コントの神様・志村けんが残したもの 第4回 [バックナンバー]

はんにゃ金田「志村イズム」

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日本を代表するコメディアン・志村けんが3月29日、70歳で他界した。あまりにも突然すぎる死は、芸能界はもちろん、お茶の間にとっても信じがたい出来事だった。一方で、各局が放送する追悼番組で大笑いした視聴者も少なくないだろう。本企画では、この世を去ってなお人々を笑わせ続ける志村けんが現在活躍する若手芸人たちにどんな影響を与えてきたのか全5回の連載で紐解く。第4回は、はんにゃ金田。

寄稿 / 金田哲 イラスト / 矢部太郎

志村イズム

あなたにとってお笑いの神様は?と聞かれたら僕は即答で「志村けん」と答えます。物心つくかつかないかぐらいの時にはすでにテレビで志村さんを観ていました。みんなそうだと思いますが、それが本当に光栄なことであったと今はより一層思います。数々のキャラクターとギャグ。学校でモノマネをしてすぐに人気者になれました。それらに影響されたと本人も語っておられたナインティナインの岡村さんにさらに影響を受けて本格的にお笑いの世界を目指そうと決めた中学1年生。そして志村さんの笑いがお笑いの基盤になりました。芸歴15年になった今でも劇場の袖でネタを必ず観たい先輩は、志村さんのコントをこよなく愛す、FUJIWARAさん、ペナルティさん、5GAPさんです。

18歳で上京して吉本に入り、なんだかんだでありがたいことに3年目でテレビに出ることができ、数々のお笑いスターの方々と共演させて頂きましたが、唯一、志村さんとだけが叶いませんでした。僕がお笑いの神様に最初で最後にお会いしたのは今から5年前の2015年、2月20日でした。

その数日前、たまたま呼ばれた飲みの席に志村さんの誕生日会を仕切っていらっしゃる中山秀征さんと飲ませて頂く機会があり、話の流れで来なよ!と、なぜか一度もお会いしたことがない志村さんの誕生日会に参加させて頂けることになりました。すぐに志村さん大好き芸人5GAPさんに声をかけて、当日3人でガチガチのブルブルで会場に向かいました。お店に着くとそこには錚々たる芸能人、関係者の方々が沢山いらっしゃり、さらに奥へ向かうとソファの席にこれまた豪華メンバーがいて、そのど真ん中に志村さんが鎮座されていました。中山ヒデさんが僕らに気づくと志村さんに紹介して下さり、その場でご挨拶とお祝いの言葉を言わせて頂きました。ただ、志村さんが好きすぎる3人の挨拶は1年目の若手ぐらい目がバキバキで顔が引きつって、とてもその場の雰囲気には合うものではありませんでした。それでも志村さんは優しく微笑んでくれました。それだけでも嬉しくて、僕らは逃げるように会場の隅っこのテーブルに座り、遠くにいる志村さんの姿を見ながら同じ空間でお酒を飲めていることに幸せを感じて3人で乾杯しました。ようやく会えた! それだけで充分でした。

その会も終盤に差し掛かったころ、隅のテーブルで僕らが談笑していると、突然、「もっと若手と話したいんだよ」と目の前50cmの距離に志村さんが座りました。えー!!!??? 大パニックです。驚きと興奮で気を失いかけました。凄く人見知りと聞いていた本日の主役、いや、日本の宝の気遣いに感激と尊敬の気持ちでいっぱいになりながら、改めてお祝いの乾杯をしました。そこからはコントやキャラクターなどいろんなお話をしていただき、僕らからの質問にも凄く親身になって答えて下さいました。

その中で一番嬉しかったのは、コントの話の流れで突然志村さんが、僕のほうを見て「でも、あなたもいいキャラ何個か持ってるじゃん」と言って下さったことです。志村けんさんに直接そんなふうに言ってもらえたこと、そもそも知って下さっていたこと、嬉しすぎて頭が真っ白になっていました。すると「それをやり続けることですよ」。この言葉は僕の中で生涯忘れられない言葉になりました……。その後もくだらない話をして一緒に笑いながらお酒を飲んだ最初で最後の時間はまさに夢のようでした。

コント界は「志村けん」の名を継ぐ襲名制は今のところないですが、恐縮ながら、言わせて頂きます。志村さん安心して下さい。志村イズムは今後も脈々と受け継がれていきます。本当にありがとうございました。

金田哲

はんにゃ金田

はんにゃ金田

1986年2月6日生まれ、愛知県出身。川島章良と2005年にコンビ結成。「爆笑レッドカーペット」(フジテレビ)への出演をきっかけにブレイクし、「爆笑レッドシアター」「キャンパスナイトフジ」(同局)、「ピラメキーノ」(テレビ東京)などレギュラー番組を多数担当した。現在は「はんにゃ金田と欅坂46と日向坂46のゆうがたパラダイス」(NHK-FM)のパーソナリティを務める。俳優として、昨年は「MOTHER~特攻の母 鳥濱トメ物語~」「どれミゼラブル!」と2本の舞台に出演。映画「燃えよ剣」に藤堂平助役で参加している。

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