞台に立ち続けている芸人さんばかり。お二組がネタ作りや舞台に立つことをやめない理由をあえて今、改めて聞かせてください。

昴生 (ネタ作りを)苦と思ったことが1回もないです。これが職業なので。これをやるためによしもとに入ってきたし、これを苦と思うんやったらやらんかったらええだけ。ネタが中心にあって、テレビやラジオの仕事もあると思っているので、ネタがなくなっちゃったら全部がなくなります。もちろん芸人さんによって何に重きを置くかは違うでしょうけど、僕らはそう。たまに、一過性でネタに力を入れだす方がいるじゃないですか。よしもとは劇場があるから、それができてしまう。謹慎したあとに「劇場から復帰します!」とか言う人もいますけど、いや俺らずっと劇場出てるから! なめんな!って思います(笑)。

亜生 もぎりや! チケットのもぎりから復帰せえ!

昴生 ほんまやな(笑)。毎日舞台をやってる僕らからしたら、何を当たり前に立てると思ってんねん!という気持ちにもなりますよ。

──EXITも毎年全国ツアーをされていて、ネタ作りを続けています。

兼近 その理由を改めて聞かれると困りますね(笑)。ミキさんとまったく一緒です。もともと僕ら、別々のコンビだった頃からネタしかやってこなくて、たまたま急にテレビに呼ばれて知ってもらった。僕らのことをテレビで知った人も多いと思いますけど、歴で言ったら劇場に立っている時間のほうがどう考えても長いんです。それが当たり前だったので、今も当たり前にやっているだけですね。

りんたろー。 何も成し遂げてないのに、舞台に立ってるとたまに「EXIT偉いね!」って言われるんですよ。

兼近 あれ嫌ですよね(笑)。ずっとやってはいるし、「偉い」とかではないはずなんですけど。

りんたろー。 (ミキは)劇場のスケジュールを取って、そこはテレビ入れないようにしてますよね?

昴生 僕らはずっとそれ。

りんたろー。 急に兼近がそれをやりだしたので、最初はちょっと抵抗ありました。

兼近 3年くらい前から急に「休み取ってください、その時間劇場入れてください」って。ちょっとテレビに疲れすぎて。同じことをしてても劇場はリアクションが違うじゃないですか。同じネタを同じようにやっているのに、イカれる(=スベる)ときもあって、そういうときワクワクします。まだやれるんだって。まだ全然勉強不足だって日々痛感できる。テレビはウケない話してもウケてる感じにしてくれるので、わけわかんないんですよね。

昴生 まずウケない話すんな!(笑)

──舞台に立ち続けていて感じるお客さんの変化はありますか?

亜生 感度が高くなっている気がしますね。

昴生 観るものが多くなってるからどうしても感度は高くなるし、今はいろんなお笑いがあるから、お客さんが求めているお笑いもさまざま。ターゲットを絞りやすくなったけど、いろんなものがある中でお客さんに合わせるんじゃなく、自分で見つけていく作業が漫才をやっていく上でずっとあるものなんやなって感じます。自分たちはもう“若手”として見られていないと思うし、次のところを見据えていかなあかん。僕ら目当てのお客さんって少なくなってきていて、確実に“その日の一番人気”ではないんです。出ていってワーワーキャーキャーじゃない。でも、いずれそうなるのはわかっていたこと。ずっとワーキャーなんてわけないし。次はいよいよ「ミキも出てるんや」のところに来ていて、一番目当てのその芸人に勝たなあかん。となると、ほんまに実力になってくるし、それで勝っていくことができれば「実は劇場でミキすごいらしい」っていうのを風の噂で流してもらえるんかなと。で、次また上に上にって上げていくしかないなって思います。

亜生 お兄ちゃん自身も次のフェーズに入ってて、「最年少老害」と呼ばれてます。

昴生 言うなそれ! いろんなところで。思ってもないフェーズやから。

亜生 劇場でいろんな若手見て、「挨拶弱いな」「衣装がちゃんとしてない」とか。コンビとしても個人としてもフェーズを変えてます。

昴生 これを老害と捉えられるというね。とんでもない世の中ですよ。当たり前のこと言ってるだけなのに。

──EXITは?

兼近 僕らはお客さんの変化ってあんまり感じていなくて。僕らを観に来るのってけっこうマダムが多いんですよ。

昴生 EXITはそうよね。そういう、自分たちとは違うお客さんを連れて来てくれる存在も劇場におらんとあかんなと思いますし。

亜生 どう見ても俺のファンだなっていうピンク髪の方とかもいます。

りんたろー。 ただ、結婚のネタをやったときに、兼近のファンが悲鳴上げちゃって。だから僕は兼近のファンを駆逐していきたいなと思ってます。

昴生 お前が駆逐されろ!

亜生 でも、元祖兼近って僕ですからね。な? お兄ちゃん、なあ?

りんたろー。 ダサ!(笑)

亜生 2018年くらいから(兼近が)人気をかっさらっていきましたけど。

昴生 確かに、(亜生の)ワーキャーすごかった。僕が「うるさいねんボケ!」ってお客さんに言ったら、「お前には(ワーキャー)言ってないねん」という空気になってました(笑)。

兼近 昴生さん、元祖りんたろー。じゃないですか!

亜生 だから、もともと僕らがEXITだったんです。

昴生 お前ら見てて「懐かしいなー」って思うわ。

EXIT(左)とミキ(右)。

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──そのときのお客さんは?

亜生 全部EXITのほう行きました!

昴生 若い子が本当にいなくなりました。

亜生 ツアーのお客さん見てください。おじさんばっかり!(笑)

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東京グランド花月

日時:2024年9月17日(火)~9月23日(月・祝)
会場:東京・IMM THEATER
料金:前売5500円 当日6000円
<出演者>
新喜劇:アキ(座長) / 末成映薫 / 島田珠代 / 高井俊彦 / 千葉公平 / 五十嵐サキ / 吉岡友見 ほか
中田カウス 漫才のDENDO / パンクブーブー / サルゴリラ / メンバー / インディアンス / 霜降り明星 / 令和ロマン / 銀シャリ / アインシュタイン / 見取り図 / ビスケットブラザーズ / ヨネダ2000 / 博多華丸・大吉 / ザ・パンチ / ジャルジャル / マヂカルラブリー / すゑひろがりず / マユリカ / ミキ / オール阪神・巨人 / 2丁拳銃 / NON STYLE / 兼光タカシ / アキナ / EXIT / 紅しょうが / フットボールアワー / 陣内智則 / とろサーモン / トレンディエンジェル / ヘンダーソン / シシガシラ / 月亭八方 / タカアンドトシ / チュートリアル/ あべこうじ / ガクテンソク / コットン / 令和ロマン / 桂文枝 / レイザーラモン / ギャロップ / アインシュタイン / ニッポンの社長 / ゆにばーす / 空気階段 / ショウショウ / 佐久間一行 / トータルテンボス / さや香 / フースーヤ / ロングコートダディ / ニューヨーク / ダブルヒガシ / 天才ピアニスト / ダブルヒガシ ほか

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