音楽ナタリー Power Push - YUKI
函館時代の友人を思う「ポケモン」主題歌
YUKIが30枚目のシングル「ポストに声を投げ入れて」を7月13日にリリースした。「好きってなんだろう…涙」では自身の声をいくつも重ねてループさせたり、「tonight」ではスタンダードなロッカバラードをバンドでレコーディングしたりと、2015年のYUKIは楽曲ごとに今の自分を使ってどんな歌を歌えるのかを表現してきた。映画「ポケモン・ザ・ムービーXY&Z『ボルケニオンと機巧(からくり)のマギアナ』」の主題歌として書き下ろした「ポストに声を投げ入れて」は、2015年11月発売の「tonight」以来約8カ月ぶりのシングルとなる。 “今のYUKI”のモードを本人に聞いた。
取材・文 / 松浦靖恵
まだまだ歌に対する情熱の火が消えそうにない
──2015年のYUKIさんは自分の声を多重録音した「好きってなんだろう…涙」の次に、バンドでレコーディングしたスタンダードなロッカバラード「tonight」を発表するなど、曲ごとに世界観が変化していましたね。
私は凝り固まらないように、歌の中でいろいろなことをやっていきたくて。凝り固まるというのは情熱がなくなるという意味なんですけど。でも、私はまだまだ歌に対する情熱の火が消えそうにないので、この火が消えない限りはやっぱりそのときそのときに歌いたいことを、私なりの表現で歌っていきたいですね。
──YUKIさんの2016年のモードはどんな感じですか?
2015年11月にアリーナツアーが終わったあと(参照:YUKI「みんな大好きだー!」武道館でライブ尽くしの1年終結)、2016年に向けたミーティングの中で「これまでにやったことがないことをしたい、私が知らない世界に挑戦してみたい」という話をスタッフに投げかけていたんです。私自身がそんなに詳しくない分野でも、そこに飛び込んでみることでこれからも続く私の音楽生活の可能性が広がり、前進につながると思っているので。
──「ポストに声を投げ入れて」は映画「ポケモン・ザ・ムービーXY&Z『ボルケニオンと機巧(からくり)のマギアナ』」の主題歌ですが、「ポケットモンスター」とYUKIさんという組み合わせは意外でした。
「新しいことに挑戦したい」という思いが自分の中で湧き上がっているところに、本当にタイミングよく“「ポケットモンスター」の主題歌”というお題をいただくことができたので、とてもうれしかったです。歌手になって23年、ソロになって14年が経った今の私に、また1つ新しい可能性が見つかったので、とても感謝しています。
“ポケットモンスターの主題歌”というお題
──「ポケットモンスター」は日本のみならず、世界中にファンがいますし、毎年夏に公開される映画は大ヒットしています。YUKIさんはどのようなテーマを持って制作に取りかかりましたか?
まず“「ポケットモンスター」の主題歌”というお題を考えると、「ポケットモンスター」の映画は小さなお子さんたちがたくさん観に来られますし、映画を観に来られた方たちの中にはYUKIを知らない人がいらっしゃるでしょうから、「聴いてくださる人を限定しないような曲」をテーマにしました。いつものように私が曲を選んでしまうと自分の好みや癖が出てしまうと思ったので、以前にもやったことはあったんですけど、今回はスタッフの方たちに幅広い楽曲の中から選曲をしてもらってプリプロに入ったんです。普段であれば自分から歌おうという感じにはならないような曲でも、「面白いかも!」と興味が湧いてきて。そんなモードで挑んだプリプロはとても楽しかったですね。あと、ひさしぶりにそういう曲選びのプロセスを踏んでみたことで、自分で曲を選ばなくても、私の癖のようなものは歌詞を書くときに出てしまうものなんだなと改めて感じました。
──私もそう思いました。「ポストに声を投げ入れて」には、YUKIさんらしさがしっかりとありますよね。
この曲は小さなお子さんが観られるアニメ作品の主題歌という、私にとってチャレンジングなことではあったけれど、それこそ「好きってなんだろう…涙」や「tonight」のほうがチャレンジしていると思われているかもしれないですね。アルバム「FLY」(2014年9月リリース)を作ったときも、 KAKATOとのコラボのような意外な組み合わせと思われるものや、今までにやったことのないものへ挑戦をしていたんです。でも新しい世界に飛び込んでも、そこにはYUKIがちゃんといて、皆さんにもYUKIを感じてもらえるんだなと思いました。
「ポスト」は赤いポストや郵便受けではない
──歌詞は映画の脚本を読まれてから書いたそうですね。
はい。歌詞を書くときはどうしても自分が出てしまうので、今回はなるべく自分を出さないようにしようと思って、歌詞を書き始める前に一人称を「僕」にしようという縛りを作りました。今まで私は「僕」と「君」で書いた歌詞が意外とないので、そういう縛りを作ることもチャレンジの1つでした。今回の映画には、「ソウルハート」という重要なキーワードが出てくるんですけど、人と人との離れられない関係性や、相手との素敵な距離感のようなものを描ければいいなと思っていたので、地元の北海道・函館で暮らしていた頃の、学生時代に仲がよかった1人の友達を思い浮かべながら歌詞を書きました。函館から東京の高校に引っ越した彼女と私の手紙のやりとりとか、あの頃の2人だけの世界も入っていますね。そういう関係性をここまで歌詞にストレートに出したのは、たぶん初めてだと思います。
──そのお友達との手紙のやりとりがあったから、「ポスト」という単語が出てきたんですね。
確かに、郵便ポストを思い浮かべてしまいますよね。
──え、違うんですか?
私の中でこの「ポスト」は、実は赤いポストや郵便受けではないんです。歌詞を書いているときに瞼の裏にその子が浮かんできて、目をつぶって歌うと、その子のところまで届くようなイメージが湧いたんです。
──子供たちにもわかりやすい単語、イメージしやすい言葉がいくつも並んでいますね。
そうですね。とてもわかりやすい歌詞だと思いますし、メロディもとても優しいので、皆さんが口ずさんでくれたらとてもうれしいです。
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- ニューシングル「ポストに声を投げ入れて」/ 2016年7月13日発売 / EPICレコードジャパン
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 1543円 / ESCL-4640~1
- 通常盤 [CD] / 1049円 / ESCL-4642
- ポケモン盤 [CD] / 864円 / ESCL-4643
初回限定盤、通常盤CD収録曲
- ポストに声を投げ入れて
- 僕のモンスター
ポケモン盤CD収録曲
- ポストに声を投げ入れて
初回限定盤DVD収録内容
- ポストに声を投げ入れて -Music Video-
- ライブBlu-ray / DVD「YUKI LIVE dance in a circle '15」/ 2016年7月13日発売 / EPICレコードジャパン
- 「YUKI LIVE dance in a circle '15」
- [Blu-ray] 7500円 / ESXL-95
- [DVD] 6499円 / ESBL-2442
収録内容
2015年11月19日に日本武道館にて開催されたファイナル公演から全曲収録
- プリズム
- ロックンロールスター
- ふがいないや
- JOY
- 誘惑してくれ
- 好きってなんだろう…涙
- キスをしようよ
- ハローグッバイ
- tonight
- 愛に生きて
- body movin'
- COSMIC BOX
- ドラマチック
- Home Sweet Home
- ハミングバード
- ひみつ
- 恋愛模様
- Hello !
- 星屑サンセット
- Night & Day
- ランデヴー
- ワンダーライン
- 鳴いてる怪獣
- 歓びの種
- WAGON
<特典映像>
DOCUMENT of YUKI LIVE dance in a circle '15
2015.10.4-2015.11.19
- PROJECTION
- love for sale
YUKI(ユキ)
1993年にJUDY AND MARYのボーカリストとしてデビュー。2001年のバンド解散後、2002年にシングル「the end of shite」でソロ活動を開始した。2012年5月にはソロ活動10周年を記念して東京・東京ドーム公演「YUKI LIVE "SOUNDS OF TEN"」を開催し、約5万人を動員。JUDY AND MARY時代にも東京ドームでライブを行っていることから、バンドとソロの両方で東京ドーム公演を行った初の女性ボーカリストとなる。2014年9月に7枚目となるオリジナルアルバム「FLY」をリリース。2016年7月13日には30枚目となるシングル「ポストに声を投げ入れて」を発売した。