日本を代表するコメディアン・
寄稿
大好きな志村けんさんへ
はじめに、志村けんさんと、志村さんとコントを作り上げた裏方の皆様、技術者の皆様に最大のリスペクトと感謝を申し上げます。
志村けんさん、正直まだ志村さんがいなくなったことを受け入れられていません。あれから毎日志村さんのことを考えています。志村さんがどれだけみんなの宝物で、子どもの頃どれほどテレビを通して遊んでいただいていたのか、こんなことにならないと気がつかなかったなんて…。いなくなったのは志村さん1人だけではありません。志村さんが生み出した『ひとみ婆さん』や『バカ殿様』『変なおじさん』『いいよなおじさん』『デシ男』それから…ここではお名前を挙げられないほどたくさんの人たちとも突然お別れしなくてはならなくなりました。一人ひとりにそれぞれ思い出があって、みんな不器用で一所懸命に生きている愛おしい人たちでした。みんなのことが大好きです。もう直接お伝えできなくなってしまったのでここでお礼を言わせて下さい。
それから志村さん、ドリフの皆さんが出演されていた志村さんの追悼番組、まるで志村さんの壮大なコントのようでした。とても寂しいBGMと底抜けに面白い志村さんのお写真とのコントラストがもうおかしくて、ドリフや志村さんのコントそのものでしたね。悲しいからこんなにも笑えるんだって改めて実感しました。拝見しながら、私たちもその時はこうでありたいからアナウンサーの方が困るくらい変な顔を残していこうねと泣き笑った情緒の忙しい顔で相方と話をしました。
志村さん、私たちは幸運なことに何度か志村さんとご一緒させていただくことができました。特にバカ殿様の収録のことは生涯忘れることができない経験です。とんでもないものを見せていただきました。志村さんの観察眼はご自身のキャラクターだけにではなく、世界を作る装飾品や、セットの素材にまで反映されていて、お城の屋根瓦一つとっても興味深く拝見させていただきました。そこには志村さんの爪の先まで神経の行き届いた演出に対して妥協することなく形になさるプロフェッショナルな人たちしかいませんでした。当然圧倒され、緊張から何も質問することができない私たちに、志村さんは惜しげもなくご自身の手法を見せて下さいましたね。舞台メイクを早く落とすための道具を売っているところや、セットのからくりも丁寧に教えて下さり、技術を独占するどころか「パクっていいんだよ」とまでおっしゃって下さった時、感激のあまり私たちは泣いてしまいました。その時、志村さんの困りながら笑ってくださったお優しい目と、ご無礼ついでに書いていただいた台本へのサインは私たちの宝物です。
志村さん、実は次お会いできることがあったら伺いたいことがあったんです。子どもの頃見た志村さんのコントの中に、楽しい以外の感情に働きかけるものがありましたね。それは救いようがないほどに悲しかったり、中にはトラウマになるようなものもありました。決して子ども向きではありませんでしたね。ところがあの時、志村さんが仕掛けた時限装置が大人になった今、まんまと効いています。ふと、あれは一体何だったのだろうと思い出すのです。それについては随分後になって志村さん自身も語っておられたようですが、志村さんの口から直接お伺いするのが私たちの次の目標でした。…いや、きっと野暮なことは説明せずコントで示された志村さんのことですから、追いきれないほどある志村さんが残されたコントの中に答えがあると信じて解いてみます。
最後に、コメディアンになってくださりありがとうございました。志村さんと同じ時代に存在できた幸運を大切にします。
日本エレキテル連合
写真左 / 橋本小雪1984年11月13日生まれ、兵庫県出身。
写真右 / 中野聡子
1983年11月12日生まれ、愛媛県出身。
2008年にコンビ結成。志村けんの出身地である東京・東村山市の一軒家に2人暮らししていた。コントでは舞台演出や衣装、メイク、小道具など細部までこだわり、それらを結集させた狂気的なネタで多くのファンを獲得する。新作公演「Neo Doki-Doki」を9月17日(木)から20日(日)まで、東京・ユーロライブにて開催予定。YouTubeチャンネル「感電パラレル」でもさまざまなキャラクターを披露している。2019年の単独公演を収めたDVD「日本エレキテル連合単独公演『君莫笑』」はWebサイトValueMallで販売中。
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少し泣きました。。 https://t.co/0ei37Sa8uk