今回は本番までの日々を振り返ると共に、終演直後の溜口さん、
取材・
ちょうど1年前
2021年7月9日、「溜口スーパードリームショー~新・世界で一番熱い夏~」が東京・さくらホールで開催されました。当初は今日からちょうど1年前の2020年7月26日に開催予定でしたが、新型コロナの感染リスクを考慮した結果中止に。残念な思いをさせてしまったみなさんに1年間、楽しみに待っていてもらえるようこの連載をスタートさせました。占いから始まり、ダイエット、歌やダンスのレッスン、高佐さんとの対談など、さまざまな体験を通じて成長してきた溜口さん。34ページ(1人コントパートを除く)にわたる「ドリームショー」の新しい台本には連載企画で経験したことのエッセンスもたくさん盛り込んでくれました。
高佐さんを「クニさん」呼び
先月6月末、約1年ぶりの稽古がスタート。大筋は以前のものを踏襲しつつも、カットしたり新たな笑いを足したりしてよりシャープになった台本が用意されました。稽古初日に参加したタッカーノさんと玉さんは、それを新鮮に楽しみながら読み進めます。休憩中の雑談で、これまで以上に高佐さんと打ち解けるため「クニさん」とあだ名で呼ぶ案が浮上(連載第6夜参照)。まずは特攻隊長として玉さんがその第一声を任されましたが、稽古日程を重ねても一向にチャレンジする気配がなく……。公演前日、最後に集まった場で、今日こそ決行するよう念を押される玉さん。ラストの歌を全員で合わせたあと、あくまで自然に「クニさん」呼びを会話に織り込ませると、聞き間違いだと思ったのか高佐さんはそれをスルー。2回目の挑戦、今度はハッキリと言い放った「クニさん」でようやく反応してくれました。
テキサスの風で飛んでいくマイク
本番当日、リハーサルが始まる前の様子は、客席から舞台の見え方を確認する溜口さん、楽屋で1人歌とハープを練習している高佐さん、おいしそうなケータリングを狙う玉さん、緊張気味に小道具を確認するギガさん、そんなギガさんをイジって和ませるタッカーノさんと、みんなそれぞれ。スタッフのアイデアを結集して完成させた、「ゴールデンマイクがテキサスの風で飛んでいく」という演出をこの日初めて実践してみると、今にも「ぴゅー!」と音が出そうなほど勢いよくマイクが飛んでいくさまに全員が歓喜します。
“あれ”をやっていざ本番
これは、本番3日前に撮影されたライブナタリー用の告知動画。
ぬるーっと5人がやっているのは、互いのピースサインをくっつけて星型を作る、SMAP「友だちへ~Say What You Will~」のジャケット風のポーズ。どういうわけで「あのポーズをやろう」となったのかは誰も覚えていませんでしたが、稽古場でのそんなノリを思い出し、本番直前は例の“あれ”で気合いを入れていざ舞台に立ちました。ライブはお笑いナタリーで掲載しているレポートの通り、盛況のうちに終幕。グッズも好評で、4曲入りダウンロード音源のみナタリーストアで販売しています。残りわずかなのでお早めに。
終演後インタビュー
座長そっちのけで達成感に浸る
──お疲れさまでした!
ラブレターズ溜口 無事終わりましたね! みなさんどうでした?
肉体戦士ギガ 始まる前、緊張しすぎてました!
溜口 今日来たときからそわそわしてたもんね?
ギガ 高野さん(=タッカーノ)からも「緊張しすぎだろ!」って言われて。たぶん高野さんは人に言うことで自分の緊張をほぐしてたんだと思いますけど。
タッカーノ ま、結局舞台立ったら緊張しますねえ。
ギガ するんかい!
溜口 このギガちゃんの口数の多さで安心したんだなってわかるよ(笑)。
ギガ 普段マジでしゃべらないですからね(笑)。
ターリーターキー玉 オープニングのダンス、お客さんから見て緞帳に私たちのシルエットが映っていたのよかったですよね。あれカッコよかった。
ザ・ギース高佐 本番、幕が上がっていくところも動画で撮ってグループLINEに送っといたよ。
一同 うわ! ありがとうございます!
玉 高佐さんのハープの場面って私たちは稽古中めっちゃ笑っていたじゃないですか。でも本番、お客さん圧倒されてましたよね。
高佐 たまにある現象なんだよ。単純に、音色のよさでうっとりとさせてしまうっていう(笑)。
タッカーノ 感動のほうにいっちゃった(笑)。
高佐 俺も「あれ? 笑い来ないな」って思ったんだけど、「そうか、お客さんは“芸人・高佐”じゃなくて“ハープ奏者・高佐”を見に来てるんだ」ってそこで気づいて。
玉 私、いつもの感じでふふって笑っていたんですけど、「あれ? お客さん感動してる!」って思って急いで真面目な顔しました。
高佐 生音の強さね。
タッカーノ 僕はあそこがうれしかったです。高佐さんの「そんなんでいけるか?」がウケたところが。
玉 「おしまいじゃないか!」の高佐さんの顔もめっちゃ面白かったですよね。
タッカーノ ちゃんと人生終わりの顔してましたよ。
ギガ あとヒップアタックのところで……。
溜口 ちょっとあの、皆さん達成感がすごすぎて僕を忘れてませんか?
一同 あ……。
溜口 なんで入れてくれないのよ。座長だよ?
高佐 座長がすごいのはもうわかってるからさ。
タッカーノ 当たり前のことですから。
溜口 稽古中もそうだったじゃない。「今日の稽古の写真です」ってその日の夜にグループLINEに送ったのに、次の日の夕方まで既読0だった!
一同 あはははは!(笑)
溜口 なんなんだよ! せつないなあ。
ギガ そんなわけないけどなあ。
タッカーノ 意図してないですって。
玉 すぐ保存してたと思いますけどね?
溜口 今のほっとかれている感じ、あのときのグループLINE思い出したよ。
玉 いやでも、溜口さんの本番前の眉毛のメイク、あれなんだったんですか?
タッカーノ 一番このライブをバカにしてたじゃないですか。
溜口 バカにしてないよ!
ギガ 完全にコントメイクでしたよね。
溜口 コントメイクじゃない、舞台映えするメイクです! 本番直前にみんなに責められて、あれで1個テンションも下がったし。「メイク変だよ!」「ふざけすぎだよ!」って言われて。
玉 変でしたもん。
高佐 変だった。
タッカーノ 変でしたよね?
──変でしたね。
溜口 なんですか! みんなして。
誰の“歌のチカラ”?
高佐 (仕切り直して)いやーでもどうだった? 溜ちゃんは。
溜口 安心しましたよ。「ここでウケるんだ」とか、反応を見られて新鮮でしたし。「溜口スーパードリームショーに行ってくるね」って家族に言って家を出たお客さんもいると思うんですけど、自分でも何言ってるかわかってなかったと思うんですよ。「溜口スーパードリームショーってなんなんだよ」って。でも、実際に観てもその疑問は解決しないというか(笑)。「なんだったんだ、あれは」っていう、本当に一夜限りの夢みたいな公演内容だったと思います。
──言葉では説明しがたいかもしれませんね。「溜口スーパードリームショーです」としか言い表せないような。
溜口 「お笑いライブを初めて生で見ました」って言ってくれた方もいたんですけど、「これをお笑いライブと言っていいのか?」っていう(笑)。
高佐 でもめちゃくちゃいいライブだと思ったな。こんなのないもん。
溜口 「ドリームショー」というものの正解が見えた気がしましたよね。
高佐 本番前もみんなで言ってたけどさ、本当に全国回りたいよ。
玉 回りたいです! この一座で。
溜口 いけますかねえ?
タッカーノ お笑いあって音楽あってダンスあってローラースケートあって、エンタメの全部が入ってるじゃないですか。
玉 ローラースケートを取り出すのは私の役割でしたけど、出したときのお客さんの反応がすごかったです。「待ってました!」みたいな。
溜口 こっちはローラースケートでこんなにウケる人生だとは思ってないから(笑)。いっぱい隠し玉があってよかったよね。高佐さんの弾き語りもそうですけど。
高佐 「ロード」はバシッと決まったね。
玉 決まってましたねえ!
※編集部注:高佐さんのハープ伴奏で、溜口さんと高佐さんがTHE 虎舞竜「ロード」でデュエットを披露。溜口さんはローラースケートで高佐さんの周りを滑ったり、ブルースハープを奏でたりもしました。
溜口 あれはちょっと路上でやりたいです。
高佐 路上ではやりたくないよ! なんでさくらホールでやったあと路上でやるんだよ(笑)。
溜口 それくらい、知らない人が見ても心を動かされるものだったと思うんですよ。
タッカーノ 高佐さんが本格的にハモり出したのって今日のリハからですよね。すごくないですか?
ギガ めちゃくちゃよかったです。
玉 自然と拍手が沸き起こってましたもんね。
溜口 誰も予想していないところで変な感情を揺さぶるライブになったよね。知り合いの方もたくさん来てくれたんですけど「『ロード』で泣きそうになった」ってけっこう言われて。
──開催発表時に溜口さんがコメントしていた“歌のチカラ”が届いたんじゃないでしょうか(参照:いざ世界へ!ラブレターズ溜口が1人で歌い踊る「スーパードリームショー」開催)。
高佐 いや、それなんですけど、冷静に考えて、虎舞竜さんの手柄なんじゃないかって思ってて。
一同 あはははは!(笑)
タッカーノ そもそもそうか!
ギガ オリジナル曲みたいに思っちゃってましたけど(笑)。
高佐 「『愛は勝つ』でめちゃくちゃ泣きました」とか言ってもらえてうれしいんだけど、すごいのはKANさんなんだよなーと。
玉 でも溜口さん、「令和の救世主」って言われてましたよ?
溜口 それはKANさんがだよ!(笑) 今、誰が「愛は勝つ」を歌ってもみんなああいう気持ちになるんだよ。
溜口座長の非情采配
──皆さん悔いなくやり切れましたか?
玉 私、本番が一番うまくできました!
タッカーノ 僕はちょいちょい甘噛みしちゃって悔しいですね。三宅裕司さんのくだりもちょっと変な間を作っちゃったしなあ。次回のために、プライベートでギガと練習しておきます。
ギガ そうしましょう。
溜口 いや、大丈夫です。もう次はないです。
一同 えっ……?
溜口 ミスった人はもうここで。
タッカーノ 終わりですか!?
溜口 はい。
ギガ めちゃくちゃスパルタだった……!
溜口 玉ちゃんと高佐さんはバッチリで、えーと高野くんは? ミスったの?
タッカーノ ちょっと、はい……。
溜口 わかりました。じゃあもうこれで。ありがとうございました。
高佐 うわ、やば!(笑)
ギガ スーパーMCが切られた。
溜口 原(辰徳)監督もこういう非情采配するんで。丸(佳浩)選手を二軍に落とすくらいのことを。高野くんの代打はコネオで行きます。
一同 ええ!?
タッカーノ 万物の後輩、コネオ・インターナショナル……!?
溜口 コネオの低姿勢MCでやっていくよ。高野くんには1回ファームで鍛えてもらって。
玉 そういう溜口さんはミスないんですか?
溜口 ローラースケートでちょっとグラっとはしちゃったかなあ。
タッカーノ あと、僕のセリフが終わってないのに被ってきたときありましたよね?
溜口 だったらどうなるんだよ、俺は?
タッカーノ クビです。
溜口 クビ!? 代わりは?
タッカーノ 塚本さんです。
溜口 え、「塚本スーパードリームショー」?
高佐 アサラトショーだ。
玉 盛り上がるんですかね?
溜口 代々木公園のフリーライブじゃん。日曜日の昼間にやってる民族楽器フェスティバルだよ。ま、でも冗談はさておき、このメンバーを信頼していますから。高佐さんもこれに懲りずに次回もお願いします。
高佐 めちゃくちゃ楽しかったので、ぜひ。みんなからも「クニさん」って呼ばれ始めたし。ここで「あ、ちょっと僕はもういいや」って言ったらまたとっつきづらいと思われちゃうから。
ギガ 実際とっつきづらい方なんですか?
高佐 そんなことないよ。気さくな兄さんだよ(にっこり)。
このショーが皆さんの人生を明るく照らす材料になったらいいな
──改めて、この1年の延期を経て開催できたことを溜口さんはどう感じていますか?
溜口 去年は延期になって残念でしたけど、今はこの1年があってよかったなって思いますね。パワーアップした台本とパワーアップしたみんなのスキルが合わさって、去年より絶対いいものになったはずですし。
ギガ 溜めてきた思いもありますしね。「できなかった」っていう悔しさとか。
玉 絶対今年はやれるって思って楽しみにしていましたもん。
タッカーノ 僕も菅田将暉主演映画のオファーが来ても「溜口スーパードリームショー」を取るって決めていましたから。
溜口 ありがたいよ(笑)。しかも今、これだけたくさんのお客さんの前に立てることがほとんどないので、うれしかったですね。このショーが皆さんの人生を明るく照らす材料になったらいいなと思います。
玉 こんな広い舞台でできてめっちゃ楽しかったですよね。
高佐 僕らからしたら、「ナタリーさんありがとうございます!」っていう気持ちだけです。
──とんでもないです。こちらこそです。
溜口 いや本当に。ズブズブでよかったですよ。
タッカーノ うわ、やっぱりズブズブなんだ(笑)。
「溜口スーパードリームショー~新・世界で一番熱い夏~」キャスト
溜口佑太朗(タメグチユウタロウ)
1985年1月19日生まれ、埼玉県出身。2009年4月より相方・塚本直毅(ツカモトナオキ)とラブレターズとして活動する。2011年、2014年、2016年「キングオブコント」ファイナリスト。ASH&Dコーポレーション所属。
タッカーノ
1988年3月1日生まれ、東京都出身。以前組んでいたトリオ・リンゴスターで「キングオブコント2014」決勝に進出した。現在はピン芸人として活動中。プロダクション人力舎所属。
肉体戦士ギガ(ニクタイセンシギガ)
いつかの冬生まれ、Earth出身。2020年、イベント「ハイスクール人力舎」内の「JINRIKI賞レース『小木校長杯』」で初代チャンピオンに輝いた。プロダクション人力舎所属。
玉遥香(タマハルカ)
1989年8月13日生まれ、大阪府出身。2015年に伊藤那美(イトウナミ)とターリーターキーを結成した。2020年「女芸人No.1決定戦 THE W」ファイナリスト。同年「白黒アンジャッシュ」(チバテレ)内の「白黒-1グランプリ」で優勝を果たす。プロダクション人力舎所属。
高佐一慈(タカサクニヤス)
1980年9月2日生まれ、北海道出身。尾関高文(オゼキタカフミ)とザ・ギースとして活動。「キングオブコント」では4度決勝進出している。2019年「ゴッドタン」(テレビ東京系)の企画「ネタギリッシュNIGHT」チャンピオン大会で優勝。ASH&Dコーポレーション所属。
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