お笑い好きの私たちに「忘れられないあのライブ」があるように、芸人にもそんなライブがあるだろうか? ウケた、スベった、隣の芸人が爆笑を取って悔しかった……出演者として体験した「忘れられないあのライブ」、そしてお客さんとして心揺さぶられた「忘れられないあのライブ」について、芸人たちに聞いてみる。第4回は
取材
忘れられない“出た”ライブ
移住も頭をよぎった、インドネシア大フィーバー
多田 2014年にインドネシアで出演したライブが思い出に残っています。当時、「あたりまえ体操」のインドネシア語バージョンの動画をネットにアップしたら1週間で100万回以上再生されて、現地でブームになっているという噂を聞いたんです。そのあと実際にインドネシアに行って、アイドルグループ・JKT48のライブに出演することになったんですが、観客は僕ら目当てじゃない男性ファンばかりだからアウェーですし、そもそも本当にブームになっているのかも半信半疑で……。いざ出ていったら5000人くらいのお客さんが「ブワァーッ!」って盛り上がって、「あたりまえ体操」の音楽が聞こえないくらいの大歓声が起きたんですよ。信じられない気持ちでいっぱいでした。2人とも興奮状態で舞台裏に戻ってきたときに、相方が「売れたな……」って(笑)。そのときのしみじみとした声が今でも忘れらません。
善し インドネシアで「売れた」と確信しました。日本よりも強く確信しました(笑)。
多田 みんなで大合唱してましたからね。「異国の地」「ホンマにみんな知ってんのか」という不安がフリになっていて、そこからの振れ幅がすごくて、一番印象に残ってる盛り上がりです。地獄からいきなり天国に突入する感覚というか。
善し 海外なのに目の前の5000人全員が自分たちを知っている……これは味わったことのない感覚でした。一瞬、移住も頭によぎりました。
多田 「インドネシア住みます芸人」な(笑)。マジでちょっと考えました。
グレーの帽子と運命的な出会い
善し いまだに忘れられないのは
忘れられない“見た”ライブ
くまだまさしの伝説
多田 デビューして間もないオリエンタルラジオがヨシモト∞ホールを熱狂させていた時期があったじゃないですか。そんな2人が初めてルミネtheよしもとの若手公演に出ると話題になったときのMCが僕らだったんです。いざ当日になったら女子高生を中心としたお客さんで満席だったんですけど、なんらかの理由でオリラジが直前で出られなくなってしまって、その代役が
不安になるくらい衝撃を受けたトークライブ
善し 芸歴1年目のときに2丁目劇場で見た
オカンと行ったYOSHIKIディナーショー
多田 お笑い以外でいうと、10年以上前に東京のホテルでYOSHIKIさんがToshlさんをゲストに迎えてやったディナーショー。うちのオカンがX JAPANのファンなので、親孝行も兼ねて大阪から呼んで一緒に観に行ったんです。そしたら開演が2時間近く押して(笑)。でもそれに対して誰1人として文句を言わず、YOSHIKIさんとToshIさんが出てきたら、全員が「ウワァーッ!」と盛り上がるんです。まるで待っている時間がなかったみたいに(笑)。「見れただけで十分」「2時間押しても全然大丈夫」と思わせるような2人のオーラやカリスマ性が本当にすごくて、かなり記憶に残ってます。
COWCOWが「劇場番長」と呼ばれるようになったのはいつ?
多田 僕らが最初に「劇場番長」と呼ばれたのは、2007年に放送された「やりすぎコージー」(テレビ東京系)でした。テレビにはあまり出ていないけど劇場でがんばっている芸人として今田耕司さんが、はりけ~んずさん、ショウショウさん、COWCOWを紹介してくださって、その企画の名前が「劇場番長」だったんです。そのあと、「爆笑レッドカーペット」(フジテレビ系)でも紹介時のキャッチコピーに「劇場番長」という言葉が採用されて、広く定着した気がします。
善し 劇場番長と呼ばれて、ルミネの公演で後半出番やトリをもらえるようになってからは、「寄席ではしっかりと確かなことをする」という意識が強くなりました。コース料理でいうとメインやデザートの部分なのでごまかしが効かないんです。
多田 ルミネでトリを任せてもらえるのはとてもうれしいんですが、プレッシャーもすごいです。普通は芸歴を重ねるごとに緊張がなくなっていくイメージがあると思うんですけど、僕の場合は昔より緊張するようになってきた(笑)。自分たちで公演が終わるというのは、自分たちのネタ次第で観に来てくれたお客さんの満足度が変わってくるということですからね。
善し 破天荒にやったりアドリブを入れまくるスタイルもあるとは思うんですけど、自分たちの場合は余計なことをせずに確実に笑いをとることを大切にしています。
単独ライブに向けて
2008年から毎年、単独ライブを続ける理由
多田 「M-1グランプリ」や「キングオブコント」に1年間命がけで挑戦している後輩がたくさんいる中、僕らも怠けていられないという意識はありますね。
善し 「絶対に毎年やり続ける!」と気合いを入れているというよりは、毎朝走ることが習慣になっているので今さら止められないという感じかもしれません。新しいネタをやる緊張感がないと“走るのを止めてしまった感”が出てしまうというか。
多田 継ぎ足しで受け継がれてる鰻屋のタレやおでん屋の出汁にも近いと思っていて、定期的にライブをしていないと、自分たちの味が守れない。観に来てくれる人に「今年のCOWCOWも新しいことをしつつ、いつも通り面白かったな」と思ってもらうのが、単独ライブをやる最大の理由かもしれません。
実験的なネタや挑戦的なネタでワクワクして
多田 今年は「COWCOW 29th LIVE」と題して、10月9日から愛知、福岡、東京、大阪を巡ります。ルミネの本公演などではしっかりしたものや確かなものを見せるという心構えですが、単独ライブでは実験的なネタをやりたい。挑戦的な笑いとおなじみの笑いを織り交ぜた内容にする予定です。
善し 今年しか見られないネタもたくさんやります。最近は何をやるかが事前にわかってるほうがお客さんも来やすいとは言われてるんですが、僕からするとお笑いって「何が起こるかまったくわからない」という状況で観るのが一番楽しいと思うんです。なので「何が見れるんやろう」というワクワク感を抱きながら来てほしいです。
多田 今回は特にポスタービジュアルにも力を入れてまして、すごく気に入っています。COWCOWが29周年なので、「29(ニク)」ということで焼肉屋の前で撮影しました。今の僕らはちょうど脂が乗ってる時期だという意味も込めつつ(笑)。撮影したのは後輩のぼんちきよしくん。会場のみですが久々にポスターも販売しようかと思っているので、ぜひよろしくお願いします!
善し ライバルとなるエンターテインメントはたくさんありますけど、今一度「COWCOWの単独ライブ」を選択してほしいと思います。COWCOWのライブに来たことがない人も、昔来ていた人も!
今注目の芸人は?
善し アート芸人として注目されてる
多田 たくさんいすぎて誰を挙げるかを決めるのが難しいですけど……
COWCOW
多田健二(ただけんじ)
1974年8月8日生まれ、大阪府出身。
善し(よし)
1974年10月19日生まれ、大阪府出身。
中学・高校の同級生だった多田健二と善しがNSC大阪校に12期生として入学し、1994年にコンビでデビューする。1999年に「NHK新人演芸大賞(演芸部門)」で大賞を受賞し、2001年には東京に進出。2007年に放送された「やりすぎコージー」(テレビ東京系)で“テレビ出演は少ないが、劇場でがんばっている芸人”として紹介され「劇場番長」と呼ばれるようになる。2011年頃より「あたりまえ体操」のネタが人気となり、インドネシア語バージョンは現地でもブームとなった。2015年には「歌ネタ王決定戦」で優勝している。
COWCOW 29th LIVE
チケット:FANYチケットで販売中。
日時:2022年10月9日(日)18:00開場 18:30開演
会場:愛知・今池ガスホール
料金:前売1800円 当日2000円
日時:2022年11月5日(土)18:00開場 18:30開演
会場:福岡・よしもと福岡 大和証券/CONNECT劇場
料金:前売2500円 当日 3000円
日時:2022年11月25日(金)19:00開場 19:30開演
会場:東京・ルミネtheよしもと
料金:前売3000円 当日3500円
日時:2022年12月23日(金)19:00開場 19:30開演
会場:大阪・なんばグランド花月
料金:前売3000円 当日3500円
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So-net【公式副音声】 @Sonet_fukuonsei
㊗️10月19日は🎙️COWCOWの善しさん@cowcow44cowの誕生日です🎊お誕生日&あたりまえ体操11周年おめでとうございます㊗️COWCOWが語る、熱狂のインドネシアライブや毎年続ける単独公演 | 忘れられないあのライブ 第4回 https://t.co/AcgN69WEnJ