「ゾッキ」Chara×HIMI|母と子の自然なセッションから生まれた歌

竹中さんに口笛を頼んだら緊張して白ワインを飲んでいた

──映画にはCharaさんやHIMIさんだけではなく、多数のアーティストが楽曲を提供していますが、Charaさんが皆さんに声をかけたんですか?

Chara そう。こんなふうにいろんな人が参加するサウンドトラックって日本ではあんまりないと思うんだけど、音楽愛がある方が集まってくれて。スケジュール的に参加できなかった人もいるんですけどね。映画のサウンドトラックを作ることはミュージシャンとして、すごく楽しみなことでした。

HIMI

HIMI 全部聴いたけど、俺は「夏のカケラ」(仲井戸“CHABO”麗市作曲)が好きだったな。あとMELROWの曲(「Down/Rain - 堕ちていく伴」)。「夏のカケラ」は竹中さんを感じたし、映画の情景を想像できた。

Chara 「夏のカケラ」はサントラ用に弾き直してもらったんです。映画の中で使ってるのは、セミの声とかが入ってるんですけど、サントラ版はちょっと変えて、CHABOさんが家で1人で弾いているような感じに。ミュージシャンの最初のデモテープみたいで、すごく好きなんです。

──映画の冒頭に流れる「暗号」もCHABOさんの曲ですね。

Chara 始まりをCHABOさんの曲にするということは決めていて。せっかくだから普段のCHABOさんがやらないような作り方をして、サイケデリックな曲にしました。竹中さんはCHABO愛が強くて、聴きながら泣いちゃうような人だから、スタジオにも来てくれたんですよね。それで竹中さんには別の曲に口笛で参加してもらったんだけど(Leyona×BASIの「ひとひかり」)、簡単なフレーズなのにめっちゃ緊張しちゃって(笑)。私とかCHABOさんのレコーディングより竹中さんの口笛を録る時間のほうが長かったんです。途中で「ワインをください」とか言って、白ワインを飲んでから、また口笛を吹いてました。

──HIMIさんは以前から竹中さんと面識はあったんですか?

HIMI 初めて会ったのは竹中さんの誕生日会ですね。

竹中直人監督

Chara 去年はコロナがあったから開けなかったけど、竹中さんは毎年自分の誕生日にミュージシャンを呼び出して誕生日会を開くんですよ。

HIMI そこに僕も行って歌って。

Chara そこではずっとセッションみたいなことをしてるから、いつでも入れるようにちゃんと聴いてなきゃいけないんだよね。最後は竹中さんが1人で演奏するんだけど、そのときにはもう誰も聴いてないっていう(笑)。今回サントラに参加してくれたドレスコーズの志磨(遼平)くんも、この竹中さんの誕生日会つながりなんですけど、彼がYEN TOWN BANDのファンだったという話も聞いていたから、一緒に何かやりたいなって思ってたんです。

Charaのこだわりがあふれるサウンドトラック

──ドレスコーズが提供した「ひとつも愛など」にはCharaさんもコーラスで参加していますが、志磨さんとの共演はこれが初めてですか?

Chara そうですね。この曲は志磨くんが全部の楽器を演奏してくれて、toeのミノ(美濃隆章)くんがエンジニアをやってくれました。本当はtoeにも参加してほしかったんだけど。

──ドミコの「なんていうか」はエモーショナルな劇中の場面と相まって、すごく印象に残りました。

映画「ゾッキ」より「伴くん」の場面写真。

Chara 若手のバンドでは絶対ドミコを入れたいと思ってたんです。(さかした)ひかるくんの声が独特で好きだし、リズムを大事にしている感じで、なんて歌ってるかわからないようなところも好き。でも歌詞を見たらチャーミングで。今回は齋藤(工)監督が「伴くん」のピュアなシーンで使いたいということでミディアムバラードを作ってもらったんだけど、ドミコさんは普段こういうテンポの曲はお書きにならないんですよね。コロナがなかったら密密な感じでライブを楽しんでほしい感じの勢いのあるバンドで。

──確かに映画で最初に聴いたときは、ドミコだと気付かないくらいでした。

Chara ほかに素敵な曲もあったんだけど、何回か書き直してもらったんです。そしたら、ひかるくんは王道のコード進行でいかに独特なものを出せるかっていうことに挑戦してくれて。頭から聴いてもらうと、彼のボーカルのベロシティがどんどん上がっていって、楽器の中に入っていくような雰囲気を味わえるし、切なさも感じられると思います。一生懸命生きること、歌うことって切ないことだから。

──同じく「伴くん」のエピソードで流れるSalyuさんの「Face to Face」も素敵でした。

Chara これは私の家のリビングでレコーディングしました。

HIMI やってたね。この曲もすごくよかった。

Chara

Chara この曲については、ヘタッピだけどクラシックバレエを踊る子供、学校の音楽室でピアノの伴奏をする友達みたいなイメージを齋藤監督と共有しました。あんまりうまい感じじゃないほうがいいと思って、私がペダルを踏みながらピアノを弾いて、Salyuがうちのリビングで歌ったら、リラックスした雰囲気でいいのが録れて。私がおおまかなイメージを歌ってSalyuが真似したらすごく素敵で「ゾッキ」っぽい雰囲気もあったんですよね。歌詞は付いていなかったんだけど、監督にデモを送ったら、それを気に入っちゃって。歌詞が付くと意味が出てきてしまうこともあって、映画ではそれが使われました。でも、歌詞が付いたものも、それはそれでやりたいと思ったし、Salyuが阿部芙蓉美とやりたいって言ってたから、サントラには映画で流れたバージョンに加えて、阿部芙蓉美の素晴らしい歌詞が付いたバージョンも入っています。

──ビデオ屋のシーンで流れるAAAMYYYさん、ermhoiさん、Julia Shortreedさんの「P.L.T」もすごくよかったです。

Chara これいいよねえ。映画の場面に合わせて、スイートだけどセクシーな感じで。3人ともすごくいい倍音の歌声を持っていて、この3人娘のコーラス録りはすごく楽しかった。AAAMYYYのセリフもかわいい。

──この曲には小山田圭吾(Cornelius)さんもテルミンの演奏で参加しています。

Chara 小山田くんに「テルミン持ってたよね?」みたいな感じで連絡して。「こんな感じでどう?」って送ってもらった音源がとってもよかった。シンセとかを入れてもいいかなと思ってたけど、テルミンだけですごく素敵になりましたね。

映画はやっぱり映画館で観たい

──Charaさんはすでに映画をご覧になったということで、感想を教えてください。

左からChara、HIMI。

Chara すごく味のある感じだし、役者さんもみんな存在感のある人で。大橋さんの故郷の蒲郡への愛も感じました。音楽もすごく役に立ったなという思いがありますね。

──HIMIさんはまだ映画はご覧になっていないんですよね。

HIMI はい、公開されてから映画館に観に行こうと思って。

Chara やっぱ映画館で観たいよね。

HIMI 映画館でしか観たくないですね。

──公開されたら、お二人で観に行きますか?

Chara 最後に2人で映画を観に行ったのいつだっけ? 「マイケルジャクソン THIS IS IT」(2009年公開のドキュメンタリー映画)ですね、私の記憶では。

HIMI 新宿で観たね。

Chara 音がいいところで。「THIS IS IT」の次がこれって面白いね(笑)。

ライブ情報

Chara Live 2021 「私を離さないで」
  • 2021年5月7日(金) 神奈川県 Billboard Live YOKOHAMA [1st STAGE]OPEN 15:30 / START 16:30
    [2nd STAGE]OPEN 18:30 / START 19:30
  • 2021年5月9日(日) 大阪府 Billboard Live OSAKA [1st STAGE]OPEN 15:30 / START 16:30
    [2nd STAGE]OPEN 18:30 / START 19:30
  • 2021年5月14日(金) 東京都 ブルーノート東京 [1st STAGE]OPEN 17:00 / START 18:00
    [2nd STAGE]OPEN 19:45 / START 20:30
  • 2021年5月15日(土) 東京都 ブルーノート東京 [1st STAGE]OPEN 16:00 / START 17:00
    [2nd STAGE]OPEN 19:00 / START 20:00(※配信あり)
  • <出演者> Chara
    バンドメンバー:井上薫(Piano, Key) / 屋敷豪太(Dr) / 山本連(B) / 小川翔(G) / 竹本健一(Cho) / 平岡恵子(Cho) / 庵原良司(Sax)
    ゲスト:HIMI

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