ナタリー PowerPush - ゆよゆっぺ×城崎勇太(小説「ぼかろほりっく」作者)対談

小説×バンド×ボカロの“生身”の関係

とにかく「ぼかろほりっく」の世界に飛び込もうと

──今回のプロジェクトが最初に話題を集めたのは、4月9日に「ぼかろほりっく」というボーカロイド楽曲がニコニコ動画に突如アップされたときだったと思います。ゆよゆっぺさんが手がける楽曲はもちろん、それに合わせたアニメ映像に大きな反響がありました。

ハルカ(大空遥)

城崎 そうですね。今回の作品はボーカロイドユーザーだけでなく、バンドをやっているようなユーザーさんや一般の方々にもアピールしたいものなので、アニメのオープニングっぽい感じの映像をつけることでできるだけわかりやすい世界観を提示してあげたかったんですよね。

ゆよゆっぺ 初めて観たときはビックリしましたよ。「(絵が)動くー! めっちゃ動くー!」みたいな(笑)。

城崎 ただ、あの動画をアップしたときには、「ぼかろほりっく」という小説があることも、それと同時にCDが出ることも一切発表されていなかったんです。

──結果、「これはなんなんだ!?」という反応が多かったです。

城崎 そうそう。

ゆよゆっぺ

ゆよゆっぺ いろんな人に聞かれまくりましたからね。「あれはなんなんだ?」って。TwitterのRTでもそういう反応がどんどん広がってました。その中には「ゆっぺ変わったな」っていう反応もけっこうあったのが僕には印象的で。「まあそう見えるよね」っていう思いもありつつ、小説とCDが発表された段階で理解してもらえればいいかなと思って。

──どんな部分で変わったと受け取られたんでしょうね?

ゆよゆっぺ たぶん僕とキャッチーなアニメーションがあんまり結びつかなかったっていうことだと思うんですよ。普段書いている曲はわりと複雑でゴリッとしたものが多いですからね。だから、そういう部分を知ってくれてる人には違和感があったのかもしれないなって。ただ僕は「ぼかろほりっく」のお話をいただいたときに、やるからにはとことんキャッチーにやろうと思ったんですよ。なんにせよ俺がギターを弾けば俺っぽい部分は出るだろうから、とにかく「ぼかろほりっく」の世界に飛び込もうと。なので、食わず嫌いにならずに「ぼかろほりっく」という作品を楽しんでもらえたらいいなって思いますね。僕自身、ほんとに面白い作品だなと思っているので。小説とCDがリリースされた後もまだ「変わったな」って言われてたらちょっとショックですけどね(笑)。

かなりコラボってる

──アルバムには小説の各章のタイトルと同名の楽曲が収録されています。具体的にはどうやって制作されていったんでしょうか?

城崎 まず最初にアップした「ぼかろほりっく」という曲を作ってもらって、その後、アルバムの最後の曲「遥か彼方へ」をお願いした感じですね。その2曲については、サウンドや構成にもかなり細かく指定をさせてもらいました。それ以外の曲に関してはもう全部おまかせでしたね。ストーリーから読み取って自由に作ってくださいと。

ゆよゆっぺ 「ぼかろほりっく」を作った段階では、僕がアルバムの曲すべてを作るとは思ってなかったんですよ。なのでぶっちゃけかなりびっくりでした(笑)。しかも話をもらった時点では、小説の決定稿が上がってなかったですからね。

城崎 そうそう(笑)。

ゆよゆっぺ

ゆよゆっぺ だからプロットとかプロローグからストーリーを読み取りしながら楽曲を作っていきましたね。ただ、小説が自分の中にないアイデアをたくさんくれるので、そのぶん歌詞やメロディを書くのはすごく楽だったし、クリエイティブな面においてはスムーズに進めることができたとは思います。

──決定稿になるまでに小説の内容が大きく変わる部分もありました?

城崎 けっこうありましたね。最後になって物語の終わり方がかなり変わりましたし、その間に起こる事象が変わったところもありました。

ゆよゆっぺ 結果、「アコガレ」という曲に関しては、その章の内容がガラッと変わったので、実はこれお話に沿った曲になってないんじゃないか説が微妙にあるんですけどね(笑)。

城崎 あははは(笑)。確かに。でも、ゆっぺさんが作ってくれた曲はどれもドンピシャでしたけどね。

──逆に、ゆよゆっぺさんの曲によって小説の内容が変わったところもあったり?

カナタ(奏太)

城崎 それもありました。“ああ、そうくるか”みたいな音が上がってくることもあったので、じゃあお話を曲に寄せてみようっていう。

ゆよゆっぺ すべての作業が並行して進んでましたからね。

城崎 そう。でもそういうやりとりがすごく楽しかったんですよ。

ゆよゆっぺ かなりコラボってるなっていう感じでしたからね。その結果なのか、「ぼかろほりっく」がアップされた後、海外のユーザーさんから「このキャラクターがゆっぺなのかい?」っていうコメントと一緒に、カナタくんの画像が送られてきて(笑)。

城崎 そうなんだ。それ面白いね(笑)。

ゆよゆっぺ 帽子かぶってるとこが一緒なだけじゃんって思ったりもしたんですけど(笑)、でもそういう反応はすごくありがたかったし、面白いなと思って。

──それだけ「ぼかろほりっく」という作品の世界観に音で乗っかることができたということなのかもしれないですよね。

ゆよゆっぺ ですね。すごくいい縁を与えてもらえたなって思います。

ゆよゆっぺ

ラウドロックを軸にさまざまなジャンルを盛り込んだボーカロイド楽曲をニコニコ動画に発表し、何度も“殿堂入り”を果たしている人気ボカロP。2012年9月にアルバム「Story of Hope」でメジャーデビューを果たしたあとも、自身のバンドや「DJ'TEKINA//SOMETHING」としての活動、BABYMETALをはじめとするさまざまなアーティストへの楽曲提供など活躍の幅を広げている。2014年7月には同名の小説と完全連動したアルバム「ぼかろほりっく」をリリース。