ZOC|メジャーデビュー、武道館公演、新メンバー加入を経て放つ渾身の初アルバム

大森靖子が“共犯者”を務めるアイドルグループとして2018年9月に結成されたZOC。大森、西井万理那(ex. 生ハムと焼うどん)、藍染カレン、巫まろ(ex. 福田花音 / アンジュルム)、舞踊家のrikoこと雅雀り子と強い個性を持つメンバーが集うこのグループは、「メンバーがこれから出会うべき人、影響を与えるべき人がまだまだたくさんいる」と現在も果敢に前進を続けている。

そんなZOCに15歳の新メンバー・鎮目のどかが加わった。3000通を超える応募の中からオーディションを勝ち抜いた彼女は、ZOCに入る未来が「漠然と見えていた」という。メンバー兼プロデューサーである大森は、澄んだ瞳でインタビューに答える彼女に果たして何を見出したのか。

そして新たに6人体制になったZOCは、6月9日に念願の1stアルバム「PvP」をリリース。鎮目も参加している本作には、ミト(クラムボン)を迎えて制作された「CUTTING EDGE」「①④才」や、大沢伸一がヘヴィな大森の作詞曲をオルタナティブロックに仕上げた「CO LO s NA」、大久保薫が抜けのいいシンセサウンドを巧みに使用した「LiBiDo FUSION」「濃♡厚♡接♡触」、神前暁(MONACA)が初めて大森とタッグを組んで制作した「眼球にGO!」、大森のバンドメンバーでもある盟友sugarbeansがドープにアレンジした「FLY IN THE DEEPRIVER」「REPEAT THE END」、鈴木大記がミクスチャーアレンジを施したインディーズ時代のリアレンジ曲など、2枚組に全22曲が収録される。

1月にZeppツアーを行い、メジャーデビューシングルをリリース。2月には日本武道館で単独公演を、3月にかけて東名阪を巡る「5★ZOCツアー」を実施し、そして6月の1stアルバムリリース後は9月にかけてツアー「ZOC FOR PRAYER TOUR 2021 SUMMER」で全国22会場42公演を巡るなど、怒涛の勢いで2021年を駆け抜けているZOC。音楽ナタリーではメンバー全員に新体制への期待や、新アルバムの手応えを語ってもらった。

取材・文 / 南波一海 撮影 / Masayo

壮絶だった武道館

──今年1月に募集を開始したオーディションで鎮目のどかさんの加入が決まって、そこから6月のアルバムのリリースまでスケジュールがかなりタイトだったんじゃないでしょうか。

大森靖子 2月に面接をして、3月に決まって。それで、愛知から上京したのは4月の頭だっけ?

鎮目のどか 3月末です。

大森靖子

大森 3月末か。上京してきてからはずっとレコーディングという感じでした。早く発表して「ZOCはまだまだやるぞ」というのを見せないとと思って、すべてを急いでました。

──かなりスピーディに動いてきたZOCの2021年に入ってからの話を伺っていきたいと思います。まずはツアーを経て、2月に日本武道館での単独公演「NEVER TRUST ZOC FINAL at NIPPON BUDOKAN」がありました(参照:ZOC夢の武道館で“支配領域”展開!かてぃの門出祝い、新たな一歩を踏み出す)。この模様はアルバムの豪華版付属ディスクに収録されますが、香椎かてぃさんのラストステージということもあり、皆さん感情を爆発させていましたね。

藍染カレン もう遠い昔のようです。当日は、「今日で今のZOCが終わって、ここから始めていくための力があるんだ」ということを見てもらいたかったので、ものすごく変な緊張の仕方をしていて。緊張しすぎて、朝から唐揚げ弁当注文してめちゃくちゃ食べました(笑)。ファンの方がすごく温かく観てくださったので楽しくできましたね。

西井万理那 武道館は、立ってみたら思ったより大きくなかった。変な意味じゃなくて、素直に。私は初めてだったんだけど、「あ、武道館ってこんな感じなんだ」ってリハのときから感じて、本番もめちゃくちゃ緊張するということもなく楽しくできたので、また立ちたいな。

雅雀り子 私は……記憶がないんですよね(笑)。

──り子さんはダンスのフォーメーションを武道館用に作り変えたりしたんですよね。

雅雀 そうですね。事務所で靖子ちゃんと1日かけてあれこれ話し合って。ステージはお客さんが360度囲む形だったからそれをうまく生かして、みんなが楽しく観れる形を考えました。1つのステージを作り上げる過程は楽しいじゃないですか。でも、Zeppツアーらへんから武道館にかけての記憶がめちゃくちゃ曖昧で。あのときは心が荒地のような感じだったから(笑)。どうにかしてやり遂げねばと思っていたし、ステージではやるべきことをやるだけなんですけど。そこに持っていくまでが戦場のようだったけど、それぞれがあのときできることはやれたんじゃないかなと。でも、いろんな意味でリベンジしたいですね。

巫まろ リベンジしたい。武道館はいい思い出がたくさん残ってるんですけど、やっぱりコロナで人が入れられないとか、思うように宣伝しきれないというのがあったので、全然満足はしてなくて。私的には、今まで(アンジュルム所属時に)やってきた武道館のライブの中でも一番ふわふわしたまま立ったというんですかね。途中加入だったので自分の力でつかんだわけではないという気持ちもありました。楽しかったし、できることはすべて出したけど、これで「ZOCは武道館に立った」という実績にするのではなくて、グループも客席も完璧な状態でまたやりたいです。

──絶対に来てほしいとも言いにくいご時世じゃないですか。大森さんもライブ開催前から「リベンジ」という言葉を口にしていました。

大森 言ってましたね。私も武道館あたりの記憶があまりなくて。領収書の整理をしてても、どこになんの用事で行ったか思い出せないんですよ。いつもだったら絶対に覚えてるのに、いろんなことが重なって。とは言いつつも、自分たちが与えるエネルギーはポジティブなものじゃなければいけないし、コロナ禍でどういうことをライブで表現するのか、押さえるところは押さえないといけない。そこはちゃんとやらなきゃという気持ちはあったし、最低限できたという気持ちはあるけど、そのときは「ずっと夢だった武道館がこういうふうにしか叶わないなんて、神様ケチだな」と思ってました。自分が小学生のときとかに先生に反抗してきたツケがこうして回ってきたのかなって(笑)。いろんな大人にたてついたツケが大人になった自分に回ってきてるんだな、しょうがないから受け入れるしかないなと。

──その時期は本当に大変だったんですね。

大森 ……人生で一番大変でした。自分のやってきたことや作ってきたものが、価値のないものとされたことがあまりなかったから結構な衝撃だったのと、一緒にクリエイティブをやってきた一番近しい友達が亡くなっちゃったので(参照:絵描きの青柳カヲルが死去、大森靖子らに作品提供)、私とかり子はそれで気分が落ちてしまったというのはあります。ただ、武道館が終わってからは「次だ」と思えたので。ちょうど武道館までの記憶がない感じですね。

呪いを解いてくれた

──武道館が節目となって、新しいZOCに向かっていくわけですね。鎮目さんは武道館公演をご覧になりましたか?

鎮目 映像で観ました。ちょうどオーディションの応募をしたあとで、自分が入ったときの想像をしてました。自分の目から見ると、今聞いたような大変な状況をあまり知らなかったから、すごくキラキラして見えました。

大森 よかった! ZOCはZOCなりにキラキラできてた。

西井 でもさ、ABEMAの武道館発表(昨年12月4日に配信された「ZOC第二幕~2021年へ重大発表&MV超超先行公開特番」)のときは若干ヤバかったよね?

──場の空気が張り詰めていて、若干どころじゃない雰囲気でしたよ。

雅雀 アプリに告知動画が上がるじゃん。呪われた人たちみたいだったよ! ポーズも取れないレベルで、みんな下のほうを見てる(笑)。

西井 あれは自分の人生の呪われ期として歴史に刻まれてる。

大森 武道館がその呪いを解いてくれた神聖な場所かもしれんね。

西井 さっきおっしゃっていただいたように、武道館が節目でしたね。完全に。そこからは上向きになる以外なかった。

のどかは特別だから

──武道館のあと、5人で活動する時期がしばらくありました。

大森 5人だけで「5★ZOCツアー」をやったときにフォーメーションが美少女戦士みたいな感じになってたんです。センターがあって、きれいにやろうとしてる感じを自分で見て、なんじゃこりゃと思っちゃって(笑)。何をいい感じにやってるんだ、と。めちゃくちゃよかったんですけど、きれいすぎるなと思ってたんです。それで、オーディションでは、のどか1人か、誰も入れないかって考えてたんですけど、勝手にのどかが入ったことを想定して曲を作っちゃってたんです(笑)。アルバムの「CUTTING EDGE」という曲なんですけど。作ったってことはそういうことだなと自分で思って、(鎮目の加入を)決めました。6人にしようと思ったのは、偶数だとセンターがないので全員の個性が引き立つし、のどかは特別だから、ほかの子と一緒に入る子じゃないよなと。

──「CUTTING EDGE」は鎮目さんを思って書いた曲なんですね。

大森 のどかが歌うイメージで書いちゃいました。

西井万理那

西井 たしかに聴いたときすごいフレッシュだった。ほかの曲とはまたちょっと違う感じで。

藍染 私は5人のZOCはプリキュアみたいで楽しかった。5人だったからソロ曲のシャッフルもやれたなと思うし。これで最後だからという気持ちで大切にライブができました。

西井 私も楽しかったけど、もどかしさもあったかな。「これは完成形なのかな、それともそうじゃないのかな」って。だから早く入ってほしかった。ただ、「5★ZOCツアー」は最高だった。

大森 最高最高。本当に申し訳ないんですけど、それまではいろんな心配をせずにファンの人も楽しんでくれる状況というのが少なかったので。ツアーからは進むしかないし、ただライブを楽しめばいいんだという気持ちになれたんだと思います。その感覚はひさしぶりでした。

雅雀 私も「5★ZOC」はめちゃくちゃお気に入りだった。ZOCは人数が変動するし、フォーメーションが変わるじゃないですか。でも、誰かが抜けたから、その穴を誰かで埋めようとは考えてなくて。メンバーそれぞれ個性が違うから、その都度考えるようにしてたんですけど、「5★ZOC」は洗練されてきれいだったかなと思います。