「(たぶん)まだ誰も調査していないM-1データ」

(たぶん)まだ誰も調査していないM-1データ 第1回 [バックナンバー]

歴代ファイナリストで掴みのスピードが最速だったのは誰か?

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今年で16回目を迎えた漫才頂上決戦「M-1グランプリ」。昨年王者・ミルクボーイに続く新チャンピオンは誰なのか、お笑いファンの注目が集まっている。

お笑いナタリーでは12月20日(日)の決勝大会を前に、これまでの「M-1グランプリ」を独自に調査したデータで振り返る連載「(たぶん)まだ誰も調査していないM-1データ」を開始。初回のテーマは「歴代ファイナリストで掴みのスピードが最速だったのは誰か?」だ。

審査員の博多大吉は2017年大会の最終決戦でとろサーモンに票を入れた理由を「掴みのスピードが一番速かったから」と語っており、一発目の笑いが起こるまでの速さは時に重要な審査ポイントになることが伺える。これまでに決勝で披露された183本のネタを調査した結果、ネタ開始から最初の笑いが起こるまでの平均時間は18.61秒。10秒以内に笑いが起きたのは50本だった。この記事では掴みのスピードランキングTOP10を紹介する。

/ 塚越嵩大

データでおさらいする「M-1グランプリ」

  • 「M-1グランプリ」は2001年にスタートした漫才頂上決戦。優勝賞金は1000万円
  • 第1回大会に参加したのは1603組。エントリー総数は年々増加傾向にあり、2020年は過去最多の5081組がエントリーした。
  • これまでのファイナリストの総数は77組(2020年含む)。決勝進出回数の最多記録は笑い飯9回
  • 優勝者の最年少記録は霜降り明星・粗品の25歳329日、最年長記録はとろサーモン久保田の38歳66日
  • 決勝1stラウンドの歴代最高点はミルクボーイの681点(審査員1人あたりの平均点で算出した場合)。審査員個人ごとの最高得点は、2009年に島田紳助が笑い飯に付けた100点
  • 決勝でこれまで披露されたネタは183本。もっとも多くネタを披露したのは笑い飯14本

歴代ファイナリストの掴みスピードランキング TOP10

各コンビがマイクの前に立って話し始めた瞬間から、一発目のボケで笑いが起きる瞬間までを“掴みスピード”として計測した。

10位:千鳥(2004年)3秒56

「また1番や」

2003年大会の決勝でトップバッターとなり最下位に沈んでしまった千鳥は、翌2004年大会でもトップバッターに。番組冒頭の出番順抽選でショックを受けていた様子の大悟は、ネタに突入しても「また1番や」とボヤき、さっそく会場の笑いを誘った。なお3秒56という記録は歴代トップバッターで最速。1番手は観客が温まりきっていないため不利とされる風潮を逆手に取る掴みだった。

9位:ますだおかだ(2001年)3秒54

「松竹芸能のますだおかだです。不利不利ー!」

第1回大会では、審査員7名のほか、札幌、福岡、大阪の会場に集まった300名の一般審査員が1人1点の持ち点で審査に参加した。そんな中、4番手のアメリカザリガニに対する大阪会場の点数が極端に低かったため、審査委員長の島田紳助は「大阪の低さはなんでしょうね。吉本の劇場でやってるから松竹(芸能)の彼らはアウェーになってしまったんでしょうか」とコメント。アメリカザリガニ柳原は「そんなことない! そんなことない!」と気丈に振る舞っていたが、会場には「吉本芸人が有利なのでは」という雰囲気が漂っていた。その後、8番手で登場したますだおかだは「松竹芸能のますだおかだです。不利不利ー!」と事務所の名前を強調しながら自己紹介。これまでの審査結果をフリにした自虐的な発言にスタジオはおおいに沸いた。

8位:笑い飯(2004年)3秒50

「どうも優勝候補です」

2003年大会で決勝3組に残り、爪痕を残した笑い飯。優勝候補と目された翌2004年の決勝では「お待たせいたしました、笑い飯でございます」「どうも優勝候補です」と自信満々に挨拶して観客の心を瞬時にキャッチした。同大会での笑い飯の最終順位は5位。2004年の自己紹介は2005年大会の笑い飯の紹介VTRで流され、「自ら優勝候補と宣言した昨年、まさかの5位」という悲しいナレーションを付けられてしまった。

7位:南海キャンディーズ(2004年 / 2本目)3秒30

「ドーン」

コンビ結成わずか1年で2004年大会に彗星の如く現れた南海キャンディーズ。1stラウンドでは、彼らに馴染みのない東京の観客を爆笑させ、審査員からは「漫才とコント、会話と動きをうまくミックスさせて最高」(西川きよし)、「山里くんの言うことが1つも外さないのがすごい」(ラサール石井)と称賛された。ファイナルラウンドでは、しずちゃんが通常の「バーン(ピストルを打つ仕草)」をアレンジした「ドーン(大砲を打つ仕草)」という掴みを披露。山里の「大女の大砲で幕を開けましたー!」という宣言も相まって客席のボルテージを瞬時に上昇させた。

6位:ジャルジャル(2018年 / 1本目)2秒92

「後藤でーす」「ジャルジャルでーす」「福徳でーす」

2018年大会で見せたジャルジャルの挨拶「どうも、後藤でーす」(後藤)、「ジャルジャルでーす」(福徳)、「福徳でーす」(2人)は、セリフの順番を入れ替えるというシンプルなものだったが、その単純さゆえに会場は弾けるように反応。ネタ開始から3秒待たずに大きな笑いを起こすという驚異的なスピードだった。

5位:とろサーモン(2017年 / 1本目)2秒90

「僕もそうでーす」

9度の準決勝敗退を経て、ラストイヤーの2017年に念願の決勝進出を決めたとろサーモン。満を持しての決勝で久保田が初めに放ったボケは、村田の「どうも、こんばんは。とろサーモンです。お願いします」という挨拶に対する「僕もそうでーす」という肩の力が抜けたものだった。掴みの時間はわずか2秒90。審査員の渡辺正行は「ラストイヤーで力が入りそうな中、これだけ軽くサラッと漫才ができて、ふざけられるのは素晴らしい」と賛辞を贈った。

4位:とろサーモン(2017年 / 2本目)2秒51

「こちらこそ」

久保田は1本目と同様、村田の挨拶に対して「こちらこそ」と適当に相槌して笑いに。そのスピードは1本目を上回る2秒51で、博多大吉から「2本を通じて掴みのスピードが一番速かった」と称賛された。とろサーモンはオチ後に「続行!」「継続!」とネタを続けようとするボケでも会場を沸かせており、笑いどころを最初から最後まで目いっぱい詰め込もうとしていることが伺える。

3位:麒麟(2006年 / 2本目)2秒42

「ハ~ァ! 麒麟です」

麒麟です」と低い声で自己紹介するのがおなじみとなっていた麒麟・川島は2006年大会の2本目で、「ハ~ァ!」と不自然に大きく息を吸い込んで「麒麟です」と挨拶し、素早く笑いを起こした。彼らのネタが浸透しているからこそなせる技。ちなみに歴代の決勝ネタでもっとも掴みが遅かったのは2005年大会の麒麟の2本目。川島が冒頭から1分間、笑いどころのない話をし続け、その途中で思い出したように「あっ、麒麟です」と挨拶する、非常に挑戦的なものだった。

2位:ますだおかだ(2002年 / 2本目)2秒23

「吉本興業のますだおかだです」

増田が開口一番「吉本興業のますだおかだです」と嘘の自己紹介。1年前の「松竹芸能のますだおかだです」というフレーズをフリに使うという作戦で約2秒で笑いを起こすことに成功した。その後、「この際(吉本と松竹も)合併したらいいんですよ」と話を膨らませ、本ネタにスムーズに繋げていく巧みな構成も、実力の高い彼らならでは。

1位:東京ダイナマイト(2009年)0秒55

「なんでしゃべりながら出てきてんだよ!」

歴代随一の掴みのスピードを誇るのが、2009年大会の東京ダイナマイト。せり上がりで登場する時点でボケの松田がすでに何かを話しており、その状態でマイクの前へ。「秋になると栗拾いというのが……」と話に熱中する松田に、ハチミツ二郎が「なんでしゃべりながら出てきてんだよ!」とシンプルにツッコむと、会場には大きな笑いが。ここまで、約0.5秒のことだった。審査員の松本人志は「掴みがすごく好きでしたね」と称賛しており、現在も破られていない最速の掴みとなっている。

今回は掴みのスピードをランキング化したが、決して決勝順位と掴みの速さが比例しているわけではない。ゆったりとした導入で観客を引き込むスタイルのファイナリストも多くおり、2005年に優勝したブラックマヨネーズは1本目の掴みに44秒もの時間を使っている。2020年大会のファイナリストはどのように最初の笑いを起こすのか、それぞれの掴みに注目しながら楽しんでみては。

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